"離婚後に生まれた息子" 第5話
挨拶もなかった。
「どうして?」
『健から聞いたわ』
「だから?」
『本当に健の子なの?』
由美は笑いそうになった。
昨まで。
いや、10から。
欲しい欲しいと言い続けた孫。
実際に現れたら、最初は疑う。
「親子関係について必があれば、正式な続きで確認します」
『何よ、その言い方』
「に入れるつもりはありません」
『私、祖母よ』
「まだ何も確認してませんよね」
枝は黙った。
数秒。
『顔だけ見せなさい』
由美は断った。
しかし。
そのの夕方。
父が仕事から帰った。
枝はまだ所にいた。
父から話が来る。
「玄関にいるぞ」
由美は仕方なく1階へりた。
父も緒に玄関へた。
枝は誠を見るなり、息をのんだ。
子供は健と全く同じではない。
ただ。
目元。
眉の形。
寝ているの元。
健が赤ん坊の頃をる枝には、何かじるものがあったのだろう。
「健に似てる……」
由美は何も言わない。
枝の目から涙がた。
しかし。
次にた言葉は。
謝罪ではなかった。
「この子、田で引き取るわ」
由美は聞き違えたとった。
「何ですか?」
「健の子でしょう」
「だから?」
「田の跡取りよ」
父の顔が変わった。
由美は先に聞いた。
「私から取りげるってことですか」
「取りげるなんて言ってないでしょう」
枝はバッグをけた。
封筒をす。
みがある。
「200万円入ってる」
由美は封筒を見た。
「何の?」
「あなたも1で赤ちゃん育てるの変でしょう」
広告
「……」
「健は来、美さんと結婚する。若いし、仕事もできるし、ちゃんとした庭を作れる」
由美の指先がたくなる。
枝は本気だった。
「この子を田で育てるのが番いいとうの」
「美さんを母親にして?」
「そうよ」
「私には?」
「200万円渡すから、しい活を始めなさい」
父がい声で言った。
「帰ってもらえますか」
枝は父を見る。
「これは田の問題です」
「娘は今、佐藤にんでる」
「でも子供は健の」
由美が遮った。
「帰ってください」
枝が由美を見る。
「にならないで」
「?」
「あなた、仕事もしてないでしょう。乳児を抱えて、これからどうするの?」
由美は誠を抱く腕に力を入れた。
「だから売るんですか」
「売るなんて」
「200万円で、私の子供を買うんでしょう?」
枝の顔がくなる。
「言い方が悪いわ」
「10から、ずっと同じですよ」
由美は静かに言った。
「子供ができなかったは、私は田に何も貢献できない女」
「子供ができたら、今度は子供だけ田に必」
枝は何も言えない。
「私自は、最初から最までいらないんですね」
「そんなこと」
「帰ってください」
父が玄関をけた。
「次は弁護士を通してください」
枝は封筒を握ったまま帰ろうとしなかった。
「由美さん」
「まだ何か?」
「あなた、分かってないわ」
「何をですか」
「子供を育てるのはだけじゃ無理なの」
「ってます」
広告
「田なら、教育だって分できる」
「……」
「健の収入もある。私も伝える。美さんは若いし」
由美はわず聞いた。
「美さんは、この話ってるんですか?」
枝の顔がわずかに揺れた。
「当然、話すわよ」
「まだ話してない?」
「結婚するんだから、理解するでしょう」
由美はその瞬。
さらに寒くなった。
美にさえ。
を確認していない。
こののでは。
健の妻になる女は。
田が必とする役割をやって当然。
由美にしたのと同じだった。
「お義母さん」
「何」
「私が10、子供ができなくて苦しんでた」
「……」
「度でも、私に謝ったことありますか」
「何を謝るの」
「そうですよね」
枝が眉を寄せる。
「何が言いたいの」
「あなた、今も何も変わってない」
「私は孫の将来を」
「違います」
由美は言った。
「自分の欲しいものを、族って言葉で取ろうとしてるだけ」
「失礼ね!」
「子供がいないは、私は田に貢献してない」
「子供ができたら、子供は田のもの」
「どっちにしても、私の気持ちは関係ない」
枝は声を荒げた。
「健の血が流れてるのよ!」
由美は即座に返した。
「私の血も流れてます」
枝が黙る。
「私が10かお腹で育てて、私が産んで、今も私が夜に起きて育ててます」
「それでも田の」
「誠です」
由美は初めて息子の名を言った。
「この子の名は誠です」
「跡取りじゃありません」
「田のものでもありません」
「誠っていう1の子供です」
枝のが止まった。
父が隣で何も言わずっていた。
由美は続けた。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
消された妻の逆転乾杯
夫の昇進祝いの宴席で、佐木美和は信じられない光景を目にする。 35年間連れ添ってきた夫・孝志が、120人の招待客の前で、若い愛人を「妻です」と紹介したのだ。 本当の妻である美和は、会場の端の席に座らされ、まるで無関係な招待客の一人のように扱われていた。夫からは事前に「今日だけは黙っていろ」と言われていた。 けれど、美和は怒鳴らなかった。 ただ静かにグラスを持ち上げ、夫と愛人に向かって乾杯した。 なぜなら彼女は、17年間にわたって夫が奪い続けてきた功績、不正に使われた経費、そして自分の名前を消された証拠を、すでに会長へ渡していたからだ。 祝福の拍手が響く中、会長がゆっくりと立ち上がる。 「佐木君。今の紹介で、最後の確認が取れた」 その一言で、夫の栄光の夜は、崩壊の始まりへと変わっていく――。夫婦|第二の人生|不倫1.4万字5 0 -
完結第14話
銀行にいた偽妻
60歳の斎藤かよ子は、夫・剣一を大阪出張へ送り出したはずだった。 しかし午前11時17分、銀行から一本の電話が入る。 「ご主人が、奥様と同じ名前の若い女性と一緒に来店されています」 その女性は、かよ子の名前を名乗り、住所や生年月日、家族の情報まで正確に答えていた。しかも夫は、その女を自分の妻として銀行に紹介し、かよ子名義の資産に関わる重要な手続きを進めようとしていた。 ただの浮気ではない。夫は、かよ子の服装、癖、署名、人生の記録までも利用し、“もう1人の妻”を作り上げていた。 37年間信じてきた夫が、本当に奪おうとしていたものは財産だけだったのか。 そして、何も知らない妻を演じ続けたかよ子が、最後に銀行で見せた反撃とは――。人生逆転|夫婦2.1万字5 0 -
完結第14話
35万円の空冷蔵庫
大晦日、妻の弓が35万円かけて用意した正月料理が、冷蔵庫から一つ残らず消えていた。 持ち去ったのは、夫・健一の母と弟。松阪牛、タラバガニ、有名料亭のおせちまで奪いながら、彼らは笑ってこう言い残す。 「明日はカップ麺でも食べてなさい」 20年間、“長男の嫁”として姑に尽くし続けてきた弓。いつか本当の家族として認めてもらえると信じ、理不尽な仕打ちにも耐えてきた。 しかし、その夜、健一は知ってしまう。食材を奪っただけでは終わらない、母と弟が5年前から隠し続けていた金の秘密を。 元日の新年会。食卓に並んだのは、豪華な料理ではなく一箱のうどんだけ。 だが、襖の向こうには親戚たちが集まり、20年間隠されてきた佐藤家の本性を静かに聞いていた――。兄弟姉妹|夫婦2.1万字5 3 -
完結第13話
閉じ込められた臨月の妻
妊娠38週、予定日まであと12日の加奈。夫が海外出張へ出た2日後、突然訪ねてきた義両親は「様子を見に来た」と言いながら、家事や学歴を責め続けた。そして義母に促され、家庭用サウナの中を確認しようと入った瞬間、背後で扉が閉まる。外側には南京錠。スマートフォンまで奪われた。「私たちから息子を奪った罰よ」。そう言い残し、義両親は5泊7日の温泉旅行へ出発した。水もなく、いつ陣痛が始まってもおかしくない密室。しかし加奈には、義両親が知らないことがあった。このサウナは、かつて一級建築士だった加奈自身が安全設計に関わった機種だった――。嫁姑|親子関係|修羅場2.0万字5 0 -
完結第11話
夫の娘は、私にだけ謝った
結婚34年目、夫は突然こう告げた。 「娘が見つかった。だから離婚してほしい」 夫には、結婚前に生まれていたもう一人の娘がいた。しかも夫は、その娘のために今の家庭を離れ、父親としてやり直したいと言う。 しかし、真由美が初めて会った“夫の娘”綾香は、なぜか彼女に頭を下げた。 「私のせいで離婚しないでください」 夫は本当に、最近になって娘の存在を知ったのか。なぜ綾香は、父親ではなく真由美に会おうとしたのか。 やがて明らかになるのは、36年前に封じられた手紙と、12年前から夫が隠し続けていた事実だった。 突然現れた娘は、家庭を壊しに来たのではなかった。 34年続いた夫婦の中で、誰も口にしなかった本当の問題を、静かに照らし出していく――。夫婦|親子関係1.6万字5 0 -
完結第10話
隠し子を知っていた55歳妻
結婚30年。55歳の律子は、61歳の夫・正典から突然「好きな人がいる」と告げられる。相手は34歳の女性。そして2人の間には、3歳の男の子までいた。しかし律子は驚かなかった。「れん君でしょう? 1年前から知っていました」。夫の顔から血の気が引く。離婚届を差し出されても、律子は微笑んで「離婚しません」と拒否した。夫への愛が残っていたからではない。この1年間、弁護士への相談、財産や年金の確認、仕事探しまで、誰にも知られず自分の人生を立て直す準備をしていたからだ。30年間、自分の人生を夫の都合で決められてきた妻は、最後の別れの日だけは自分で選ぶと決めていた――夫婦|不倫1.4万字5 0 -
完結第12話
欠陥品と呼ばれた歌姫
13年前、妹・恵は一枚の置き手紙を残し、夫と幼い娘を捨てて姿を消した。 「愛良はいらない。子どもを産めないお姉ちゃんにでもあげれば?」 傷ついた姪を放っておけず、桃江は妹の元夫・高也とともに、愛良を育てる道を選ぶ。血のつながりではなく、毎日の朝食と小さな約束を積み重ねながら、三人は本当の家族になっていった。 それから13年後。 美容室で桃江は、突然失踪したはずの妹と再会する。昔と変わらず、桃江を見下し、愛良を侮辱する恵。 だが直後、桃江を迎えに来た夫と、制服姿の少女を見た瞬間、妹の顔色が変わる。 彼女が捨てたものは、もう二度と取り戻せない場所にあった――。兄弟姉妹|修羅場1.8万字5 0 -
完結第13話
十六歳の毒薬花嫁
江戸中期、奥州郡山の大店・高野家には、余命三月と告げられた若旦那・湊がいた。 歩くこともままならず、医者からは「春までもたぬ」と見放された男。誰も嫁ぎ手など現れないと思われたその家の門を、ある冬の朝、十六歳の娘・凛が一人で叩く。 「三月なら三月、三日なら三日でも構いません」 そう言って自ら若旦那の嫁になった凛だったが、彼女には誰にも明かしていない目的があった。 苦くないはずのない薬。帳簿に増え続ける不自然な数字。井戸へ捨てられた父の形見。 病とされていた若旦那の命、罪人にされた父の名、そして大店に二十一年隠されてきた嘘。 十六歳の娘が嫁いだ本当の理由が明らかになる時、高野家の運命は大きく変わり始める。夫婦2.0万字5 0 -
完結第13話
福嫁の逆転茶屋
江戸の日本橋にある茶屋「泡雪屋」の若旦那・宗介は、店の立て直しのため、評判の商人・泉屋五兵衛の娘を妻に迎えることになる。 宗介が望んでいたのは、江戸でも噂になるほど美しい姉・お花だった。美しい女将がいれば、傾きかけた店にも客が戻る。そう信じていたからだ。 しかし、五兵衛が宗介に差し出したのは、お花ではなく、ふくよかで目立たない妹・福だった。 祝言の日、客たちは陰で笑い、宗介自身も心のどこかで落胆を隠せなかった。だが、福が作る菓子と入れる茶は、少しずつ泡雪屋の空気を変えていく。 派手ではないのに忘れられない味。人の心の奥にしまわれた記憶を呼び起こす菓子。福は、宗介が見落としていた“商いで本当に大切なもの”を静かに見せていく。 やがて泡雪屋は、思いがけない形で評判を取り戻していく。 なぜ、泉屋五兵衛は美しい姉ではなく、福を宗介に嫁がせたのか。 そして若旦那が、かつて落胆した嫁に深く頭を下げることになった理由とは――。嫁姑|夫婦1.9万字5 0 -
完結第10話
終電の風呂敷
昭和36年の冬、東京郊外の小さな私鉄駅に、毎晩必ず終電だけに乗る老婦人がいた。 午後11時38分。灰色の着物に黒い羽織、そして胸に抱えた紺色の風呂敷包み。彼女はいつも同じ時間に現れ、同じ行き先――工場前駅までの切符を買っていく。 昼間には一度も姿を見せず、帰りの切符も買わない。翌朝戻ってくる姿を見た者もいない。それなのに、次の夜になると、老婦人はまた何事もなかったように駅へ現れる。 若い駅員・高木修一は、次第にその風呂敷の中身と、彼女が毎晩終電に乗る理由が気になっていく。 そして小雪の降る夜、高木は初めて老婦人の後を追った。 終電の先にあったのは、眠らない工場街と、夜勤を終えて戻ってくる幼い少女たちの姿。老婦人が風呂敷をほどいた時、高木はようやく知ることになる。 彼女が毎晩運んでいたのは、ただの荷物ではなかった。 誰にも頼まれず、名前も残さず、昭和の片隅でそっと続けられていた小さな恩返し。その温もりが、時代を越えて誰かの心に受け継がれていく――。人生逆転|真相1.4万字5 0