みかん小説
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"身代わりの爪痕" 第13話

その隙を逃さず、志乃は庫から掴みした保険証眠薬のシートをコートのポケットにねじ込み、拓真の脇をすり抜けて斎をした。

「志乃!!」

から、これまで聞いたこともないような獣の咆哮が響いた。 階段を駆けりる志乃の元がもつれる。段、段とを滑らせながら、転がるようにして階のリビングへ落ちた。

膝と肘に激痛がったが、ち止まる余裕はなかった。 玄関へり、鍵をけ、りのへと素のまました。

は漆黒のだった。 たいが容赦なく体温を奪っていく。アスファルトのが素の裏を切り裂き、血が滲んだ。

ろを振り返ると、神邸の玄関ドアが乱暴にけ放たれ、バスローブ姿の拓真がしてくるところだった。 そのには、ゴルフクラブのような鉄の棒が握られていた。

「志乃! 逃げられるとっているのか!」

狂気に歪んだ夫の叫び声が、音を突き破って響いてくる。 の速さは男の方が圧倒だった。追いつかれる。捕まれば、今度こそ確実に殺される。

の角を曲がった、その瞬だった。

キキィッ――!

いスキール音と共に、暗の向こうから台の軽自が猛スピードで滑り込んできた。 ヘッドライトのい閃が、志乃と、そのろ数メートルの位置まで迫っていた拓真の姿をに晒した。

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軽自の助席のドアが、内側から勢いよく蹴りけられた。

「志乃! び乗りなさい!」

席からを乗りして叫んだのは、姉の里帆だった。

志乃は最の力を振り絞り、いたドアの内へとを投げした。 拓真が振りろした鉄の棒が、パアンと甲い音をててリヤガラスの端を打ち据えた。

「志乃ォッ!!」

狂乱の叫びを残し、軽自はタイヤを軋ませながら夜のへと急発した。 バックミラーので、に打たれながらち尽くす拓真のが、急速にざかっていった。

運転席に座っていたのは、代半ばの髪交じりの女性だった。 く刻まれた眉の皺と、固く引き結ばれた唇。に命を奪われた倉科美加の母親、千鶴子だった。

「志乃さん、丈夫ですか」

千鶴子はバックミラー越しに志乃を瞥し、く落ち着いた声で言った。 志乃は部座席でにまみれながら、激しく息を乱していた。隣に座る里帆が、震える志乃の肩に乾いたバスタオルを巻きつけてくれる。

「持ってきた?」里帆が尋ねた。

志乃は濡れた指先で、ポケットからぐしゃぐしゃになった類と薬のシートを取りし、差しした。 千鶴子が信号待ちのにそれを受け取り、内灯にかざす。

『被保険者:神 志乃』 『 入浴ノ事故トシテ処理予定』

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類に目を落とした千鶴子の肩が、りで微かに震えた。

「……あの男は、とまったく同じことを繰り返すつもりだったのね。美加のも、同じ保険会社、同じ特約だったわ」

千鶴子はスマートフォンを取りし、慣れた様子である番号をタップした。

「弁護士先ですか。私です。……決定な現の証拠がに入りました。これから県警本部へ向かいます。ええ、今夜のうちにかしてください」

その夜、県警本部の捜査課と刑事課がいた。 神建設が築きげてきた元警察幹部との癒着ルートを避けるため、千鶴子の弁護士が事に本庁の監察官と特捜課へ直接パイプを繋いでいたのだ。

翌朝、夜がけると同に、神邸の周囲は規制線で封鎖された。

斎の隠し庫からは、志乃の保険証だけでなく、の美加さんの私物、さらには拓真がルートで眠薬を購入していた記録が記された裏帳簿まで押収された。 神拓真は、志乃に対する殺未遂容疑、およびの倉科美加さんに対する殺容疑の再捜査対象として、そので緊急逮捕された。

義母の敏恵もまた、過の証拠隠滅を主導した疑いで任を求められ、パトカーの部座席で着物の裾を乱しながら顔を覆っていた。

。 志乃は、警察署の相談いパイプ子に座っていた。

扉が乱暴にき、息を切らした母・悦子がび込んできた。

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