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"爪の綺麗な中卒娘、奇跡を起こす" 第3話

「社、正気なんですか! モーターズへのコンペ図面の提まで、あと何残されているとっているんですか! こんな修羅期に、即戦力どころか何の役にもたない素、しかも卒の女の子を拾ってどうするんですか!」 「……おに似ていたからだ」 田所の気が、その言でぴたりと止まった。 「おが初めてこのを叩いたのことを、覚えているか。あれはのことだ」

郎の父親がまだ現役で社を務めていた代。田所はを卒業したばかりの、もわからない歳のとしてこのにやってきた。当、採用の窓っていた誠郎は、その景を今でも鮮に覚えていた。緊張のあまり自己紹介の声は完全に裏返り、それでも目の奥だけは、飢えた獣のように真っ直ぐに輝いていた。 「あの、おを採用したのは親父だ。当の俺は猛反対した。からでも使える即戦力が喉からるほど欲しかった期だったからな」 田所はぐっと言葉を詰まらせ、俯いた。 「だが、親父はこう言った。『男の目とを見ろ』とな」 誠郎は窓辺かられ、使い古されたデスクのにどっしりと腰をろした。 「あの子の目をみたか。おが昔していたのと同じ、どんな過酷な現実でも絶対に諦めないの目をしていた。

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そして、あのを見たか。あんなに荒れ果てていながら、爪だけは丁寧にえられていた。どんなに活に追い詰められても、決して自分の魂を雑に扱わないだ」

田所はしばらくそのち尽くしていた。やがて、何も言わずに静かにげ、取りで事務所からった。廊にトボトボと戻った田所の界の隅で、窓のの菜のに揺れていた。だが、もはや誠郎の決定に対する反論の言葉は喉の奥に引っかかってなかった。、誠郎の父があの自分を見捨てずに拾ってくれなければ、今の自分というは絶対にここになかった。それだけは、痛いほど骨にしみて分かっていたからだ。

翌朝、夜がけきらないうちに、凜は誰よりもに姿を現した。 ベテランの松永から渡された貸用の作業着は、男性用のフリーサイズで、細の凜の体にはお化けのようにきすぎた。袖を何にもまくりげ、恰好に太いベルトでウエストをギュッと無理やり絞り込んで着用した。それでも、汚れつない几帳面さできちんとにまとっていた。

しかし、に吹き荒れる殺伐とした空気は、参者の彼女に優しくなどなかった。 採用から目の朝のことだった。 凜が作業ラインの脇に落ちたを懸命にほうきで掃き集めていると、ちょうどその通を通りかかった田所が、いらちに任せて声を荒らげた。

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「おい、そこを今掃除されたら邪魔なんだよ! 空気が読めないのか!」 「あ……すみません!」 「素がウロウロすんじゃねえ!」 完全に理尽な言いがかりだった。そもそも「隅々まで綺麗に掃除しておけ」と最初に指示したのは、ほかならぬ田所自だったのだから。しかし、凜は言い訳つせず、ただ黙ってげ、ほうきを抱えて別の所へとすごすごと退散していった。田所は振り返りもせず、そのまま荒々しい音をてて持ちに戻っていしまった。

を追うごとに、全体の空気は限界まで張り詰めていき、誰もがの余裕を完全に失いつつあった。そして、そのどうしようもない苛ちは、自然とい凜の背へと集していった。 「おい、この専用の測定具、どこやったんだよ! そこに置いといてくれって昨のうちに言ったはずだろ、なんで勝かすんだよ、気が利かないな。……まったく、卒はこれだから困るんだよ」

作業員の男が、舌打ち混じりに吐き捨てただった。言った本も、すぐに気まずくなって周囲に目を配り、慌てて線を別の所へそらした。しかし、その酷な言葉は、静まり返ったの空で凜のにあまりにもハッキリと届いていた。

お昼の休憩。古びたパイプ子が並ぶ休憩で、作業員たちが輪になってコンビニ弁当や妻の作り弁当を広げている、あとからそっと入ってきた凜の姿を見とがめた男のひとりが、悪びれもせずにボソッと呟いた。

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