"退職と書かれた娘たち" 第9話
「志乃さんは?」
フミが尋ねると、タキは「まだ警察で何度か話を聞かれてる」と答えた。
逮捕されているわけではない。
しかし、若い女を勝に連れしていたことについて、側から厳しく追及されているらしかった。
夜。
千代と並んで布団へ入った。
の寄宿舎とは違い、械の音がしない。
静かすぎて逆に眠れなかった。
「、千代ちゃんだよね」
「うん」
「どうして帳簿のことってたの」
千代はしばらく黙った。
「志乃さんから聞いた」
「志乃さん?」
「トヨちゃんがんだって聞いた、ここへ来たの」
志乃は自分が警察へ呼ばれるに、タキへ事を伝えていた。
トヨがにいた頃、何度も辞めたいと相談していたこと。
医師から休養を勧められていたこと。
それでも借を理由に退職を認められなかったこと。
志乃はその事実をっていた。
「じゃあ、何で警察に言わなかったの」
フミが尋ねると、千代は俯いた。
「証拠がなかったから」
側はすでに「志乃が勝に病気の娘を連れした」と説していた。
志乃が何を言っても、「自分の責任を会社へ押しつけている」と見られる能性があった。
そこで千代を通じてフミに帳簿を探してほしいと頼んだ。
「どうして私だったの」
「のにいて、志乃さんのことってるの、フミしかいなかったから」
フミは複雑な気持ちになった。
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志乃は自分に「伝うな」と言っていた。
それなのに最は、自分を危険なことへ巻き込んだ。
千代はその表に気づいたようだった。
「志乃さん、すごく迷ってた」
「だったら自分で取りにけばよかったのに」
「もうに入れなかったから」
その言葉で、フミは黙った。
翌。
志乃が裁縫所へ来た。
数週ぶりに会った志乃は、し痩せていた。
「悪かった」
最初にそう言った。
「何がですか」
「おを巻き込んだ」
フミはっていた。
「私、辞めさせられました」
「ってる」
「に送れません」
「……ってる」
「最初は伝うなって言ったじゃないですか」
志乃は何も言い返さなかった。
しばらくして、くをげた。
「すまん」
その姿を見て、フミのりはしだけくなった。
「トヨちゃん、本当に助けられなかったんですか」
志乃は子へ座り、両を膝に置いた。
「をした、もうかなり悪かった」
トヨは逃げた、最初はさな堂で働き始めた。
しかし咳とがひどく、数で仕事を続けられなくなった。
志乃たちは病院へくよう勧めたが、がなかった。
にいたのも、薬代や借返済でほとんど残っていなかった。
最はので寝込んだ。
「私がもっとく連れせてたら」
志乃は自分を責めた。
「違います」
フミは初めて、はっきり言った。
「トヨちゃんは、をたからんだんじゃないです」
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志乃が顔をげた。
「にいたから、もう病気だったんです。辞めたいって言ってたのに、辞めさせてもらえなかった」
フミは帳簿で見たことをすべて話した。
志乃は目を閉じた。
「そうか」
さな声だった。
「やっぱり残ってたか」
その、志乃とフミは警察へ向かった。
警察署でフミは何度も同じ説をした。
どのように倉庫へ入ったのか。
帳簿をどこで見つけたのか。
退職願には何とかれていたか。
から何を言われたのか。
巡査のは最初、16歳の女が会社にみを持って話をきくしているのではないかと疑っている様子だった。しかし帳簿と退職願の内容を確認すると、態度がしずつ変わった。
側にも改めて事聴取がわれた。
会社は「病気の女を図に酷使した事実はない」と主張した。借がある者について退職を認めなかったことも、「当の契約の取り扱いだった」と説した。
すぐに誰かが逮捕されるような事件にはならなかった。
フミはそれに落胆した。
自分はを追いされた。
志乃も仕事を失った。
それなのに、の煙突からは毎朝何事もなかったように煙ががっている。
しかし、しずつ変化は起きた。
トヨのとでの勤務状況について、元の聞がい記事を載せた。
〈病の女、退職を認められず〉
さな記事だった。
名も詳しくかれていなかった。
それでもので、女の労働環境について話すが現れた。
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