"「ただいま」と笑う夫を家族全員で無視した" 第12話
それが、目のにつ久史のれな正体だった。
「そういうわけだから。あなたの浅ましい嘘は、最初から全部バレているのよ」
久史の顔面が、屈辱とりで気に歪んだ。 「お、お……! よくもそんな真似を……! こんな勝なことをして、ただで済むとっているのかよッ!?」
「勝なのは、体どちらかしら?」 私がたく言い放つと、久史は逆し、私に向かって汚い罵声を浴びせ始めた。 「俺を嵌めやがって! だいたいな、夫に浮気されるような隙を作ったおが悪いんだろうが! おが女としての魅力を失ったから、俺はに癒しを求めたんだ! 俺は悪くない!」
その醜悪なき直りを聞いた瞬、それまで沈黙を守っていた義父が、凄まじい力でテーブルを叩いてちがった。
「――この、恥らずがッ!!」
鳴りのような号が、リビングを揺るがした。 義父は激しいりで肩を震わせ、実の息子を殺さんばかりの鋭いで射すくめた。 「が子ながら……本当に、けない! ここまで浅ましく、腐り果てたに育ってしまったとは……親として恥ずかしくて顔もげられん!」
義母もまた、え切った差しを久史に向け、静かに言い放った。 「自分のしたことを、骨の髄まで反省しなさい。……それと、今のうちに次の再就職先でも探しておくことね」
「は……? 再就職先? 何言ってるんだよ母さん、俺はの正社員だぞ!?」
広告
「あなた――その会社も、懲戒解雇されるから」
私のその言に、久史は目を見いた。 実は、に引導を渡したのと同じ、私は久史の勤務先の事部およびコンプライアンス委員会に対し、詳細な証拠資料を添えて正式な告発をっていたのだ。 「子育て世代の転勤全廃を謳いながら、実際には庭を崩壊させ、社員の単赴任を放置している実態を、マスコミと労働基準監督署に公表する」と通告したのである。 企業イメージの失墜を恐れた会社側は、社内調査を実施。久史が「族帯同で移する」と虚偽の申請をして単赴任当を正受していた事実や、勤務の貞為を突き止め、久史に対する懲戒解雇処分を内定させていたのだ。
「そ、そんな……俺が、解雇……!? 嘘だろ……!?」
社会位も、む所も、も、すべてを失った久史は、ガタガタと震えながら、救いを求めるように未優の元へとい寄った。
「み、未優……! パパだぞ! 未優は優しいから、パパを追いしたりしないよな!? パパを助けてくれ……!」
すがりつく久史に対し、未優は怯えたようにを縮め、私の元へと隠れた。 そして、さな指先で久史を指差し、はっきりと言い放ったのだ。
「……おじさん、だれ?」
その言が、久史の臓を正確に撃ち抜いた。 まれてからほとんど顔をわせず、をしたすら放置された父親のことなど、未優の記憶には欠片も残っていなかったのだ。
広告
未優にとっては、ただの汚れた見らぬおじさんでしかなかった。
未優は私のろから晃を見げ、そのの裾をぎゅっと握りしめた。 「パパ……このおじさん、こわいよ……」
晃は優しく未優を抱きげ、「丈夫だよ、未優ちゃん」とを撫でてやった。 その景を見た久史は、発狂したようにを抱えて叫んだ。
「な、なんだよそれ……! 俺がいないに、よろしくやりやがって! おら全員で、俺のことを嵌めたんだなッ!!」
暴言を吐き散らす久史を、私たちは誰として相にしなかった。 晃が未優を膝に乗せ、何事もなかったかのように笑顔で語りかける。
「未優ちゃん、今度の休みは、パパと緒におかけしようか?」
「うん! ばあばたちも、緒にこう!」
「じいじとばあばも、緒にっていいのかい?」 義父と義母も目を細めて未優に微笑みかけた。 「うん! みんな緒の方が、絶対に楽しいもん!」
久史の声など、もはや虫の羽音ほどにも届いていなかった。 実は、経営難に陥っていた義父のは、晃が自社のネットワークを駆使して経営の健全な取引先を紹介し、円満に事業譲渡と閉鎖の続きをめてくれていたのだ。さらに晃は、齢の義両親のために、自分たちのペースで無理なく働けるしい職と、当たりの良いまいまで配してくれていた。 私と晃のい誠と優しさにから救われた義両親は、久史との婚届の証欄にも、そして私と晃の婚姻届の証欄にも、涙を流しながらんで署名と実印を押してくれていたのである。