"「一円もやらない」姑と二十六億円の遺言" 第24話
帰り、私たちは並んで歩きながらこれからの話をした。
彦が語る。
「誠産では、寄りのない齢者や経済に苦しい若夫婦のための支援宅事業を始める予定です」
お義父様が残してくれた資産は、もう誰かを虐げるための具ではなく、誰かを笑顔にするための力へと変わるのだ。
彦が冗談めかして言った。
「ゆき、あの病院で『財産をもらった方に頼んでください』と言ったの君の顔、実はかっこよかったよ」
私はし照れ臭くなって笑い返した。
「あんなこと、もう度と言いたくないわ。でも、あの瞬があったから今の私があるのね」
空を見げると、羽の鳥が自由に羽ばたいていった。
かつて私は、何も持っていない透なだとっていた。
でも、そうではなかった。
私には父から受け継いださがあり、お義父様から託された信頼があり、そして隣でを握ってくれる切ながいる。
佐藤の空気は確かにあの凍りついた。
しかしそのたい氷が溶けたには、見たこともないほど美しく力い芽が吹きしていた。
彦が優しく言う。
「ゆき、帰ろう。私たちのへ」
私はく頷いた。
「ええ、帰りましょう」
私は彦のをく握り返した。
もう何も怖くない。
私は私のを、私ので堂々と歩んでいく。
黄の輝きを失った16億円の豪邸よりも、10億円のよりも、今の私ののにあるこの温もりこそが、何にも代えがたい本当の財産なのだから。
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欲に支配された族の物語は終わった。
けれど、と誠実さによって築かれるしい族の物語は、これから始まるのだ。
あのから2。
かつてホワイトリーフと呼ばれていた会社は、今では『誠産』として全国にられるになっていた。
利益だけを追う会社ではない。
齢者がして暮らせる宅。ひとり親庭を支えるまい。病気や借でむ所を失ったたちへの支援。
誠が見た会社を、私はようやくこので形にすることができたのだ。
ある、私は仕事を終え、彦と並んで夕暮れのを歩いていた。
ふと、スマートフォンに本の連絡が入る。
老ホームからだった。
『苗様がおくなりになりました』
私はち止まった。
しみでもりでもない。
ただ、いい物語が本当に終わったのだとじた。
施設の職員によれば、最の数ヶ、苗さんは毎同じ写真を眺めていたという。
それは、若きの父誠と義父輔さんが並んで笑っている写真。
そして、最まで「ごめんなさい」とその言葉だけを繰り返していたという。
許されたかったのか、許して欲しかったのか、それはもう誰にも分からない。
けれど、の最にようやく自分の罪と向きえたのなら、それもまたつの救いだったのかもしれない。
数、私は父の墓を訪れた。
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隣には彦、そして私たちのにはさな女の子がっていた。
娘が首を傾げる。
「じいちゃん?」
私は微笑んだ。
「そうよ、ママの切なお父さん」
娘はさなでを供え、無邪気に笑った。
その姿を見た瞬、私は初めて理解したのだ。
復讐ではは幸せになれない。
本当にを取り戻す瞬は、憎しみを終わらせたではなく、その先にある幸せを掴んだなのだと。
父から受け継いだもの、義父から託されたもの、失ったもの、取り戻したもの。
その全てが今の私を作っている。
私は墓にそっと触れた。
「お父さん、全部終わったよ」
が吹いた。
まるで誰かが、優しくを撫でてくれたようなだった。
私は空を見げる。
あの、義母に「あなたは」と言われた私。
何も持たないとっていた私。
けれど本当は違った。
私には誇りがあった。信頼があった。守ってくれるがいた。
そして今は、守りたい族もいる。
16億円の豪邸も、10億円のも、最には誰も幸せにしなかった。
けれど、誰かをいやるだけは、何経っても価値を失わない。
それこそが、父が残した本当の遺産だったのだ。
彦が私のを握った。
私は握り返した。
夕の、で歩きす。
もう振り返ることはない。
欲に支配された族の物語は終わった。
けれど、と誠実さによって築かれるしい族の物語は、これから始まるのだ。