"7階に戻るな" 第6話
同に、織が事件に防犯システムの保方法を調べていたという事実は、偶然では済ませにくかった。
自宅へ戻ると、私は今度こそ優郎の斎をけた。夫のから止まっていたが、扉の向こうで静かにき始めた。
斎へ入った瞬、懐かしい匂いがした。古い、革張りの子、優郎が使っていた柑橘系のオーデコロンが微かに混じり、6の朝へ戻されたような錯覚を覚える。机のには夫の鏡ケースが置かれたままで、私はわず「ただいま」と言いそうになった。
涙がそうになったが、今は傷に浸っているではなかった。私は机の引きしをつずつけ、古い帳や会社資料、契約の束を確認した。どれも懐かしいものばかりだったが、夫のや織へ直接つながるものは見つからなかった。
番の引きしだけが施錠されていた。遺品として保管していた鍵束を持ってきて何本か試すと、さなの鍵でカチリと音がした。引きしのには複数の黒いファイルが几帳面に並び、その冊の背表を見た瞬、私は息を呑んだ。
《織・調査報告》
依頼は優郎。調査始は、夫が事故でくなる8かだった。
は民の調査会社がまとめた資料で、織が経営する投資コンサル会社の実態、取引先、資のき、交友関係まで細かく記録されていた。
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会社はから見るよりはるかに刻な赤字を抱え、しい資で古い契約の損失を埋めるような危険な資繰りを続けていた。
さらに、複数のペーパーカンパニーを経由して資をかし、帳簿は別の取引に見せかけていた形跡もあった。その資の部が6に摘発された栄キャピタルと関係する会社へ流れており、夜に届いた聞記事は、このつながりを私へらせるためのものだったのだと分かった。
もっと衝撃だったのは、優郎の会社からも自然な資が流していたことだった。額の取引を何度もねて総額は約7800万円に達し、承認欄には健太の署名が残っている。息子は当、父親の会社で総務と管理を任されていたが、そんなを勝にかせる性格ではないと私は信じていた。
報告の余には、優郎の直で《健太は内容を理解せず署名させられている能性がい》とかれていた。織は夫のを利用し、「いつもの契約」と偽って署名を集めていたらしい。健太が犯罪へ関与していたとしても、それがどこまで本のだったのかは、この資料だけでは分からなかった。
ページをさらにめくると、織の協力者として複数の名が並んでいた。そのに誠という名を見つけた、私は瞬絶望した。
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命をかけて私を助けた男まで、もともとは織側のだったのかとったからだ。
しかし、ファイルの最に挟まれていた優郎のメモで事が分かった。さんは表向き織の経理を伝いながら、実際には優郎へ内部資料を渡していた。最初は仕事として織の会社へ関わっていたものの、正をったは罪悪から内部告発を決し、優郎と共に警察へ資料をす準備をめていた。
さらに通、私宛ての封筒が挟まれていた。の便箋には、夫の見慣れた字で《恵子へ》とかれている。私は何度も呼吸してから読み始めた。
《もし君がこれを読んでいるなら、俺は自分で説できない状況になったのだとう。織君の件は君と緒に調べているが、彼女の背には俺たちが考えていた以に危険な連がいる》
夫は、自分に自然な事故が起きたら偶然だとわないでほしいといていた。そして最に、《俺に何かあれば君を頼れ。彼は最まで君と健太を守ってくれる》と記していた。
私はを胸へ抱き、声を抑えて泣いた。さんは6、くなった夫との約束を守り続け、最の最まで私を守ろうとしてくれたのだ。夫のもさんのも別々の劇ではなく、織の会社をとした同じ事件の延線にあった。
ただ、つだけ分からなかった。
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