"父の形見をゴミと笑った夫と五十億円の引導" 第19話
「し、っているも何も、こいつは俺の元妻です!」
志はパニックに陥り、状況を理解できないまま叫び返した。
「ただの卒の専業主婦で、俺がわせてやっていた底辺の寄虫ですよ!」
その言葉を聞いた瞬、郎社の膝から完全に力が抜け、彼はソファーの横に崩れ落ちた。
志が『底辺の寄虫』と罵り、から追いしたと言っていた女。
それが、自社の命運を握る巨グループの絶対な支配者だったのだ。
郎社はにいつくばったまま、絶望に満ちた目で志を見げた。
「貴様……なんてことをしてくれたんだ……」
郎社は声を震わせた。
「社の令嬢と結婚すると豪語していた裏で、グループのトップをゴミのように捨てたというのか……!」
郎社はを抱えた。
「が社は終わりだ……おのせいで全てが終わったんだ!」
郎社の痛な叫び声が、特別応接の壁に虚しく響いた。
それでも志は、目のの現実を受け入れることができずにいた。
私は騒ぎてる彼らに瞥もくれず、静かに歩みをめた。
役員たちがうやうやしくをけ、私にくをげる。
私は応接の最奥にある、段い所に置かれた革張りの子へと向かった。
これが、父が私に残してくれた何者にも脅かされない絶対な全帯だ。
私は切のを交えないたい作で、その最座に腰をろした。
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背もたれに体を預け、脇に抱えていた黒いファイルをテーブルのに静かに置く。
部のは、志の荒い呼吸音だけが気に響いていた。
「『底辺の血筋』と、言いましたね」
私は極温の瞳で、部の央でち尽くす志を真っ直ぐに見ろした。
志は私の酷な線に射抜かれ、肩をビクッと震わせた。
昨まで彼が持っていた、私を見す傲な態度は微も残っていない。
彼が誇っていたエリートとしての見栄も、次期社という肩きも。
今の私のでは、ただの切れ以の価値しかなかった。
私はテーブルのの黒いファイルにを置き、ゆっくりとその表をいた。
「あなたが本当に優秀なエリートであるなら、ビジネスのルールは理解していますね?」
私の静かな問いかけに、志は怯えた物のようにずさりした。
「う、嘘だ……。何かの違いだ……」
志は首を振った。
「おみたいな取り柄のない女が、こんな巨企業のトップになれるわけがない!」
彼は現実を受け入れることができず、ただ虚勢を張って喚き散らすことしかできなかった。
しかし、どれだけ彼が否定しようとも、彼と私の力関係はすでに完全に逆転している。
私が黙って耐えていた屈辱の々は、この瞬のためにあったのだ。
私はファイルのから、田部が用した数枚の証拠類を取りした。
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そして、震える志の目のにあるテーブルへ、それを滑らせるように放り投げた。
「あなたの会社の監査データを見ました」
私のたい声が、彼の喚き声を切り裂くように響いた。
「経費の横領、請けへの当な圧力……随分と腐り切っているようですね」
その言葉を聞いた瞬、志の顔から最の気が完全に抜け落ちた。
テーブルに散らばった類には、彼が設した架空のコンサルタント会社の名がはっきりと印字されている。
さらに、彼個の秘密座の送記録と、請け業者を脅迫した際の音声のき起こしまでが添えられていた。
彼が必に隠してきた最の秘密であり、最も恐れていた事実。
自分の実力が実はっぺらい偽物であり、横領によって作られた砂の楼閣に過ぎないという真実。
それが今、彼が最も見していたのによって、逃げのない形で暴かれたのだ。
志は類を凝したまま、をパクパクとかした。
「ご、誤解だ……。ま、待ってくれ希……」
彼は突然媚びるような作り笑いを浮かべ、私に向かってすがりつこうとした。
「俺たち、夫婦だったじゃないか。ちょっとしたすれ違いがあっただけだ」
彼は両を揉みわせ、醜く弁解した。
「おがそんなにすごいなら、俺がこのグループを緒にきくしてやるから……」
そのあまりにも見苦しい命乞いに、私は静かなため息をついた。