みかん小説
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"水曜日の部屋" 第1話

森川美奈は、娘の部ち止まることが増えた。

理由は、自分でも分かっていた。

そこに誰かがいるわけではない。

声が聞こえるわけでもない。

ただ、ドアノブにをかけるたび、胸の奥にさな痛みがるのだ。

まるで、その部だけがからを止めたまま、自分だけを待っているような気がした。

「……梨

を呼んでも、当然返事はない。

美奈はゆっくりとドアをけた。

畳ほどの部

いカーテン。

壁際の本棚。

机のに置かれたさな観葉植物。

何も変わっていない。

いや。

変えないようにしていた。

娘がいつ帰ってきてもいいように。

そうっていた。

、森川梨は突然いなくなった。

歳だった。

会社を辞めたわけでもない。

と揉めたわけでもない。

もなかった。

警察に相談しても、成女性の失踪では事件性が確認できなければ捜査には限界があると言われた。

携帯話は解約されていた。

座にも自然なきはなかった。

誰かに連れられた証拠もなかった。

に残されたものは、部活用品と、枚のメモだけだった。

――しだけ、自分のためにをください。

たったそれだけ。

美奈はそのを何百回も読んだ。

何度読んでもは変わらなかった。

しだけ」

その言葉だけが、ずっと美奈を苦しめていた。

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しだけと言った娘は、もうも帰ってこない。

どれだけ待てばいいのか。

どこまで待てば、母親として分なのか。

答えは誰も教えてくれなかった。

その異変に気づいたのは、あるの朝だった。

最初は、本当にさな違だった。

美奈は準備をしながら、ふと娘の部した。

まで閉じていたはずのカーテン。

それがしだけいていた。

「……あれ?」

昨夜、自分が閉め忘れたのだろうか。

そうった。

、物忘れが増えた。

齢のせいかもしれない。

夫がくなってから、を切り盛りしている。

疲れているだけだ。

そう自分に言い聞かせた。

しかし、そのの夕方。

もうつ気づいた。

机のに置いていた梨の古い写真て。

数センチだけ位置が違っていた。

美奈は写真てをに取った。

学卒業の

まだ歳だった梨

いワンピースを着て、し恥ずかしそうに笑っている。

この写真を見るたび、美奈はう。

この頃の娘は、自分のことを何でも話してくれた。

学で何があったか。

友達とどこへったか。

誰が好きなのか。

全部話してくれた。

いつからだろう。

娘が、自分のを見せなくなったのは。

美奈は写真てを元の位置に戻した。

そのはまだ、偶然だとっていた。

まただった。

朝、梨の部けた美奈は、今度はらかな違を覚えた。

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机のの植物。

、ほとんど成していなかったさな鉢植え。

葉が枚、黄くなっていた。

美奈は慌ててを確認した。

は湿っていた。

「……?」

自分はをやっていない。

に世話をしたのは数

でも、昨の夜には確かに乾いていた。

美奈は部を見回した。

本棚。

ベッド。

何も盗まれていない。

何も壊されていない。

だから余計に気が悪かった。

誰かが入った。

でも、そのは何も持っていかなかった。

むしろ。

えて帰った。

目。

美奈は確信した。

誰かが来ている。

だけ。

必ず。

最初は警察へ連絡しようとった。

しかし、何と言えばいいのか分からなかった。

に失踪した娘の部に、誰かが入っています」

それだけならまだいい。

問題は、その物が何も悪いことをしていないように見えることだった。

荒らしていない。

盗んでいない。

壊していない。

ただ、娘の部を守っている。

そんな印象だった。

だから美奈は、防犯カメラを買った。

さなを経営している自分にとって、決してい買い物ではなかった。

けれど、らないままではいられなかった。

そして回目の

分。

美奈は眠れずにスマートフォンの画面を見ていた。

カメラの通が届いたのだ。

臓がきくねた。

指が震えた。

画面をく。

暗い廊

玄関。

そして――

の女が映っていた。

黒いコート。

肩まで伸びた髪。

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