"娘の結婚式で夫は愛人を新しい妻と紹介した" 第1話
佐藤由美が黒留袖に袖を通したのは、朝6半だった。
52歳。
結婚して27。
今は娘・美穂の結婚式だった。
鏡ので帯をえながら、由美は何度も自分に言い聞かせた。
今だけは、何も起こさない。
今だけは、美穂が笑っていればいい。
夫・剣とのことは、そのでいい。
それが、由美がここ半ずっと決めていたことだった。
黒留袖は、由美の母がくなるに譲ってくれたものだった。
「美穂ちゃんの結婚式で着られたらいいわね」
そう言っていた。
母はそのを見ることなくくなった。
だからこそ、由美は今をきれいに終えたかった。
娘にとって、に度の結婚式。
父親と母親の問題で汚したくなかった。
午8。
夫の剣がホテルの部へ戻ってきた。
55歳。
ダークスーツにいネクタイ。
から見れば、娘の結婚式を迎えた派な父親だった。
「準備できたか」
「うん」
「美穂の控、もうった?」
「これから」
剣はスマートフォンを確認した。
画面を伏せる。
そのき。
由美は気づいていた。
でも、何も言わなかった。
半。
同じように。
剣がスマートフォンを伏せた瞬から。
由美の27は終わり始めていた。
***
美穂は27歳。
ウェディングドレス姿で母を見ると、笑った。
「お母さん、その着物やっぱり似う」
「おばあちゃんのだからね」
「泣かないでよ」
「まだ泣いてないでしょう」
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「目、もう赤い」
2で笑った。
美容師が髪をえている、美穂が鏡越しに言った。
「お母さん」
「何?」
「今まで、本当にありがとう」
由美は瞬、言葉を失った。
「急にどうしたの」
「だって、結婚式のくらい言っておこうとって」
「まだ嫁いでないのに」
「あと数で嫁ぐから」
由美は笑った。
でも胸の奥では。
別の言葉が浮かんでいた。
私のほうこそ。
今までいてくれて、ありがとう。
あなたがいたから。
私は何度も踏みとどまった。
美穂が10歳の頃。
義母が脳梗塞で倒れた。
半に麻痺が残り、1で活できなくなった。
剣は言った。
「男の嫁なんだから、頼むよ」
最初は半のつもりだった。
それが1。
3。
7になった。
朝6に起きる。
剣の朝。
美穂の弁当。
義母の事。
薬。
排泄介助。
通院。
入浴。
洗濯。
夜に呼ばれるもある。
介護サービスを増やしたいと相談すると。
剣は言った。
「かかるだろ」
「でも私、もう体が」
「にいるんだから、それくらいできるだろ」
由美は黙った。
では。
剣は違った。
親戚に、
「母の介護で変でさ」
と言った。
会社では、
「親の面倒を見るのも男の責任ですよ」
と笑った。
実際にオムツを替えたことは、7で1度もなかった。
由美が初めて婚を考えたのは、その頃だった。
でも。
美穂はまだ10歳だった。
ある夜。
呂で由美が泣いていると。
美穂が扉のから言った。
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「お母さん」
「何?」
「きくなったら、私がお母さんを幸せにしてあげる」
由美は慌てて涙を拭いた。
「そんなこと考えなくていいの。美穂は美穂のことだけ考えなさい」
それでも。
あの言葉は。
27の結婚活ので。
何度も由美をたせた。
***
披宴は午1に始まった。
招待客は約180。
郎・鈴達也の父、誠は58歳。
元で複数の産会社を経営している。
両顔わせのから、由美に丁寧だった。
剣はその席で、娘の話をほとんど自分の功績のように語った。
「美穂は私が厳しく育てましてね」
「学も就職も、全部私がアドバイスしました」
誠は笑って聞いていた。
その方で。
美穂が由美の空いた皿に料理を取り分ける姿。
由美が全員のみ物を確認してから自分の箸を取る姿。
剣が娘の好きなべ物すららないこと。
そういう細かいことを見ていた。
帰り際。
誠は由美に言った。
「こんな素らしいお嬢さんを育てられたお母様には、ががります」
由美は驚いた。
夫から。
そんな言葉を聞いたことは1度もなかった。
披宴がむ。
乾杯。
友のスピーチ。
ケーキ入刀。
美穂は幸せそうだった。
達也も何度も美穂の顔を見て笑っている。
由美は、それだけでよかった。
盤。
スクリーンに。
2のいちをまとめた映像が流れた。
美穂が3歳の。
公園で転び。
由美に抱かれて泣いている写真。
学の入学式。
学の吹奏楽部。
の卒業式。
学入学。
就職。
写真のくに。
由美がいた。
剣が写っていないわけではない。
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