"二十七年目の嘘" 第3話
結婚してすぐのころ、美智子がさな暗を作りたいと言ったときの言葉だ。
「美智子は純粋すぎるから、仕事になんてしたら疲れ果ててしまう。のことをやって、のんびり暮らすのが番向いているよ」
優しい声だった。
妻の体を気遣い、静かな活を守ろうとしてくれているのだと、美智子は信じて疑わなかった。
その言葉を信じて、カメラを置いた。
パートにたいと言ったときもそうだった。
真由が学にがったころ、所の文具で事務の募集があった。
だし、事のにできるからと相談した美智子に、也は穏やかに笑って首を横に振った。
「僕の料だけでりないかい? にいて、子供たちを迎えてやってほしいんだ」
そのたびに美智子は、「されているのだ」と自分を納得させてきた。
働く必がないのは幸せなことだ。
夫がでで戦ってくれているのだから、自分は庭を完璧に守らなければならない。
そうやって数、度もの世界に踏みさないままきてきた。
それなのに。
也は、美智子から取りげたその線を、自分の世の具として使っていた。
「お母さん?」
いつのにか、真由が斎のドアのところにっていた。
にマグカップを持っている。
「お茶淹れたけど……まだそれ見てたの?」
美智子は返事をしなかった。
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真由は部に入ってくると、に散らばった写真のコピーと、美智子が持っているパンフレットに目を留めた。
「何これ。お父さんの会社のパンフ?」
「見て」
美智子はパンフレットを真由に渡した。
真由は議そうに受け取り、パラパラとページをめくった。
「ああ、これってる。お父さんが昔、すごく評判良かったって自してたやつでしょ。会社の資料から冊もらってきたって言ってた」
「これ、私が代のころにいた企画と同じなのよ」
真由のめくるが止まった。
「え?」
「言葉も、写真の撮り方も。私が学のに考えて、落ちたとっていたあの会社にした企画と同じなの」
真由はパンフレットと、に置かれた古いファイルを交互に見た。
眉がしずつ寄っていく。
「同じって……お父さんが真似したってこと?」
「真似したんじゃないわ。持っていったのよ。私の引きしから勝に持ちして、自分の柄にしたの」
美智子の声には、自分でも制御できないりが混じっていた。
しかし、真由の反応は美智子が期待したものとは違っていた。
真由は困惑したように息を吐き、マグカップを机の端に置いた。
「でも、お父さん、ちゃんとこのファイルを残してたんでしょ?」
「残してたから何だっていうの?」
「捨てたりしないで、お母さんの名をいて取っておいたんじゃない。
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それって、お母さんのアイデアを事にってたからじゃないの?」
「事にっていたら、私の名を言もさずに会社にす?」
美智子はちがった。
がしふらついた。
「私はね、真由。何も『自分には何の才能もない』とってきてきたのよ。あの会社に落ちて、社会にる資格がなかったんだって、そうやって自分を納得させてきたの。でも違った。受かってたのよ。そして、私がいいとったものを、お父さんは会社で使って評価されていたの。私がに閉じこもっているに!」
真由はたじろいだ。
母親がこんな声をすところを、で度も見たことがなかったからだ。
けれど、真由のからたのは、美智子のをさらにく抉る言葉だった。
「じゃあ、お母さんは何が言いたいの?」
真由の目が、たくっていた。
「お父さんがお母さんのを奪ったって言いたいの? お父さんは棒だったって言いたいの?」
「そうは言っていないでしょう」
「言ってるよ。そうやってお父さんを責めてるじゃない。お父さんが働いてくれたから、私たちは何自由なく暮らせたんでしょ? 私を学までかせてくれて、健を私のに入れて、このを買ってくれたのは誰なの? お父さんじゃない!」
「真由……」
「お父さんはもうんだの! 言い訳もできないんだよ! なのに、今さら昔の切れ見つけて、お父さんを悪者にして何になるの? お母さんが専業主婦でいたのは、結局お母さん自がそれを選んだからでしょ!」