"汚れた手と呼んだ義母へ" 第6話
「な……なんだと……!」
崇の顔から血の気が引いた。
隣で雅代がヒステリックに叫び声をあげる。
「あなた! どうするのよ! の朝には京から本部の役員が来るのよ! 午には投資ファンドのCEOが到着するのよ!? こんな血まみれの狂が暴れている部を見せるつもり!?」
「うるさい! 黙っていろ!」
崇はを抱えて激しく往復した。
すでに計の針は夜を回っている。京都府内の主な民介護事業者、メンタルクリニック、緊急派遣チームにはすべて断られた。どんなに破格の報酬を提示しても、「刃物を所持した度BPSDへの即介入は能」と蹴されたのだ。
残されたは、ただつ。
あの、自分たちが「病原菌扱い」にし、「の程をれ」と嘲笑した、坂本恵子の率いる公支援チームだけだった。
「……翔太」
崇が掠れた声で言った。
「は、はい……!」
「今すぐ坂本支援センターの緊急夜窓に政請のファクスを送れ。朝番で、私と雅代で直接そのセンターへ向かう」
雅代が目を見いた。
「あなた!? 私たちがあんな所へ直接向くというのですの!? 謝罪しろとでも言われたらどうするのですの!」
崇は雅代の肩を掴み、血った目で睨みつけた。
「いいか雅代、よく聞け! がになれば、がが抱えている億円の設備投資ローンはどうなる!? この『グランドメゾン』の倒産だけじゃない、佐伯医療グループ全体が破綻するんだぞ! メンツと億、どちらがいか分からんのか!」
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雅代は息を呑み、屈辱に唇を噛み締めながら、崩れ落ちるように子にへたり込んだ。
翌朝、午分。
京都域包括支援センターの階にある、質素な応接会議。
スチール製の机とパイプ子が並ぶ殺景な部に、級で乗りつけた佐伯崇、雅代、翔太の名が座っていた。雅代はブランド物のスーツにを包んでいたが、その顔は気で、目元にはくっきりと隈が浮かんでいた。
扉がき、坂本恵子と美咲、そしてチームの若介護士の名が入してきた。
恵子は淡いグレーの作業ユニフォーム姿だったが、その背筋はすっと伸びており、部に入ってきた瞬にの空気を支配するような圧倒な落ち着きを纏っていた。
「お待たせいたしました、佐伯様」
恵子が着席すると、崇は待ちきれないといった様子で、持参した革製のビジネスバッグからみのある茶封筒を取りし、テーブルのに滑らせた。
「坂本さん。単刀直入に話そう。昨夜は息子の躾な話で失礼した。政請の類はすでにこちらのファクスで送信済みだ。そして、これは私からの『個な特別協力費』として百万円入っている。領収もだ。今すぐ『グランドメゾン京都』へ向かい、父の鎮静化をってほしい」
崇は自信に満ちた笑みを浮かべた。
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いくら公関のとはいえ、目のに積まれた百万円の現と、医療グループトップからの申しを拒めるはずがないと踏んでいたのだ。
雅代もまた、どこか見すような線を恵子に向け、扇子を優しく仰ぎながら言った。
「ええ、坂本様。回の料亭での件は、わたくしの言葉らずな面もありましたわ。この件を穏便に解決していただければ、過のき違いはすべてに流して差しげます。翔太と美咲さんの婚約についても、向きに再検討して差しあげてもよろしいですわよ」
まるで「許してやる」と言わんばかりの態度。
隣に座る翔太も、「よかったろ、美咲」と言わんばかりの線を美咲に送ってきた。
美咲は激しいに拳を握りしめたが、恵子は微だにしなかった。
恵子はテーブルのの茶封筒には指本触れず、それを静かに崇の方へと押し戻した。
「佐伯常務。勘違いなさらないでください」
恵子の声はく、そして澄んでいた。
「私どもが提供するのは公な福祉医療サービスです。提示された百万円という透な員は、分厘たりとも受け取れません。規定の介護保険自己負担分および政数料のみを頂戴いたします」
崇の眉がぴくりといた。
「……何だと? はいらないと言うのか?」
「銭で職務を買収しようとする為は、私どもの倫理規範に対する冒涜です」