"「一円もやらない」姑と二十六億円の遺言" 第17話
恵子さんが赤い差し押さえの札を貼られたエルメスのバーキンを抱え込み、調査官に泣きついていた。
「やめて、それは私のよ。そのバッグだけは持っていかないで」
しかし、法執のプロである彼らに、その涙は滴の効果もない。
「恵子様、公務執妨害で拘束されることになりますよ」
恵子さんは必に抵抗する。
「してください。嫌、これがなくなったら私には何も残らないじゃない」
方で美咲さんも、自分のの回りのものを必にに詰め込もうとしていたが、そこにも警察のが伸びていた。
「美咲様、そのもホワイトリーフ社、すなわち法名義の資産です。私に使用することは認められません。鍵を渡しなさい」
美咲さんは泣き叫ぶ。
「そんな。じゃあ私はどうやってここから帰ればいいのよ。なんて何も乗ってないのよ」
彼女たちのセレブ活は音をてて崩壊していた。
座は全て凍結され、クレジットカードは枚残らず使用能。
元にあるのはわずかな銭と、数えきれないほどの督促状だけだ。
そこへ警察の両がさらに数台、のに止まった。
からてきたのは、錠をかけられた健さんと夫さんだった。
事聴取が終わり、いよいよ本格な逮捕状が執される直の、現確認のために連れてこられたのだ。
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恵子さんが夫に駆け寄る。
「あなた、健さん。どうにかしてよ。このたちを追いして」
しかし健さんは、うつろな目で面を見つめるばかりだった。
「無理だ。全部バレたんだ。俺たちが会社のを流用していた証拠だけじゃない。親父が俺たちに内緒でかけていた膨な命保険の受取が、全員ゆきさんに変更されていたんだ」
恵子さんは目を見いた。
「命保険?」
健さんは絶望に満ちた声で言う。
「親父は自分がんだら俺たちにが入るようにしていたはずだった。でも3のき換えで、受取は全てゆきになっていたんだ。俺たちは親父がぬことすらに変えられなくなったんだよ」
健さんの言葉に、恵子さんはそのに崩れ落ちた。
彼らは義父がくなったに入ってくるはずの億単位の保険を担保に、消費者融からも額の借をしていたのだ。
保険が入らないとなれば、彼らを待っているのは破産どころかからの取りてだった。
美咲さんが叫ぶ。
「お義父様、ひどすぎるわ。実の息子を捨ててあんなの嫁を優先するなんて」
夫さんがたく言い放つ。
「じゃないさ。ゆきさんは俺たちがっている以に、このの本質にいだったんだ」
夫さんは混乱ので何かに気づいたようだった。
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夫さんは健さんに尋ねる。
「なあ兄貴、いしたよ。子供の頃、蔵のに隠されていたあの古い戸籍謄本のこと。親父が必に隠していた、お袋に関するあの秘密」
恵子さんと美咲さんは呆然と聞いていた。
恵子さんがいがる。
「秘密って、何よ。お義母様が何を隠しているっていうのよ」
健さんは力なく首を振った。
「お袋はずっと自分は名の令嬢だと言っていただろう。でも本当は違うんだ。お袋こそが、このに潜り込んだ最の詐欺師だったんだよ」
その衝撃な言葉が、崩壊しかけた族のに波紋のように広がった。
方その頃、私は彦と共に病院の庭園にいた。
階の般病棟では、義母の苗さんが孤独な夜を迎えている。
私は彦に尋ねた。
「彦さん。さっきおっしゃっていた最の事実って、お義母様の素性のことですか」
彦は夜空を見げ、くため息をついた。
「ああ。ゆき、君は親父から聞いていなかったのか。誠さんの会社を親父が引き継いだ、それを裏で画策し、親父をそそのかした黒幕が誰だったのかを」
私の臓が、ドクンときく波打った。
私は揺を隠せない。
「お義父様は確かに裏切りました。でも、あんなに優しかったお義父様が、親友を裏切るような酷な決断を自分でせたとは私にもえなかったのです。
まさか、お義母様が……」
彦は静かに頷いた。
「そうさ。苗さんは、元々誠さんの会社の受付だったんだ。彼女は誠さんの資産に目をつけ、彼を誘惑しようとしたが、失敗した。