"左足だけの靴箱" 第3話
「吉岡さんが棒だったわけじゃないわね」
私はややかな確信を持って言い放った。
「私の靴を玄関から持ちしたのは、吉岡さんじゃない。あなたね、直」
直は弾かれたように私を見た。その目は恐怖に見かれ、全が刻みに震えていた。
「な、なにを言ってるんだ彩! 俺が自分の妻の靴を盗むわけがないだろう! きっと何かの違いだ、その老が俺の類をどこかで拾って、勝に靴に挟んだんだよ!」
「拾った? 組の靴すべてに、完璧に対応する付の領収を? それに、このの品の靴は誰が買ったの? あなたがカードで買ったの? それとも現?」
「違う! 俺じゃない! 俺は何もらない!」
直は叫ぶように否定すると、靴の列を蹴ばすようにして逃げ切り、自へと駆け込んでバタンとドアを閉めてしまった。ガチャリと内鍵がかかる音が響く。
取り残された居で、私は静かに息を吐きした。
夫のあの異常な揺。それは「秘密をられた」という恐怖だけでなく、「埋めておいたはずの体が掘り返された」という種類の、決定な絶望の表だった。
直は吉岡静にみを握られていた。
それも、自分の妻の靴を差しし、毎のように現を支払わなければならないほどの、致命なみを。
翌、私は役所の自分のデスクに着くと、業務のを縫って内部端末をちげた。
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私が所属する税務課の端末からは、方税の課税状況や固定資産の所者報、そして民基本台帳の履歴を閲覧することができる。当然、業務の私利用は厳しく制限されているが、私は「隣のに伴う民票除票処理と税務関連の確認」という正規の業務実を作成し、吉岡静のデータを検索システムに打ち込んだ。
画面に表示された吉岡静の履歴を見て、私は眉をひそめた。
吉岡静(歳)。
彼女がこのアパートの202号に引っ越してきたのは、今からの。つまり、夫の靴底の領収が始まり、私の靴が消え始めた「の」の直のことだった。
それ以の彼女の所を確認すると、隣県のさな港町になっていた。
さらに驚くべきデータが見つかった。
このアパートの202号の賃貸契約報だ。吉岡静は入居者として登録されていたが、毎の賃の座振替元として登録されていた座の名義は、吉岡静ではなかった。
『フカヤ ナオト』
夫の名だった。
夫は吉岡静に毎渡しでを払っていただけでなく、彼女がむこのアパートの部の賃まで、全額自分の座から引き落とさせていたのだ。
の払い。
なぜ、そこまでして夫はこの老の面倒を見続けていたのか。なぜ、自分の目との先である「隣の部」
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に彼女をまわせたのか。
監するためか。それとも、老に監されていたのか。
私はさらに吉岡静の戸籍追跡(除籍謄本の報)を掘りめた。彼女の元、族構成、過の経歴。
吉岡静には、かつて娘がいた。だがその娘はに病。娘には息子の男児がいた。名は「吉岡輝(ひろき)」。静にとっての唯の孫だった。
その吉岡輝の戸籍データを確認した瞬、私の背筋にたいものがった。
『平成〇〇 』
――の。
夫の領収の枚目に記されていた付であり、夫が「現で事故があった」と言って蒼な顔で帰ってきた、まさにそのだった。
の齢、歳。
原因の欄には「業務の事故による傷性ショック」と記載されていた。
そして、その吉岡輝が当勤務していた会社の名称を見た、私はわずマウスを握るに力を込めすぎ、爪がく変した。
『限会社 組』
夫が現監督を務め、夫の親族が経営している、あの建設会社だった。
すべての線が、本の太く禍々しい糸となって繋がり始めた。
の、夫の会社で、吉岡静の唯の孫である吉岡輝が事故した。
その直から、夫は「夜残業」と称して吉岡静にを支払い始め、彼女を自宅の隣に呼び寄せて賃を払い続け、そして私のの靴が次々と奪われていったのだ。