"「冷たい嫁」と書かれた分担表" 第3話
と言って差しした。
《412 たい弁当を置いて帰った。私がべられないと言っても聞かなかった》
《419 財布から5000円なくなった。佐子さんが台所にいた》
《52 薬を勝に捨てた》
付と来事が20件く並んでいた。確かに志津の跡だったが、佐子には覚えのないことばかりだった。正志はノートを読むと、「ここまでいてあるなら、母さんのい込みだけでは済まない」と言った。
佐子は反論する代わりに、奈央へノートを見せた。奈央は内容の真偽をそので判断せず、訪問介護の記録、薬局の調剤、族の訪問と照することを提案した。すると《薬を捨てた》とかれた52は、佐子が姉の法事で県にいただった。
それでも正志は、付をき違えただけかもしれないと言った。佐子は胸の奥にたいものをじた。夫が求めているのは事実ではなく、自分に介護を引き受けさせられる説なのだ。
帰宅、佐子は志津の蔵庫を確認した。血圧の志津には塩分がすぎる宅配弁当が3個あり、ラベルには美穂のスマートフォン番号が印字されていた。美穂は「本が濃いを欲しがった」と説したが、注文は美穂が志津を病院へ連れていったと致していた。
その夜、志津のから町内会費の封筒が見つかったと連絡があった。
広告
所は押し入れの座布団のだった。封筒には現が残っていたが、表面に志津の字で奇妙な文がかれていた。
《佐子さんに盗まれたと言うため、ここへ隠す》
文字は途で震え、最の「隠す」だけがからきくがっていた。計画を忘れないために自分で残したのだろうか。それとも、隠したことまで忘れ、から見つけた自分へらせようとしたのだろうか。どちらにしても、志津が佐子を疑ったのではなく、疑われる状況を自分で作った能性がまれた。
正志は封筒をにしたまま、「母さんがこんなことをするはずがない」と言った。つい数まで、ノートにかれた母親の言葉はすべて事実だと主張していたのに、今度は同じ母親の跡を否定しようとしていた。佐子は夫の横顔を見て、真相が何であれ、自分だけは守ってもらえないのだと悟った。
翌朝、佐子と奈央は志津のを訪ねた。封筒の文字を見せると、志津は最初「らない」と言い、次には「そんな物をいた覚えはない」と否定した。しかし、しばらく黙ったあと、膝ので両を握りしめた。
「あなたが来なくなるとったのよ」
志津は、佐子が仕事を探しているとっていた。再就職すれば訪問が減り、正志も浩も自分を施設へ入れるだろうとったという。
広告
がなくなれば族が集まり、佐子は疑いをらすために何度でも来る。最初の5000円は自分で仏壇の裏へ隠し、見つかったあと別の所へ移した。
「私を棒にすれば、来るとったんですか」
「だって、あなたは何を言っても来たでしょう」
佐子は鳴りたかったが、声がなかった。志津のでは、佐子の誠実さは信頼する理由ではなく、何をしてもれない保証になっていた。奈央は、故の為と認能のが混ざっている能性があるため、専医の受診が必だと静かに説した。
正志は母親の告を聞いても、「寂しかったんだ。許してやれ」と言った。佐子が受けた疑い、親戚へ広がった噂、夫から繰り返し責められたは、その言で消えるものではない。
「許すかどうかより、同じことを起こさない仕組みを作ります」
佐子は訪問を週1回に減らし、必ず訪問介護員か族のいるにくと決めた。買い物は現を預からず、宅配の座振替を利用する。正志と浩にも2回ずつ担当を割り当て、けないは兄弟で代わりを探すことにした。
最初の週、志津は佐子が来ない曜に10回以話をかけた。留守番話には「もういい」「度と頼まない」という言葉と、「夕飯は何をべればいいの」という訴えが交互に残っていた。
佐子は胸が痛んだが、配サービスが届いたことを事業者へ確認し、予定の訪問はしなかった。
夕方には正志が様子を見にった。
広告
おすすめ作品
-
完結第14話
35万円の空冷蔵庫
大晦日、妻の弓が35万円かけて用意した正月料理が、冷蔵庫から一つ残らず消えていた。 持ち去ったのは、夫・健一の母と弟。松阪牛、タラバガニ、有名料亭のおせちまで奪いながら、彼らは笑ってこう言い残す。 「明日はカップ麺でも食べてなさい」 20年間、“長男の嫁”として姑に尽くし続けてきた弓。いつか本当の家族として認めてもらえると信じ、理不尽な仕打ちにも耐えてきた。 しかし、その夜、健一は知ってしまう。食材を奪っただけでは終わらない、母と弟が5年前から隠し続けていた金の秘密を。 元日の新年会。食卓に並んだのは、豪華な料理ではなく一箱のうどんだけ。 だが、襖の向こうには親戚たちが集まり、20年間隠されてきた佐藤家の本性を静かに聞いていた――。兄弟姉妹|夫婦2.1万字5 3 -
完結第13話
閉じ込められた臨月の妻
妊娠38週、予定日まであと12日の加奈。夫が海外出張へ出た2日後、突然訪ねてきた義両親は「様子を見に来た」と言いながら、家事や学歴を責め続けた。そして義母に促され、家庭用サウナの中を確認しようと入った瞬間、背後で扉が閉まる。外側には南京錠。スマートフォンまで奪われた。「私たちから息子を奪った罰よ」。そう言い残し、義両親は5泊7日の温泉旅行へ出発した。水もなく、いつ陣痛が始まってもおかしくない密室。しかし加奈には、義両親が知らないことがあった。このサウナは、かつて一級建築士だった加奈自身が安全設計に関わった機種だった――。嫁姑|親子関係|修羅場2.0万字5 0 -
完結第13話
古い工場を渡された嫁
食品会社を一代で守ってきた山代会長は、ある夜、庭で長男夫婦の会話を偶然聞いてしまう。 「お母様、これから先どれだけ生きられるかしら」 信じていた嫁が、自分の命も会社も、すでに財産として数えている――。その一言をきっかけに、会長はある決断をする。 自分は重い病にかかり、会社も危機にある。そう家族に告げ、2人の嫁に後継者を決めるための試練を与えたのだ。 華やかな長男の嫁・彩佳には会社を。 不器用で人の良すぎる次男の嫁・ユナには、地方にある廃業寸前の古い工場を。 誰もが、勝者と敗者は決まったと思っていた。 しかし3か月後、会社を手に入れた嫁と、古い工場へ送られた嫁の運命は、誰も予想しなかった形で逆転していく――。兄弟姉妹|嫁姑|相続|親子関係2.0万字5 0 -
完結第12話
欠陥品と呼ばれた歌姫
13年前、妹・恵は一枚の置き手紙を残し、夫と幼い娘を捨てて姿を消した。 「愛良はいらない。子どもを産めないお姉ちゃんにでもあげれば?」 傷ついた姪を放っておけず、桃江は妹の元夫・高也とともに、愛良を育てる道を選ぶ。血のつながりではなく、毎日の朝食と小さな約束を積み重ねながら、三人は本当の家族になっていった。 それから13年後。 美容室で桃江は、突然失踪したはずの妹と再会する。昔と変わらず、桃江を見下し、愛良を侮辱する恵。 だが直後、桃江を迎えに来た夫と、制服姿の少女を見た瞬間、妹の顔色が変わる。 彼女が捨てたものは、もう二度と取り戻せない場所にあった――。兄弟姉妹|修羅場1.8万字5 0 -
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9万字5 0 -
完結第12話
家族写真の左端
明治42年、信州の城下町で生糸問屋を営む高瀬家は、初めて一家そろって写真館を訪れた。 紋付き袴の父、着物姿の母と子どもたち、そして椅子に座る祖母。出来上がった写真には、たしかに家族全員が写っていた。 しかし、背景の柱のそばに、誰も知らない若い男が一人だけ立っていた。 撮影の日、その場にいたのは高瀬家の者だけだったはず。しかも男の姿は、まるで古い記憶が重なったように薄く写っていた。 写真を見た祖母は、震える声で一つの名前を呟く。 「宗吉……」 家族の誰も聞いたことのないその名前は、高瀬家が長い間封じてきた過去へとつながっていた。 なぜ、その男の存在は家族から消されていたのか。 一枚の失敗写真が、明治の商家に隠された“もう一人の家族”の真実を静かに浮かび上がらせていく。昭和|兄弟姉妹1.8万字5 0 -
完結第11話
荷造りの日に消えた夫の行き先
7年間、脳梗塞で倒れた夫・修一を支え続けてきた香織。 仕事を辞め、食事も薬も通院もすべて管理し、夫が再び歩けるようになるまで寄り添ってきた。ところが回復した修一が最初に告げたのは、感謝ではなく「離婚してほしい」という言葉だった。 理由は、妹のいる新潟で暮らしたいから。 香織は、自分の7年間がすべて否定されたように感じる。だが荷物を整理する中で、夫が密かにつけていた一冊のノートを見つける。そこには、香織への感謝と罪悪感、そして誰にも言えなかった本音が記されていた。 さらに引っ越し当日、迎えに来たはずの義妹が突然言い放つ。 「兄は引き取りません」 夫は本当に妻から逃げたかったのか。義妹はなぜ直前で拒んだのか。そして香織が7年間守り続けていたものは、夫だったのか、それとも自分自身の恐怖だったのか。 介護、夫婦、家族の責任、そして人生の後半をどう生きるかを描く、静かな再出発の物語。夫婦|介護1.6万字5 0 -
完結第10話
米寿の席で外された嫁
米寿祝いの席で、義母は親族の前で突然言った。 「秋子さんには、明日から店へ来てもらわなくて結構です」 33年間、朝早くから和菓子店《松月堂》を支えてきた秋子。餡を練り、注文を管理し、繁忙期には夜まで働いてきた日々は、義母の一言で“家族の手伝い”として片づけられた。 しかも店から外された秋子に、今度は義母の通院や世話を任せるつもりだった。 何も言わず席を立ったその夜、秋子は古い段ボール箱の中から、亡き義父が残した一通の封筒を見つける。 そこに入っていたのは、秋子を守るための遺言ではなかった。 店の帳簿に隠されていた不自然な金の流れ、説明されていない借金、そして義父が最後まで言えなかった家族の秘密。 「家族だから」という言葉の下で、誰が何を背負わされていたのか。 33年間奪われてきた時間と仕事の価値を、秋子が静かに取り戻していく物語。人生逆転|嫁姑|親子関係1.5万字5 1