"退職と書かれた娘たち" 第5話
千代については「元気で働いている」としか教えてくれなかったが、族に居所をられないよう慎にしているらしかった。
「私も伝えますか」
ある夜、フミが尋ねると、志乃はすぐに首を横に振った。
「やめときな」
「でも」
「おにはへ送るがあるだろ」
フミは黙った。
「こういうことは、度ったら元には戻れんよ」
志乃はそれだけ言ってった。
それから3週ほど経った朝、の巡査がへやって来た。
黒い制姿の男が事務所へ入っていくのを見た、フミはなぜか胸騒ぎを覚えた。昼頃になると職監督が志乃を呼びに来て、作業の女たちが斉にを止めた。
「志乃という女はおるか」
巡査の声がれた所からでも聞こえた。
志乃は無言でへた。
そのの午、噂が広がった。
「トヨちゃんがんだらしい」
誰かがそう言った。
フミはを疑った。
「どこで?」
「内のだって」
「病気?」
「分からん。警察が来たってことは、何かあるんじゃないの」
トヨは、志乃が逃がした娘のだった。
にいた頃から咳が酷く、何度もをしていた。志乃は彼女をさなの女仕事へつなぎ、無理なら別の所へ移れるよう配していたという。
だが、そのトヨがくなった。
翌朝、の須藤は全女を堂へ集めた。
須藤は50代半ばの男で、普段は作業へほとんど顔をさなかった。
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いシャツに黒い着を着て壇へつと、沈んだ顔で女たちを見回した。
「皆に事な話がある」
堂が静まり返った。
「最、何かの女が無断でを辞めていた件について、会社でも調べていた」
フミの背にたいものがった。
「その結果、古参の女である志乃が、若い娘たちをそそのかし、勝にへ連れしていたことが分かった」
ざわめきが起きた。
「本は善だったと言っているようだが、世をらない若い娘を危険な所へ送りす為は許されん。実際、そのうちが内のでくなった」
須藤の言葉に、女たちは顔を見わせた。
フミは拳を握った。
何かがおかしいとった。
「会社は切関していない。むしろ被害者だ」
須藤はそう断言した。
「今、志乃は解雇する。警察からも事を聞かれることになるだろう。皆も、甘い話に乗せられてをたりせんよう気をつけなさい」
堂から戻る途、女たちのではすでに別の噂が始まっていた。
「志乃さん、逃がす代わりに取ってたんじゃない?」
「仕事の紹介料とか?」
「トヨちゃんだって、におったら病院へけたかもしれん」
「へしたせいでんだんじゃないの」
フミは反論したかった。
だが、をけなかった。
トヨがんだことは事実だった。
しかもフミは、志乃がトヨについてだけ何かを隠しているようにじていた。
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その夜、志乃は寄宿舎へ戻らなかった。
荷物もほとんど残されたままだった。
舎監のトメは「今で辞めた」とだけ言った。
まるで今まで消えた女たちと同じようだった。
フミは初めて、自分のにも疑いが芽えていることに気づいた。
志乃は本当に娘たちを救っていたのだろうか。
それとも、自分たちがらない何かがあったのか。
志乃がいなくなってから、の空気はらかに変わった。
以にも増して寄宿舎の入りが厳しくなり、休にする際にはき先をかされるようになった。舎監のトメも女たちの私物を折確認し、らないや所をいたがないかを調べた。
「逃防止だって」
の女が声で言った。
会社側は「娘たちを危険から守るため」と説していたが、フミには逆に見えた。
度へれば別の働きが見つかる。
その能性を娘たちにられたくないのではないか。
志乃がやっていたことは、にとって都だったのかもしれない。
しかし、トヨのだけが引っかかっていた。
ある、フミは医務のを通りかかった。
では付きの医師と事務員が話をしており、半きになった扉から声が漏れていた。
「例の娘の記録は?」
「もう古いものです」
「なら構わん。余計なは処分しておけ」
フミがを止めた、背から誰かに呼ばれた。
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