"雪峠の五発" 第3話
のに崩が起きた斜面。
展望台の。
林の。
沢沿い。
改めて徹底な捜索がわれた。
それでも、慎也は見つからなかった。
まるで峠そのものが、1の警察官をみ込んでしまったようだった。
失踪から1か、2かとが過ぎるにつれ、慎也の事件を扱う聞記事はしずつさくなっていった。
最初の数はテレビでも繰り返し報じられた。「公務の警察官が消えた」という異例の事件だったため、県の報陣も信濃町を訪れた。だがしい報がないまま半が過ぎる頃には、事件を取りげる番組もほとんどなくなった。
警察内部では捜査が続けられていた。
匿名通報の主。
事件当に峠を通った能性のある。
慎也が担当していた事件や、過に揉めた物。
つずつ調べられたが、決めはなかった。
美咲はやがて京の実へ戻った。
さな娘を育てながら、パートの仕事を始めた。朝、陽菜を保育園へ送り、自分はスーパーの惣菜売りで働き、夕方迎えにく活が続いた。
慎也がいなくなってから、活そのものが別の形に変わっていった。
替えをするたび、慎也のがてくる。
押し入れには用のコート。
洗面台には古い髭剃り。
引きしには族3でった旅の写真。
捨てることができなかった。
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くなったと確認されたわけではない。
だから、
「もう帰らないの物」
として片づけることもできない。
方で、いつまでも戻ってくるのように置いておくことも苦しかった。
陽菜は6歳になった。
学へ入り、父親参観のが来た。
「ママが来ればいいよ」
そう笑ったものの、周囲の子供たちが父親と歩いている姿を見ると、陽菜はに帰ってから慎也の写真をく見つめていた。
7歳。
8歳。
9歳。
齢をねるにつれ、陽菜はしずつ事を理解した。
「パパはんだの?」
10歳の頃、初めてそう聞いた。
美咲はすぐには答えられなかった。
「分からないの」
「13とか20とか経ったら分かる?」
「……それも分からない」
陽菜は黙った。
この事件で最も残酷だったのは、しむことさえ許されなかったことだった。
くなったのなら、墓ので泣くことができる。
事故だったのなら、事故だったと受け入れることができる。
しかし慎也には、それがなかった。
きているのか。
くなっているのか。
事故なのか。
事件なのか。
何つ分からない。
族は13、「分からない」という所にち続けることになった。
美咲はに何度か野へ戻った。
峠の麓にあるさな神社には、元の々が慎也の写真を置いたさな祈りの所を作っていた。
になると峠へ入れないため、美咲は麓からを見げた。
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「あの、まだあそこにいるのかな」
誰に言うでもなく呟いた。
を追うごとに、慎也の顔をいすのに写真が必になる瞬が増えた。それが美咲には恐ろしかった。
声はまだ覚えている。
笑い方も覚えている。
しかし何も同じ記憶を繰り返していると、それが本物の記憶なのか、写真や映像から作られた記憶なのか分からなくなる。
陽菜も同じだった。
慎也が消えた、まだ5歳だった。
父のきな。
朝、制姿でを撫でてもらったこと。
肩。
くて優しい声。
残っているのは断片だけだった。
2のある夜、陽菜が突然言った。
「ママ。私、警察官になりたい」
美咲は箸を止めた。
「どうして?」
「パパみたいになりたいから」
「お父さんが警察官だったから?」
「それもある」
陽菜はし考えて続けた。
「でも、それだけじゃない。パパは仕事に消えたでしょう。誰かを助けようとして、あの峠へったんだとう」
美咲は娘を見た。
「怖くないの?」
「怖いよ」
「同じ仕事をしたら、危ないこともある」
「分かってる」
陽菜は目を逸らさなかった。
「それでも、誰かを守る仕事をしたい」
美咲は止めなかった。
慎也が消えたことで、族はい苦しんだ。
それでも娘のに残っていたのは、父へのみではなかった。
誇りだった。
2019。
慎也が消えてから13目。
18歳になった陽菜は、卒業に警察官採用試験へ格し、警察学へむことが決まっていた。
そのしのことだった。
峠にも遅いが訪れ、肌を覆っていたがしずつ解け始めていた。