"形見を捨てた嫁の代償" 第6話
彩が目を見いた。
「これはの入っていない、ただの封筒だよ」
しばらく誰も言葉を発しなかった。
「え?」
彩の声だけがさく響いた。
私は空の封筒をひっくり返した。
何もてこない。
「本物の遺言じゃない」
「どういう……ことですか?」
「今、あなたがどんななのか確かめるために置いておいた」
本当は最初から試すつもりだったわけではない。
だが、エプロンを捨てられた、私はあえて封筒を片づけなかった。
彩がそれを見た、どうするのか。
自分でも確かめたいとってしまった。
結果は、あまりにも分かりやすかった。
数分までゴミだった妻の形見。
封筒の文字を見た途端、それが「素敵な形見」に変わった。
私はく息を吐いた。
「残だったな、彩さん」
彩の顔から、笑顔が完全に消えた。
「じゃあ……マンション2棟も、3000万円も嘘なんですか?」
彩が最初に聞いたのは、それだった。
私はのでため息をついた。
エプロンのことでもなければ、私を傷つけたことでもない。
財産がするのかどうか。
そこが最初に気になるらしい。
「財産については答えない」
私は言った。
「ただ、この封筒のに遺言は入っていない」
「でもいてあるじゃないですか」
彩は封筒を指差した。
「マンション2棟、預3000万円って」
「いただけだ」
「そんなの……を騙してるじゃないですか」
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その言葉を聞いて、わず笑いそうになった。
「騙した?」
「そうでしょう。こんなもの置いて」
彩の声は次第にくなっていった。
私は空の封筒をテーブルへ置いた。
「私はあなたに見ろとも、けろとも言っていない」
彩は黙った。
「仏壇の横に置いてあったものを、自分で見つけたんだろう」
「でも普通、こんなこといてあったら気になりますよ」
「そうかもしれんな」
私は頷いた。
「でも普通は、その文字を見たからといって、さっきゴミに捨てた形見を急に『事にします』とは言わんだろう」
拓哉がい声でをいた。
「彩、もうやめろ」
「何よ」
「もういいって」
「拓哉だって気になるでしょ? お義父さんが財産をどうするつもりなのか」
「今はそういう話じゃない」
「じゃあ何の話よ」
拓哉は妻を見た。
い沈黙ので、い声をした。
「母さんの形見を捨てたことだよ」
彩の表が変わった。
拓哉はこれまで、妻へく反論しなかった。
事も、エプロンを捨てたも、「やめろ」と言い切ることができなかった。
その拓哉が初めて、はっきりと言った。
「俺も悪かった」
息子は私へ向き直った。
「父さん、ごめん」
私は黙って拓哉を見た。
「最初に彩がエプロンを捨てた、ちゃんと止めるべきだった。母さんのものだって分かってたのに」
「……」
「揉めたくなくて、黙ってた」
拓哉は俯いた。
「でも、それじゃ駄目だった」
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私は息子を責める言葉をみ込んだ。
拓哉には拓哉の庭がある。
夫婦ので波をてたくない気持ちも分からなくはない。
それでも、黙っていることで誰かを傷つけることはある。
「拓哉」
「うん」
「おが彩さんとどう暮らすかは、おたちの問題だ。私はをすつもりはない」
私はゆっくり言った。
「だが、くなった母さんまで粗末に扱われて、それを黙って見ている必はないとうぞ」
拓哉は返事をしなかった。
その代わり、くをげた。
彩は納得できない顔をしていた。
「そんなげさな話ですか? エプロン1枚ですよ」
私はその言葉を聞き、やはり分かっていないのだとった。
「彩さんにとっては1枚だろう」
私はゴミ袋から救いされたエプロンへ目を向けた。
「私にとっては違う」
妻と過ごした40。
族のためにち続けた台所。
息子を育てた。
孫を抱いた。
その全てのそばにあった物だった。
「物の値段の話じゃないんだよ」
彩は腕を組んだ。
「だったら、ずっと自分で持ってればいいじゃないですか」
「そのつもりだ」
私は迷わず答えた。
「もう彩さんには預けない」
それを聞いて、向がさくを挙げた。
「僕は?」
私は孫を見た。
「向?」
「僕、きくなったらもらっていい?」
彩が何か言おうとした。
しかし私は先に答えた。
「ああ」
向の目がるくなる。
「になった、それでも欲しいとってくれたらな」
「欲しい」
「今すぐ決めなくていい」
私は笑った。
「になったら、もう度聞くよ」
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