"地上二メートルから見上げる逆転の空" 第23話
な理のテーブルを挟んで、浦組側には卓郎、薫、そして弁護士が座った。
対する先方には、法務部の顧問弁護士、篠原の司である務部、そして事課の篠原が、仏頂面で腰掛けていた。
薫は何も言わず、テーブルの央に冊の館報を静かに並べた。
の、、。
表に印刷された、鮮なの公印と発。
務部がを乗りし、老鏡をかけ直してい入るように面を見つめた。
法務部の担当者が青ざめた顔で、元の特許願図面と古い黒写真を交互に見比べる。
沈黙を破ったのは、篠原だった。
「……これで、体何を証したおつもりですか?」
その声には、あの説会のと同じ、尊な落ち着きが張り付いていた。
「学の休みの作でしょう。材を斜めに組めば倒れにくくなるなど、子供でもいつく単なるいつきのレベルです。望さん、が社の法は、度の荷計算も、特殊具のリンク設計も、すべて私がゼロから設計し直したものです。子供の着と、現代の度な建築構造計算が同であるなどという言いがかりは、到底通用しませんよ」
法務部の担当者がさく頷き、部も線を館報から図面へと戻した。
応接の空気が、再び篠原の側へと傾きかけた。
篠原は子の背にもたれかかり、嘲笑を浮かべて薫を正面から見据えた。
広告
「それに……百歩譲ってその案を発展させたものだとしても、君がが社の設計部に籍していた当の見を用いている以、これは『職務発』としてが社に権利が帰属する。そう法に主張することも能ですがね?」
卓郎の膝ので、拳がギリギリと音をてた。
盗猛々しいとは、まさにこの男のためにある言葉だった。
だが――薫の表は、ピクリともかなかった。
を荒らげることもなく、膝ので冊の方ノートをき、そこにき留めてきたの数式を指先でなぞっただけだった。
「……では、つだけ伺います」
薫は線をげ、務部の目を真っ直ぐに見据えた。
「現、作業所でわれている協力会社向けの施研修で……試作のフレームは、から最まで綺麗に起きがりましたか?」
応接のすべての物音が、瞬で消えった。
法務部の担当者がハッとして部の横顔を見た。
務部は苦虫を噛み潰したような顔で沈黙し、やがて、絞りすように正直に答えた。
「……途で、止まる。角度が度を超えたあたりで具が噛み込み、無理に引き起こそうとするとヒンジが破損する。現、設計部で原因を究だ」
「継ぎの位置が、センチだからです」
薫はそこで初めて、元夫である篠原の顔を正面から見据えた。
「センチに直せば、最までスムーズに起きがります」
広告
「なぜ、なんだ!?」
務部がテーブルからを乗りした。
「具の折り返し寸法が片側センチあり、引き起こす角度が度を超えたところで、ヒンジのクリアランスが内側へ入り込む構造になっています。センチのクリアランスでは、部材同士が干渉してロックしてしまうんです」
薫はテーブルのに差し指を滑らせ、力学のベクトル軌を淀みなく描いてみせた。
「……篠原さん。今の具の干渉計算を、あなたはこので、図面のに数式で展できますか?」
篠原は答えなかった。
が半きになり、喉の奥が痙攣したようにするだけで、何の音もてこない。
「センチというのは……私が自宅できをしていた、計算を違えてノートにき落とした誤った数字です。私はそので線を引いて消し、横に正しい『』という数字をき直しました」
薫は静かにノートを閉じた。
「……線で消してあった方の数字が、あなたの特許願図面に、そっくりそのまま載っています」
法務部の担当者が急ぎで図面をめくり、問題の寸法線を指差した瞬、務部はを抱え、々と子の背もたれへと沈み込んだ。
「あなたが盗んだのは……私の技術ではありません」
薫の声は、鳴ることもなく、静かに、そして徹に応接に響き渡った。
「私の、き違いです。……の脳を盗むは、そのが犯した違いのゴミまで、そっくりそのまま背負い込んでいくものなんですよ」