"7階に戻るな" 第9話
私が「何が目なの」と尋ねると、織はしばらく黙ったあと、「健太さんのことだけは誤解しないでください」と言った。
彼女の話では、さんは事件当、健太へ直接会うよう連絡していた。織の会社の正を警察へ告発すること、優郎が集めた資料もすべて提すること、さらに健太がらないまま署名していた契約についても説するつもりだったという。健太はそれを聞き、さんが族を壊そうとしているとい込んだ。
「健太さんは、私が正をしていることに々気づいていました」
織はそう言った。「でも認めたくなかったんです。私を問い詰めれば結婚活が壊れるし、自分が父親の会社へ損害をしたことまで認めなければならなくなるから」と続けた。いだと笑うでもなく、観察してきた夫の性格を説するような静さだった。
事件当、さんは4階からエレベーターへ乗り、偶然そこにいた私を見て計画を変えたらしい。健太が5階で待っていることをっていたさんは、私まで巻き込まれると考え、胸の発作を装わせて先にろした。織は非常階段からのをつけ、しれた所で様子をうかがっていたという。
私がりたあと、5階で健太がエレベーターへ乗り込んだ。さんは「もう織さんをかばうな。
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君のお母さんまで危ない」と説得したが、健太は逆し、言い争いの末に肩を突きばした。さんはろへ倒れ、操作盤横の属枠へ部をくぶつけた。
「それは事故だったんです」
織は言った。「健太さんはすぐ救急を呼ぼうとしました。でも私が止めました」と続けた瞬、私はアクリル板の向こうの女を見つめた。事故のあと、救命できる能性があったを見捨てたのは、彼女自だった。
警察を呼べば会社の正がすべてるみにる。優郎のについても再捜査される能性がある。その恐怖から織は健太をそのから逃がし、管理システムの識を使って映像を削除しようとした。
「あなたは優郎さんの事故にも関わったの?」
私が尋ねると、織の目が初めて揺れた。彼女は「直接は何もしていません」と答えたが、その言い方で分だった。
優郎が告発の準備をしていることを、織は栄キャピタルと関係する物へらせた。その、夫の張程と移経まで部へ漏れ、事故が起きた。織自が命令した証拠はないとしても、夫を危険へ差しした事実まで消えるわけではなかった。
「健太さんはあなたにられることを番怖がっています」
面会終、織はそう言った。「警察に捕まることより、お母さんに見捨てられる方が怖いんです」
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と続けた。その言葉だけは、私の胸の最も柔らかい部分を正確に刺した。
マンションへ戻ったあと、私は何度も健太へ話した。しかし度もず、メッセージにも既読がつかなかった。801号を訪ねても応答はなく、息子はどこかへ消えていた。
そのの夜、警察から話があった。
沿いの料で、健太名義のが崖へ転落しているのが見つかったという。
「落ち着いて聞いてください」という警察官の置きを聞いた瞬、私は最悪のことを像した。健太がさんへの罪悪と妻の逮捕に耐えられず、自分でごと崖から落ちたのだとった。から携帯話が滑り、へ落ちる音さえく聞こえた。
しかし数分、再び同じ番号から話がかかってきた。健太本は内におらず、現から300メートルほどれた脇で座り込んでいるところを保護されたという。は無の状態で斜面をり、崖へ転落したらしい。
きている。その事実だけで、私はしばらく泣き続けた。
翌の午、警察の事聴取を終えた健太が私の部へやってきた。数のに歳以老けたように見え、頬はこけ、髭も伸びていた。玄関で「母さん」と呼んだ声は、40代の男ではなく、何かを壊してしまった子どものようだった。
私は何も言わずへ入れ、リビングで向かいって座った。
窓のではたいがり始め、のにい沈黙が流れた。
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