"灯油札の密告" 第6話
現なら必ずどこかでく」
誰もらなかった。
その言葉が発せられた頃。
数キロれた貴属の庫ので、事件の扉をく23枚の万円札が、静かに保管されていた。
20051124午915分。内で「吉田宝飾」というさな貴属を営む吉田彰が、黒いビニール袋を胸に抱えたまま警察署の受付へ現れた。普段から警察へ用事のあるような男ではなく、何度も背を振り返りながら「の事件を担当している刑事さんに会わせてください」と頼んだ。
応接へ通された吉田は、野が入ってくるまで袋をけようとしなかった。野が席につくと、吉田は度唾をみ込み、袋のからい封筒を取りした。
「変な話だとわれるかもしれません。でも、どうしても気になって」
封筒のには万円札が23枚入っていた。すべて端の部が黒く汚れ、何枚かはを受けたのようにわずかに波打っている。野が袋をはめて枚を取りすと、古い幣の匂いとはらかに違う油臭がに残った。
「灯油みたいな匂いがするでしょう」
吉田は声を落とした。
の午11頃、子とマフラーで顔を隠した男がへ来たという。男はショーケースをほとんど見ず、「番太くて、いのネックレスをしてくれ」と求した。吉田が数点を並べてもデザインや細には興を示さず、100万円い商品を選んだも値引き交渉を度もしなかった。
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「普通、い買い物ほど細かく見るんです。ところがあのは、品物より入ばかり見ていました。最初に聞いたのも『現なら分証はいらないか』ということでした」
男は着の内側から輪ゴムで束ねた現を取りした。吉田が札を数えているも落ち着かず、何度ものを確かめていたという。幣の表面についた黒いが吉田の指へ移り、灯油に似た匂いがしたため、「どこかので働いているなのか」とそのはった。
ところが、その夜のニュースでの事件が報じられた。から灯油成分が見つかり、警察が放の能性を調べているとった瞬、吉田は昼受け取った幣をいした。
翌朝、の売をへ持っていくに、特に汚れのかった23枚だけを別封筒へ移した。さらに幣の番号もすべて控え、のための現と混ざらないよう保管していたのである。
野はすぐに吉田とへ向かった。
防犯カメラには男の姿が残っていた。画質は2005当の器らしく粗く、子とマフラーのせいで顔を特定できるほどではなかったが、背はそれほどくなく、肩がへ丸まり、を踏みすたび体がわずかに揺れる独特の歩き方が確認できた。
「が悪いのか?」
野が呟くと、佐々がさく息を呑んだ。
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斎藤は数の交通事故で膝を痛めている。で歩く姿を見れば、では特にをかばう癖があった。
の正面映像だけではりないため、周辺の、薬局、からも記録を集めた。薬局のカメラに、貴属をた男が横断歩へ向かう姿が残っており、いが吹いた瞬、子のつばがめくれて顔の半分が数秒だけしていた。
映像を拡し、斎藤を含む複数の写真と比較する。のにも個別に確認を取ったところ、最初のは断言を避けたが、目に映像を見せられた文子は、しわのいで元を覆った。
「これ、正じゃないかい」
吉田にも正式な方法で複数の写真を見せた。彼は迷いながらも斎藤の写真を指した。
「顔全部を見たわけじゃありません。でも目元との形、それから歩き方はこのによく似ています」
それだけでもきな展だったが、本当に捜査本部をかしたのは午に届いた側の報告だった。
が補償の部を現で引きした際、には額払しの管理記録が残っていた。すべての万円札の番号を枚ずつ記録していたわけではなかったが、払いされた券束の番号帯を特定する資料があり、吉田ので使われた23枚のくが、その範囲へ致したのである。
事件数、がから持ち帰った現。
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