"左足だけの靴箱" 第8話
「渡辺という男は何者なの?」
「あいつは……静さんのい親戚で、あの部の仲介をした産だ。静さんから俺のみを聞きして、静さんがんだ途端に俺を脅し始めてきたんだ……! 『施誌の原本を持っている。止め料として百万円払え』って……!」
「施誌の原本は、今どこにあるの?」
私の問いに、直はビクリと体をこわばらせた。
「それは……渡辺が持ってる。静さんの部の隠し庫にあったのを、あいつが真っ先に回収したんだ……」
「そう」
私はスマートフォンを取りし、画面の録音止ボタンを押した。
「全部、録音させてもらったわ。直」
直が絶句して目を見いた。
「な……なにを……彩、お……?」
「あなたがにった業務過失致、文偽造、業務横領、そして私に対する窃盗の自。すべて完璧に記録されたわ」
「な、なに言ってるんだよ彩! 警察にこれをす気か!? 俺が捕まったら、おだって『犯罪者の妻』になるんだぞ! 宅ローンだって払えなくなる! おのも終わりなんだぞ!?」
直は狂ったように叫び、私の肩を掴もうとを伸ばしてきた。
私はそのをたく振り払った。
「私の配なら無用よ。あなたと婚して、資産をしっかり分与させてもらうから。宅ローンは、あなたが私腹に肥やした隠し座の資産から全額返済してもらうわ」
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「隠し座……!? なぜそれを……!」
「税務課のを舐めないで。あなたが会社から横領したを、別名義のネット座に隠していたことくらい、とっくに調べてあるわ」
直の顔が、今度こそ完全に絶望で染まった。自分が温で無だとい込んでいた妻が、自分を社会に抹殺するための準備を完璧にえていたことに、ようやく気づいたのだ。
そのだった。
ドン、ドン、ドン!
真夜の静寂を切り裂くように、玄関のドアを激しく叩く音が響き渡った。
「さーん! けなさい! 直さん、にいるのは分かっているんだよ!」
ドア越しに響いてきたのは、産の渡辺の号だった。
「施誌を警察に持ち込まれたくなかったら、今すぐを用しろ! 居居留守を使っても無駄だぞ!」
ドアノブがガチャン、ガチャンと乱暴に回される。
直は鳴をげてを抱え、部の隅へと丸まった。「たすけて……たすけてくれ彩……」とけない声を漏らすばかりだ。
私はちがり、居に並べられた12の靴のから、番しい靴をにとった。
「直。あなたが撒いた種は、自分で刈り取りなさい」
私はたく吐き捨てると、玄関へと向かって歩きした。渡辺という脅迫者、そして罪を逃れ続けた夫。の愚か者に、決定な引導を渡すために。
【第3部】
「きませんよ」
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私はインターホン越しに、静かに、しかし廊に響き渡る声で言い放った。
ドアので乱暴にノブをガチャガチャと回していたが、ピタリと止まる。
「……何だと? 奥さんか。いいからけなさい! 旦をせ! 今すぐだ!」
渡辺の声がドアの属面を震わせる。私は胸のに抱えたスマートフォンで、すでに録音アプリを作させていた。ドアスコープを覗くと、渡辺は興奮した面持ちで廊にち、チラチラと周りの部を気にしていた。真夜の集宅で騒ぎを起こせば自分が利になることくらい、産の男なら分かっているはずだ。
「渡辺さん。警察を呼びましょうか?」
私が鍵穴に向かって静に言うと、の気配が瞬にして凍りついた。
「……何?」
「あなたが現っている為は、刑法第223条の罪、および第249条の恐未遂罪に該当します。ドアを叩き、脅迫めいた声でを求している音声は、すべてリアルタイムで弁護士のもとへ転送されています」
「な……ッ! 弁護士だと!?」
「ええ。吉岡輝さんのに関する業務過失致の隠蔽、および施誌の隠匿についても、番で労働基準監督署と所轄の警察署へ報提供をいます。あなたがにしている施誌は、な事件の証拠品です。それを私利私欲の脅迫に使っている点で、あなたも同罪ですよ」
ドアので、渡辺が息を呑む音が聞こえた。
「くそっ……! 気なを叩きやがって! ご主がどうなってもいいのか!? 刑務所きだぞ! あなただって犯罪者の妻としてをひそめてきていくことになるんだぞ!」