"父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導" 第5話
の巨なゲートので、私はたいに吹かれながらち尽くしていた。
周囲には民も商もなく、ただ々のざわめきだけが聞こえる。
私は元のメモと、目のにそびえる塞のような建物を交互に見比べた。
メモにかれた所は、文字も違っていない。
私は恐る恐るゲートの脇にづき、分いの壁を見げた。
そこには、な属の銘板がしっかりと埋め込まれていた。
銘板には、『暁グループ総本部』という文字がく刻まれている。
暁グループ。
専業主婦として世から切りされていた私でも、その名はっていた。
本のインフラから最先端の通信技術まで、幅広い事業を裏で支えている巨企業だ。
志が務めている堅の会社も、このグループに関連する業界だったはずだ。
なぜ、父の内縁の妻がこんな所にいるというのだろう。
父の記憶が混濁して、たまたまテレビで見た企業の所をいてしまったのだろうか。
あるいは、ここで清掃員か何かとして働いているを探せということなのだろうか。
疑問は次々と湧いてくるが、ち止まっていても事態は変わらない。
私には戻る所がなく、元の現も底を尽きかけている。
私はを決して、ゲートの横にある警備員の詰所へとを踏みした。
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ガラス張りのブースのには、厳しい顔つきをした3の警備員がっていた。
私がづくと、番若い警備員が窓越しに鋭い線を向けてきた。
彼は窓をしけ、威圧な声で問い詰めた。
「何かご用ですか?ここは関係者以のち入りを固く禁じています」
そのたい声に、私はわず肩をビクッとすくませた。
「あの、突然申し訳ありません。この所のを訪ねてきたのですが」
私は震える声でそう言い、ガラス越しに父のメモを見せた。
警備員は面倒臭そうにメモを瞥したが、すぐに眉をひそめた。
「所はここですが、個名がありませんね。どなたとお約束ですか?」
私はブリキ箱を抱きしめ直し、必に答えた。
「約束はしていません。父から、ここの内縁の妻にこの箱を届けるようにと頼まれて……」
私は腕に抱えた錆びたブリキ箱を、しだけにした。
警備員の顔に、らかな審の表が浮かんだ。
汚れた喪の女が、ゴミのような箱を抱えて巨企業の総本部へやってきたのだ。
追い返されるのは、当然の反応だった。
警備員はたく言い放った。
「お引き取りください。ここは般の方の探し物をお伝いする所ではありません」
私はガラスにすがりつくようにして、必にいがった。
「お願いです!父のシゲオが、どうしても届けてくれと最に残したんです!」
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私が叫んだ瞬、奥にいた配の警備員がすっとにてきた。
彼は私の顔とブリキ箱をじっと見つめ、そして父のメモに目を落とした。
その瞬、彼の目のが変わったのがはっきりと分かった。
彼は若い警備員を制止し、私に向かって真剣な声で尋ねた。
「そのメモの文字は、お父様が直接かれたものですか?」
私は何度もく頷いた。
「はい。くなる直に、病で父がいてくれました」
配の警備員は無言のまま、自分の胸元にあるマイクをで覆った。
彼はし背を向け、緊迫した声で本部へ連絡を始めた。
「第1ゲートより、至急本部の層部へ確認を。シゲオ様のお名と、跡の照会です」
彼のい声が、マイク越しに誰かへ伝えられる。
『シゲオ様』という敬称が聞こえ、私はを疑った。
町で油にまみれていた父が、こんな巨企業で様付けで呼ばれるはずがない。
配の警備員は通信を終えると、私に向き直った。
「しばらく、そのままでお待ちください」
彼はそう言うと、私に対して先ほどまでの威圧な態度を完全に引っ込めた。
私はたいのでブリキ箱を抱えながら、ただ待つことしかできなかった。
数分が経過しただろうか。
ブースのの話が鳴り、配の警備員が受話器を取った。
彼はい返事を何度か繰り返し、く頷いて話を切った。
そして、の2の警備員に向かって緊張した声で指示をした。
「ゲートをけろ。総本部からのお迎えが来る」