"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第18話
私はひどく静な声で答えた。
「支払いの問題もありますし、親戚への言い訳も考えなければならない。それに彼のことですから、私が自分のでち向かってくるとはにもっていないでしょう」
孝之は今でも、私が「婚」という言葉に怯えてを縮めていると信じているはずだ。
だからこそ、今が番の好だった。
私は孝之がに戻ってくるに、久美子の実の権利や私名義の切な類、そして当面の活に必なものを全て確保しなければならない。
あの男に私たちの財産をこれ以1円とも触らせるわけにはいかないのだ。
「お義母さんも、今はホテルには戻らずご実で休んでください。孝之さんからの連絡は全て無して構いませんから」
私がそう伝えると、良枝はく頷き、力く私のを握りしめた。
「分かったわ。何かあったらすぐに警察か私のところに連絡しなさい。私はもう絶対に、あの子の方はしないから」
その言葉に私はさくお辞儀をして、病院のへと向かった。
にると、たい朝の空気が肺の奥まで入り込んできた。
昨までの夫の顔を伺い、波をてないようにきてきた私は、もうどこにもいない。
タクシーに乗り込み、自宅までのをる、私ののはひどく澄み切っていた。
に着くと、駐に孝之のはなかった。
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やはり彼はまだ、あのホテルで止めをらっているのだろう。
私は鍵をけ、静まり返った暗いのに入った。
リビングは昨の朝にかけたのまま、何も変わっていない。
私は迷うことなく、孝之がいつも仕事をしている斎へと向かった。
机の引きしをけ、共のファイルから必な類を次々と抜きしていく。
久美子の実の権利は、奥の庫に保管されていた。
私は暗証番号を打ち込み、それらを全て自分のバッグに詰め込んだ。
これで彼が久美子のを勝に売却するような最悪の事態は防げる。
必なものを全て集め終え、机のを片付けようとしたのことだ。
机の隅に、1枚のが乱雑に丸められて捨てられているのが目に入った。
それは孝之が勤めている会社のロゴが入った、正式な類だった。
私は何気なくそのを拾いげ、シワを伸ばした。
そこにかれていた文字を見た瞬、私は自分の目が瞬信じられなくなった。
そこには、私が全くらなかった孝之のもう1つの巨な嘘が、はっきりと印字されていたのだ。
私がシワを伸ばしたそのは、孝之の会社から発された正式な文だった。
太い朝体で「格事及び減通」と印字されている。
付は、今からちょうど3ヶになっていた。
そこには孝之が、業績振と部へのパワハラを理由に管理職からされたことが、はっきりと記されていた。
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それに伴い、与も幅に減額されている。
私はその無質な文字の羅列を、ただ静かに見つめた。
祝宴の席で親戚たちに向けて得げに語っていた「成功した男」という姿。
雑誌の記者に語ろうとしていた「派な経営者」という虚像。
あれは全て、完全に作りげられただったのだ。
彼は自分の位が失われたという現実を受け入れられず、嘘に嘘をねていた。
元にない3000万円を気よく使うことで、無理やり自分の自尊を保とうとしていたのだろう。
だからこそ、久美子の術という避けられない現実を持ち込んだ私をあそこまで憎んだのだ。
自分の完璧な嘘の台に、現実の汚れを持ち込まれることが許せなかったからだ。
私はその通を丁寧に折り畳み、久美子のの権利と緒にバッグの奥へしまった。
その、私のスマートフォンがく震えた。
画面には、親族ので番発言力のある、孝之の叔父の名が表示されていた。
話にると、叔父の苛った声がにび込んできた。
「直子さん、今すぐ良枝さんの本に来なさい」
叔父は無を言わせぬい調だった。
「孝之がホテルの支払いができなくて困っている。妻であるあなたが、勝に座のを隠したそうじゃないか。親族会議をくから、逃げずに来なさい」