"義母ATM、ハワイへ消ゆ" 第5話
正也が勝に入ることはもうできない。
翌、毎15万円を自振込していた座の設定も解除した。員から「来以のお振込みは止になります」と確認され、私は「はい」と答えた。たった言だったが、5続けてきたものを止めるには、議なほど勇気が必だった。
その夜、歩美から「準備、順調ですか?」とLINEが来た。
私はしばらく画面を見たあと、こう返した。
「ええ。順調ですよ。皆さん、どうぞお正を楽しみにしていてください」
嘘ではなかった。
私たちの準備は。
驚くほど順調にんでいた。
ハワイきを決めてから、私は正のために買い集めた材をつずつ理した。黒豆、数の子、栗、昆布、干し椎茸、祝い用に取り寄せていた蟹まであり、捨てるには惜しいものばかりだった。そこで私は、隣にむ田静さんを訪ねることにした。
静さんは80歳で暮らしをしており、息子さん夫婦は赴任だった。玄関先で事を詳しく説することはせず、「急に旅へることになって、使い切れないから」と材を渡した。最初は慮していた静さんも、数の子の箱を見て「今はだから何も作らないつもりだったの」と笑い、最には何度も礼を言ってくれた。
その笑顔を見た、私は胸の奥に温かいものをじた。同じ材でも、当然のように求するへ150万円分の接待をするのと、んでくれるへ分けるのとでは、こんなにも気持ちが違う。
広告
私はこれまで、「族だから」という理由だけで、誰に何をしてあげたいのかを考えることをやめていたのかもしれない。
蔵庫のはみるみる空になった。牛乳や卵など発までにべきれないものも静さんへ渡し、凍庫には保剤しか残さなかった。正用の皿や座布団も物置へしまい込み、客用布団はクリーニング業者へ期保管を依頼した。
夫はそんな私を見て、「ずいぶん徹底してるな」と苦笑した。私は「だって、万が鍵を壊して入られても、ここを無料の旅館にはしたくないもの」と答えた。自分でもし悪だとったが、議と罪悪はなかった。
ただつ、迷ったことがある。
正也たちへ、旅へくことを事に伝えるべきか。
15のには子供もいる。らずに来て困るのはだけではなく、事をらない子供たちも同じだった。私はその点だけが引っかかり、何度かスマートフォンをに取った。
しかし1227の夜、その迷いを消す来事が起きた。
歩美からしいLINEが届いたのだ。
〈お義母さん、予定変更です。うちの親族、部が29から休みに入れるのでめにくかもしれません。もしっても適当に入って待ってますね。正也さん、鍵持ってますよね?〉
私は画面を見たまま息を吐いた。宿泊始のさえ、相談ではなく「変更しました」
広告
で済ませるつもりらしい。こちらが留守でも鍵で勝に入り、蔵庫をけ、呂を使い、15で活することに何の抵抗もないのだろう。
さらにその直、正也から話があった。「歩美の親戚、31よりにくかもしれないからよろしく」と言われ、私は「ずいぶん急ね」とだけ答えた。すると正也は、「母さんどうせ末はにいるだろ」と悪びれずに言った。
どうせにいる。
どうせ暇だ。
どうせを持っている。
どうせ断らない。
彼らのでは、私のはすべて「どうせ」で決められている。
話を切ったあと、私は夫に「もうらせない」と伝えた。夫は私の気持ちを理解したらしく、「それでいい」とく答えた。自分たちの予定を勝に変えるなら、その結果まで自分たちで引き受ければいい。
発の28、私はのを丁寧に掃除した。旅のためではなく、帰ってきたに気持ちよく活を再するためだった。湯器を最限の凍結防止設定にし、回りを確認し、郵便は保管を申し込んだ。
庫から現をし取りしていると、夫が「それ全部持っていくのか」と笑った。私は100万円の束を見ながら「全部使うつもりはないけど、使いたくなったにしたくないの」と答えた。37働きながら、私は自分の枚買うでも族の顔をい浮かべてきた。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
形見を捨てた嫁の代償
妻の三回忌の日、68歳の竹内正男は、久しぶりに帰ってくる息子一家のため、亡き妻がよく作っていた煮物と甘い卵焼きを用意していた。 孫に妻の思い出を伝えようと、正男は40年間大切に使われてきた花柄のエプロンを見せる。それは妻が家族のために台所に立ち続けた証であり、正男にとって何より大切な形見だった。 しかし嫁の彩花は、そのエプロンを何のためらいもなくゴミ袋へ放り込む。 「古いものは整理した方がいいですよ」 その一言で、正男の中の何かが静かに崩れた。 ところがその後、彩花は仏壇の横に置かれた一通の封筒を見つける。そこに書かれていたのは、マンション2棟と預金3000万円、そして遺言書という文字。 次の瞬間、さっきまでゴミ扱いしていた形見を、嫁は突然「大切にします」と言い出した。 形見の本当の価値は、金で測れるものなのか。 亡き妻が残したエプロンをめぐり、家族の本音が静かに暴かれていく。親不孝|親子関係1.5万字5 0 -
完結第12話
タダ宿の代償
64歳の佐々木敦子のもとに、久しぶりに長男・大輔から電話がかかってきた。 連休に家族で帰ってくるという話に、最初は孫に会える喜びを感じた敦子。だが大輔は、当然のようにこう言った。 「母さんの家に泊まるから。ホテル代もかからないし」 しかも泊まりに来るのは、息子一家だけではなかった。嫁の両親、妹夫婦、友人夫婦まで含めた総勢10人。食事、布団、タオル、駐車場、留守番まで、敦子の家はいつの間にか“無料の宿”として扱われていた。 それでも家族のためならと我慢しかけた敦子だったが、旅行の三日前、切れていなかった電話の向こうから、息子夫婦の本音を聞いてしまう。 「母さんの家使えばタダじゃん」 「お母さんってちょろいよね」 その瞬間、敦子の中で何かが静かに切れた。 この家は、3500万円を出して自分が買った家。誰かが当然のように使っていい場所ではない。 翌日、敦子は弁護士へ相談し、玄関の鍵を替える。 そして連休当日。何も知らずに10人で家の前へやって来た息子夫婦を待っていたのは、もう開かない玄関だった――。親不孝|親子関係1.9万字5 0