"雪峠の五発" 第1話
20061115、野県部。
馬へ続く峠には、その最初の本格ながり始めていた。標1300mを超える峠はになるとい積に閉ざされ、もなく通止めになる。元では毎、このが閉じられるを「の始まり」と呼び、いの季節に備えるのが習わしになっていた。
午5を過ぎた頃には、肩のもガードレールもすでにく覆われていた。が吹くたびに細かながいがり、のヘッドライトので無数の粒となって流れていく。
その峠を、1台のパトカーがゆっくりとっていた。
運転しているのは、信濃町警察署域課の巡査、慎也だった。
32歳。警察官になって9目で、交番勤務から始まり、交通事故や岳遭難、庭内の揉め事まで、こので起きるさまざまな来事に向きってきた。派な功績があるわけではなかったが、同僚からは責任のい男として信頼されていた。
「またか。今はいな」
慎也は独り言を漏らしながらワイパーを段速くした。
フロントガラスに次々と付着するが、へ押し流されていく。面にはまだ数センチ程度しか積もっていなかったが、気温はすでに氷点までがり始めていた。
この、慎也が峠へ向かった理由は、午5過ぎに警察署へ入った1本の匿名通報だった。
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「峠の展望台に怪しいが止まっている。で誰かが揉めているように見えた」
話の主は男性だった。
それだけを告げると、名も連絡先もかさず話を切った。
本来なら、部での審両確認には2で向かうことが望ましい。しかしそのは国で複数台が絡む交通事故が発し、署内の警察官のくが現へていた。
「、1で丈夫か」
司がそう尋ねた、慎也はの着を羽織りながら笑った。
「確認だけですよ。何もなければすぐ戻ります」
その言葉に、誰もく引き止めなかった。
慎也自も、ほんの30分か1程度で終わる仕事だとっていた。
そのの朝も、いつもと変わらなかった。
制に着替えていると、5歳になったばかりの娘、陽菜が寝癖のついた髪のままリビングへてきた。まだ眠そうな目をこすりながら、慎也の制の裾をつかんだ。
「パパ、今はく帰ってくる?」
慎也はしゃがみ、娘のを撫でた。
「ああ。今は夜勤じゃないから、夕飯にはにうよ」
「ほんと?」
「ほんと」
「約束?」
「約束」
そのやり取りを聞いていた妻の美咲が、キッチンから顔をした。
当29歳だった美咲は朝の噌汁をよそいながら、窓のを気にしていた。気予報では夕方から沿いをにがまると言っていた。
「今はになるみたい。峠の方へくなら気をつけてね」
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「分かってるよ」
慎也はいつものように笑った。
「配するな」
それが、族に残した最の言葉になった。
午615分。
慎也から警察署へ無線が入った。
『こちら。峠展望台に到着。これから現を確認します』
『解。がくなっている。無理はするな』
『解』
いやり取りだった。
それ以、慎也から連絡はなかった。
午645分。
署ではまだ誰も刻には考えていなかった。審両の聞き取りにがかかっているのだろうとわれていた。
しかし午7を過ぎても戻らない。
無線を呼びしても応答がない。
携帯話もつながらない。
「、応答しろ」
何度呼びかけても、スピーカーから聞こえるのは無質な雑音だけだった。
午720分。
署は複数の警察官を峠へ向かわせた。
その頃にはがさらにくなっていた。峠へづくにつれ界が狭くなり、の央線さえ見えにくくなっていた。
午8。
応援の警察官たちが展望台へ到着した。
そして駐スペースの端に、慎也が乗っていたパトカーを発見した。
「!」
警察官たちはへ駆け寄った。
だが、誰もいなかった。
エンジンは切られている。
のドアには鍵がかかっていた。
内をライトで照らすと、助席には慎也の制があり、袋も残されていた。無線に異常はなく、内が荒らされたような形跡も見られなかった。
慎也だけが消えていた。
「周囲を探せ!」
展望台。
トイレ。
脇。
林の入。
警察官たちは名を呼びながら探した。