"タダ宿の代償" 第5話
の名だけが記載されており、10に自分が現3500万円で購入したの記憶が鮮に蘇った。契約へ署名したの自分は、これで老のまいを確保できるとからしていた。
午には鍵業者へ連絡し、玄関の錠を交換する予約を入れた。輔には昔、緊急のために鍵を本渡していたが、それがいつのにか「いつでも入っていい」という覚につながっていたことが気になった。最のスマートロックなら、暗証番号も必に応じて変更でき、誰がいつ解錠したか履歴も確認できるという。
夕方、敦子は正弘へすべてを話した。最初は「そこまでしなくてもいいだろう」と困惑していた夫だったが、昨話で聞いた会話をほぼそのまま伝えると、徐々に表が変わっていった。「どうせ将来は俺がもらう」「今のうちに役にってもらえばいい」という輔の言葉を聞いた、正弘はしばらく黙り込んだ。
「本当に、そんなこと言ったのか」
「私が作る必のない嘘でしょう」
「いや……そうだけど」
敦子は、夫を責めるつもりはなかった。ただ、今まで正弘が「息子なんだから」と何でも軽く受け流してきたことが、自分にはつらかったと伝えた。準備するのも料理をするのも片づけるのも敦子であり、その負担を引き受けないほど簡単に「族だから」
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と言えることも話した。
正弘はい、何も言わなかった。やがてをげるように線を落とし、「悪かった。俺、輔が帰ってくることしか考えてなかった」と静かに言った。敦子はその言葉を聞いて、りがしだけほどけるのをじた。
翌、玄関の鍵が交換された。古いシリンダーがされ、しいスマートロックが取り付けられていく様子を見ながら、敦子はただ防犯設備を変えているだけではないような気がしていた。今まで無条件でけ続けてきた自分と息子との境界に、初めて鍵をつけているようにえたからだ。
そして旅の午、敦子は輔と織の両方へ同じ文章を送った。
《の宿泊についてですが、今回はがへの宿泊をお断りします。10分の宿泊・事・留守番を当然のように求められることに納得できません。ホテル等は自分たちで配してください。来てもには入れません》
送信ボタンを押したあと、敦子のはし震えた。それでも取り消そうとはわなかった。
10分、輔から話がかかってきた。
敦子はなかった。
すぐにLINEが届いた。
《母さん、急に何言ってんの?》
敦子は画面を見つめたまま、返事をしなかった。宿泊を断る理由はもう伝えたし、今ここで話にれば、また「族なんだから」「もう決まってるんだから」
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と押し切られることが分かっていた。
その夜、敦子と正弘は友夫婦が営むさな温泉宿へ泊することにした。翌は自宅くにいない方が、お互いに余計なをぶつけずに済むと正弘が提案したからだった。
玄関をる、敦子はしい鍵を確認し、すべての窓を閉めた。
今までなら、その瞬にも「本当にここまでしていいのだろうか」と迷ったはずだった。
けれど、その夜だけは度も振り返らなかった。
翌の午812分、敦子のスマートフォンに玄関の通が届いた。温泉宿の部で正弘と夕を終えた直で、画面には「玄関できを検しました」と表示されている。敦子が防犯カメラの映像をくと、のには本当に台のが止まっていた。
輔と織、孫2、織の両親と妹夫婦、それに輔の友夫婦。計10が荷物をろし、玄関に集まっている。に宿泊を断るメッセージを送ったにもかかわらず、彼らは予定を変えず、そのまま来ていた。
輔が古い鍵を鍵穴へ差し込もうとして、すぐに形が違うことに気づいた。何度かドアノブをかし、インターホンを押してから、携帯話を取りしている。数秒、敦子の話が鳴った。
「るのか?」
正弘が聞いた。
敦子はし考え、「度だけ話す」と答えて通話ボタンを押した。
「はい」
「母さん? 今どこにいるんだよ。の鍵変わってるんだけど」
「昨、泊めないって連絡したでしょう」
話の向こうで、輔が瞬黙った。
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