"やさしい義母の消しゴム" 第7話
『そ、それは変ですね……真由美さん、お体は丈夫ですか?』
「ええ。哲也もすっかり参ってしまって。あの子、優しいものですから、婚も言いせずに耐えているんです。でも、これ以症状が悪化するようでしたら、しかるべき施設へのご相談も考えなければと……」
『いやあ、本当にががります。真由美さんのようなお姑さんがついていらっしゃれば、哲也さんも救われますよ。何か困ったことがあれば、マンション自治会としてもサポートしますからね』
「ありがとうございます。どうか、麻美ちゃんのことは温かい目で見守ってやってくださいませ」
完璧な演技だった。
真由美さんは着々と「堀」を完成させていた。 隣民や自治会に「狂った嫁と、それに耐える聖母のような義母」という固な固定観を植え付け、万が私が助けを求めてにびしても、誰も私の言葉を信じない状況を作りげている。
私をこのから排除し、精神病院や施設に隔する。 そして自分は「病気の嫁を介護し続ける健気な姑」として、私の名義で借りた千万円の借を麻美の医療費や活費名目で処理し、私の親族(だと彼女がっている)や信託からを搾り取り続ける。
それが、真由美さんの描いた「完璧なシナリオ」だった。
◇
夜。哲也が帰宅した。
ダイニングテーブルには、真由美さんが作った豪勢な煮物が並んでいる。
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哲也はビールをみながら、嫌よく話しかけてきた。
「なあ麻美、母さんから聞いたぞ。お、ついに療内科にく気になったんだって?」
「……ええ。お義母さんが、私のために病院を探してくださったの」
「よかったじゃん。お、最ずっと暗い顔してに引きこもってたからさ。母さんに余計な配かけるなよ? 母さん、今もおのことで泣いてたんだぞ。『麻美ちゃんを救ってあげられなくて悔しい』ってさ」
哲也はため息をつき、呆れたように私を見た。
「おは本当に恵まれてるよ。俺の母さんじゃなかったら、こんな気な嫁、速攻で追いされてるからな。謝の気持ち、忘れるなよ」
私は哲也の顔をじっと見つめた。
この男には、罪悪すらしない。 母親の作った「物語」を百パーセント信じ込み、妻がとしての尊厳をごとに削られていることに、何つ気づいていない。
「ねえ、哲也さん」
「ん? なんだよ」
「もし……もし私が、お義母さんの言っているような『病気』じゃなかったら、どうする?」
哲也は瞬、きょとんとした顔をした。 それから、バカにしたような笑いを漏らした。
「は? 何言ってんだお。母さんが嘘つくわけないだろ。元教師だぞ? おみたいな卒の世らずと違って、母さんは社会な信用があるんだよ。変な寝言言ってないで、く皿げろよ」
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「……そうよね。すみません」
私は静かにちがり、空になった皿を台所へと運んだ。
流の音に紛れさせながら、私はさく息を吐いた。
哲也。あなたも同罪だ。 母親の異常性に目をつぶり、保とプライドのために妻を虐げ続けた代償は、決してくはない。
台所の勝の脇、ゴミ箱のに隠してあるICレコーダーの赤線ランプが、暗ので静かに点滅していた。
真由美さんが私に浴びせた暴言。 隣民への虚偽の言いふらし。 そして、哲也のこの無慈な発言のすべてが、付ととともに、法律事務所の暗号化サーバーへリアルタイムで送信されている。
(お義母さん、哲也さん)
でを洗いながら、私は鏡に映る自分に微かに微笑みかけた。
(台装置は、すべていました)
真由美さんが「最の仕げ」として、私に破滅の判印を押させようとするその瞬こそが、私の反撃の幕けとなる。
そのは、真由美さんにとって「完璧な勝利の」になるはずだった。
曜の午。真由美さんは珍しく、濃い紺のフォーマルなスーツにを包んでがにやってきた。
「麻美ちゃん、お着替えは済んだかしら?」
真由美さんの声には、隠しきれない興奮と抑圧された歓が混じっていた。
「ええ、お義母さん。これでよろしいでしょうか」
私が部からていくと、真由美さんは満そうに頷いた。
着せられているのは、あのくすんだグレーのチュニックと、爪先の丸い粗末な靴。