"女刑事が止めた息子夫婦宅の毒寿司" 第1話
規則なリズムで揺れるの座席で、私はに現実に引き戻された。
隣に座る見らぬ女性が、突然私の腕を力く掴んできたのだ。
私は驚きのあまり息を呑み、反射に女性の顔を見つめた。
女性の目は異常なほど見かれ、切羽詰まったような真剣なを宿している。
彼女の青ざめた唇が微かに震え、そこから信じられない言葉が紡ぎされた。
「あのには絶対にかないで」
その切実な響きは、内の喧騒を切り裂いて私のの奥に鋭く突き刺さった。
私は腕にい込む女性の指先のさをじながら、どうしてこんなことになったのかと、これまでの平穏な々をので振り返り始めた。
計の針をしだけに戻せば、私たちの活は幸福そのものだったのだ。
昨のことである。
息子の亮太が結婚し、私たち夫婦はしい族を迎えることになった。
私たちは互いのを頻繁にき来しながら、とても円満な関係を続けてきたのである。
息子の嫁となった鈴は、おとなしい性格の女性だった。
それでいてが良く、常に絶やさないその笑顔は見る者のをませてくれた。
彼女は私たち夫婦にも細やかに気を遣ってくれており、その気配りに幾度となく救われてきたのだ。
私たち夫婦は、本当にいいお嫁さんが来てくれたと、を取りってんでいた。
広告
そしてあるのことである。
私たちは息子夫婦から、突然夕に誘われたのだ。
鈴が宝くじに当選したのだという。
そのお祝いで、特寿司を注文するから緒にべようという誘いだった。
いがけない幸運のらせに、私たちもすっかり嬉しくなった。
特寿司のを楽しみにしながら、私は夫のと共にをた。
駅まで歩き、私たちは並んでに乗り込んだ。
内はそれほど混雑しておらず、私たちは横並びで座席に腰をろした。
やがて、目の最寄り駅を告げるアナウンスが内に響いた。
がホームに滑り込み、ゆっくりと止する。
私はちがろうとして、腰を浮かせた。
その直だった。
隣の席に座っていた女性が、突然を伸ばしてきたのである。
彼女は私の腕をしっかりと掴み、引に引き留めた。
女性は真剣な差しで私を見据え、怪しい者ではないと名乗った。
彼女は本と名乗る女性だった。
本は周囲を警戒するように線を配り、声を潜めた。
「理由はちゃんと説しますから、とにかく次の駅でりてください」
突然の異常な求に、私とは顔を見わせた。
私たちは完全に困惑してしまい、言葉を失っていた。
最初は、何かの悪戯かともったのだ。
しかし、私を見つめる本の目は真剣そのものだった。
広告
彼女の表や緊迫した声のトーンからは、私たちをからかっているような雰囲気は微もじられない。
はさく息を吐き、私の方を向いた。
「とにかく理由を聞いてみよう」
にそう言われ、私はちがるのをやめた。
私は腕を引かれるまま、再びゆっくりと座席に座り直した。
本はしだけ堵したような表を見せ、私たちに向き直った。
「驚かせてすみません。実は私、こういう者です」
本はそう言いながら、着のポケットにゆっくりとを入れた。
彼女がポケットから取りしたのは、黒い革張りの帳だった。
本は私たちに向けて、その警察帳を静かに提示したのだ。
そこには、「捜査第課 本結」とはっきりとかれていた。
私は信じられないいで、その帳と本の顔を交互に見つめた。
「警察の方が、どうして?」
私は目のの警察帳を見つめながら、臓の鼓がくなっていくのをじていた。
実は、私は薗チコ、60歳だ。
パートの仕事をしながら、夫のとで静かに暮らしている。
私たちが結婚したのは、もう35ものことだった。
結婚から数、待望の息子である亮太がまれた。
それからというもの、私たちは族でささやかながらも幸せに暮らしてきたのだ。
亮太は幼い頃からのかからない子だった。
誰に対しても優しく、親いの本当に良い子に育ってくれた。
そんな亮太も無事に学を卒業し、般企業に就職した。