"27年目の再会" 第3話
むしろ、父親よりも母親と話すはかった。
買い物。
旅。
将来の相談。
何でも話しているとっていた。
だから直は議だった。
美子が隠していたものがあるなら、なぜ娘にも話さなかったのか。
翌朝。
直は朝の席で、里奈に話をかけた。
「昨のメールのことだが」
話の向こうで、里奈はし黙った。
「お父さん、聞いたの?」
「何をだ」
「お母さんの昔のこと」
直は答えなかった。
すると里奈がさく息を吐いた。
「やっぱり見つけたんだね」
「何をっている」
「全部じゃないよ」
「でも、何かっているんだな」
しばらく沈黙が続いた。
そして里奈は言った。
「私が学の、お母さんの昔の資料を見たことがある」
「資料?」
「古い企画とか、帳とか」
直のが止まった。
「なぜ教えなかった」
里奈の声がし震えた。
「お父さんが嬉しそうに話していたから」
「何を」
「会社をきくしたこと」
直は何も言えなかった。
「お父さん、いつも言ってたよね」
「お母さんがを守ってくれたから、仕事に集できたって」
「私は、それが違いだとはってなかった」
「でも……」
里奈は続けた。
「お母さんは、を守っていたんじゃない」
「自分のを置いたまま、にいたんだとう」
その言葉が、直の胸に刺さった。
そのの午。
直は、もう度会社の資料へ向かった。
調べたいことがあった。
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自分の記憶を確認したかった。
。
会社が急成した期。
直は毎忙しかった。
しい宅シリーズがヒットし、社員も増えた。
雑誌にも取りげられた。
その、周囲は言った。
「社の先を見る力がすごい」
直自も、そうっていた。
しかし。
資料を見れば見るほど、その考えは崩れていった。
最初の企画案。
修正案。
調査。
すべての始まりに、美子の名があった。
ただし、正式な社内記録では別の形になっていた。
「部協力者」
たったそれだけ。
直はその言葉を見つめた。
妻は、自分の会社の成功に関わっていた。
しかし。
会社の歴史には、妻の名は残っていない。
「どうして……」
直は呟いた。
その。
元社員だった田が資料に入ってきた。
「まだ調べているんですか」
直は顔をげた。
「田」
田はし迷ってから子に座った。
「社」
「俺は何を忘れている」
田はすぐには答えなかった。
「奥さんは、社に謝されたいじゃなかったんですよ」
「何?」
「だから、名をさなかった」
直は眉を寄せた。
「それは違うだろ」
「違いません」
田は静かに言った。
「奥さんは何度も言っていました」
「これは私の仕事じゃない。直さんの会社だからって」
直は黙った。
「でも、田」
「なぜ俺はらなかった」
田はししそうに笑った。
「社が聞かなかったからじゃないですか」
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その言葉は、直にはかった。
夜。
に戻ると、美子はリビングで古い写真を理していた。
直は写真を見た。
若い頃の美子。
まだ会社を始めるの自分。
そして、さな娘。
「美子」
「何?」
「おは、本当はどうしたかったんだ」
美子のが止まった。
「急にどうしたの」
「答えてくれ」
しばらく沈黙。
そして美子は写真を見ながら言った。
「昔の私は、京で働きたかった」
直は黙って聞いた。
「版社で、の暮らしをく仕事がしたかった」
「でも……」
「娘がまれた」
美子は微笑んだ。
「その、私は自分で選んだとった」
直はしした。
しかし次の言葉で、そのは消えた。
「でも、あなたは違った」
「え?」
「あなたは最初から、私がにいる提で話していた」
直は息を止めた。
「そんなつもりは……」
「分かってる」
美子は優しく言った。
「あなたは悪気がなかった」
「だから余計に難しかったの」
直は何も言えなかった。
その夜。
直は初めて、美子の昔の帳をいた。
そこには仕事の予定だけではなく、い文章がかれていた。
「今、直さんがしいの設計を話してくれた」
「私なら、もっと族が暮らしやすい形にできるとった」
「でも、今は言わない」
ページをめくる。
さらに数。
「娘が学に入った」
「もう度、働くことを考えた」
そして最のページ。
直はそこでを止めた。
付は15。
文章はだけだった。
「もう度挑戦するには、遅すぎるのかな」
直はその文字を見つめた。
自分はらなかった。