"爪の綺麗な中卒娘、奇跡を起こす" 第7話
設計のには、卓を叩く乾いた音と、全員の荒い息遣いしか聞こえなかった。 やがて、松永のがピタリと止まった。彼は画面の数字を見つめたまま、文字通りのように固まっていた。 「……社」 松永の声は、信じられないものを見た恐怖でかすれていた。 「……っています。彼女の言う通り、角度を度修正して指定のパッキンを噛ませると、シミュレーションの振誤差が、気に基準値をゼロ・ポイントも回りました……!」 若いスタッフも驚愕の表で顔をげ、じっと凜の顔を見つめた。 誠郎は何も言わなかった。ただ静かにちがり、凜を瞥すると、そのまま何も言わずに設計をあとにした。廊を歩きながら、誠郎は胸のつかえがりるようない息をそっと吐きした。
設計のには、い、気まずい沈黙が漂っていた。 松永は子に腰掛けたまま、自分の目のにある図面から目をせなかった。プライドを持って積みげてきた自分のキャリアが、今夜、ふらりと現れた卒の歳の女に瞬で追いつかれ、そして鮮やかに追い越されてしまった。その圧倒な事実をどうやって自分のプライドにみ込ませればいいのか、彼には分からなかった。 凜はさく「失礼しました」とをげると、にそのを辞した。
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翌の朝番、誠郎の事務所から凜の名が呼ばれた。 「島、事務所へ来い」 彼女が社にを踏み入れるのは、採用の以来初めてのことだった。に入ると、机のには目も眩むような量のファイルがのように積みげられていた。過分の設計図面、製造実績の記録、材料ごとの耐久データ、過に発した良品のすべての分析結果。川精の歴史のすべてが、そこに凝縮されていた。 「そこに座りなさい」 促されて子に座ると、誠郎はしばらく何も言わずにパイプの煙をくゆらせるように黙り込んでいた。それから、ゆっくりと言葉を発した。 「モーターズへの正式な提期限まで、残りだ。松永のチームは昨夜から設計を根本から見直し始めているが、この膨なデータをから処理してにうかどうかは分分だ」 凜は黙ってその言葉をみ込んでいた。 「……おに、この設計の全権を任せたい」 凜のが、膝のでぴたりと止まった。 「……私が、ですか?」 「そうだ。こののような過のデータも、この設計も、必なものはすべて自由に使っていい。何かりないものがあればすぐに言いなさい」 凜は目のにそびえつファイルのを見つめ、それから誠郎のまっすぐな目を捉えた。 「……どうして、私なんかにここまでしてくださるんですか?」
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誠郎はしだけ窓のに目をやり、それから答えた。 「昨夜のおの目を見たからだ。あの目は、自分のの沼のでも、本物の真実を見据えているの目だった」
凜の喉が、さくゴクリと鳴った。 これまでののので、自分というのを誰かにから信じてもらったことが、果たして度でもあっただろうか。履歴をすたびにたく突っ返され、面接の子に座るたびに「卒」という文字だけで性を全否定されてきた。その悔しさが、いつも彼女の胸を引き裂いていた。 「……やります」 声は驚くほど静かだったが、そこにはミリの迷いもしなかった。誠郎はく頷いた。それ以の言葉はだった。
その部始終を、社のいたドアの隙から、田所が腕を組んでじっと聞いていた。壁に背を預けたまま、彼の胸は複雑だった。素直に納得などできるはずもなかった。しかし、誠郎が本気で選んだの目を、こので見てきた。あの社の目が本気を物語っているは、いつだって結果に正しかったのだ。
そのから、凜は完全に設計へとこもりきりになった。 机のに何冊ものファイルを積みげ、パソコンのディスプレイに映しされる無数の数値と格闘し続けた。
分の膨なデータが、彼女の脳内へとスポンジのように次々と吸収されていく。材料ごとの微妙な特性、加にじるミクロの誤差、良品がびした最悪の条件、そして過に成功した設計に共通する黄の法則。