"左足だけの靴箱" 第2話
番古い領収の付は、今からちょうどの。
その付を目にした瞬、私の脳裏に鮮な記憶が蘇った。
の。元の建設会社で現監督を務める夫が、初めて「会社で事故があって対応に追われている。これから夜残業が増えるかもしれない」と、固い表でに帰ってきただった。
私は役所の税務課で契約職員として働いている。頃から固定資産税や県民税の納税データ、の登記報といった数字と格闘するのが私の仕事だ。に流されず、類の矛盾や数字のを見つけすことには倍けている自負があった。
パニックになりかけるを必で却し、私は居に12の靴を付順に並べ替えた。
番古いの靴から、番しい今の靴まで。すべて私が過のに「玄関で片方だけなくした」とい込んでいた靴たちだった。
私は自分のスマートフォンの写真フォルダと帳を遡り、照作業を始した。
、、。夫が「現のトラブルで夜帰宅になる」「急な張が入った」と言って泊や遅い帰宅を繰り返していた付と、靴底からてきた領収の付が、寸分違わず致していた。
夫は夜残業などしていなかった。
夫は、この領収の付の夜、誰かにを支払っていたのだ。
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そして、そののやり取りがわれるたびに、私のの靴が失われ、んだ吉岡老の元に渡っていた。
なぜ、吉岡静なのか。
なぜ、私のの靴なのか。
なぜ、夫は妻の靴を盗みし、隣の老に差ししていたのか。
計の針が午を回った頃、玄関の鍵がガチャリと回る音が響いた。
「ただいまー。いやあ、今も現が押して参ったよ」
呑気な声をげながら玄関に入ってきた夫・直は、靴を脱ぎかけた体勢のまま、ぴたりときを止めた。
廊から居へと続くドアがいており、そのフローリングのには、の靴がずらりと然と並べられていたからだ。さらにその横には、カビ臭い段ボール箱がぽつんと置かれている。
「……なに、これ。彩、なんでこんなところに靴が散らばってるんだ?」
直は引きつった笑顔を浮かべようとしたが、その頬が微かにヒクヒクと痙攣しているのを、私は見逃さなかった。彼の線は、フローリングに並んだ靴の群れではなく、違いなく「段ボール箱」の表面に貼られた遺品理業者のステッカーに釘付けになっていた。
直の額から、筋のや汗がスーッと垂れ落ちる。
「今ね、隣の吉岡さんの部の遺品理が終わったのよ」
私は務めて平静な、いつものトーンで声をかけた。
「業者のが『故からの預かりものだ』って、この箱を置いていったの。
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けてみたら、議なことに、私がこので無くしたとってた靴が全部入ってたわ」
「な、なんだって……? 吉岡さんが、彩の靴を……? あのおばあさん、認症でも患ってて、勝にうちに侵入して靴を盗んでたってことか? 物物しいな……警察に言ったほうがいいんじゃないか?」
直はまくてるようにで喋りながら、靴の列へとづいてこようとした。
「警察に言うに、あなたに聞きたいことがあるの」
私はそう言って、並べられた靴のからワインレッドのパンプスを拾いげ、その敷きをぺろりとめくってみせた。に挟まれたつ折りの領収が、部の蛍灯のを反射する。
「この靴の底にね、枚ずつ領収が入ってたの。あなたの跡で、『夜当分より受領』ってかれた領収が、枚」
直のが、ピタリと止まった。
部のの空気から、瞬にして切の音が消えったようだった。直の顔からみるみる血の気が引いていき、唇がの粘のようなへと変わっていく。
「これ……あなたの字よね、直? のから始まって、全部あなたが『夜残業だ』って言ってに帰ってこなかったの付が入ってる。どうして吉岡さんの持っていた私の靴のに、あなたのいた領収があるの?」
「それは……その……」
直の喉仏が、苦しげにきくした。
彼は何か言い訳を探すように線を泳がせたが、言葉にならない掠れた声を漏らすだけだった。