"「手術は後でいい」三千万円の古希祝いに狂った夫の末路" 第21話
これまで孝之は、「男としての責任」という言葉を都よく盾にしてきた。
叔父たち親族もその言葉に騙され、彼を派な跡取りだと持ちげていたのだ。
しかし今、その分い盾は端微に砕け散った。
彼が守りたかったのはでも母親でもなく、肥化した自分自の虚栄だけだったのだ。
その正体がのに晒された今、彼をかばう理由はどこにもなかった。
「もう度と私ので男などと名乗るな」
叔父はにいつくばる孝之に向かって、吐き捨てるように言った。
「おが作った借だ。親族は1円とも助けしない。自分の見栄でかいた恥は自分で始末をつけろ。親戚の集まりにも度と顔をすな」
その宣告は、孝之にとって社会な刑宣告に等しいものだった。
会社での位を失い、からの融資も断られ、彼が最も執着していた親族からの賞賛すらも完全に断たれたのだ。
彼の方はもう、この世界のどこにもいない。
孝之の線が部のを彷徨い、そして最に、扉のくにつ私へと向けられた。
その目は恐怖と絶望できく見かれていた。
彼は膝をついたままうようにして私の方へづき、私の元にすがりつこうとした。
「直子……おからも言ってくれ。俺は今までおを養ってきたじゃないか。族のために歯をいしばって頑張ってきたじゃないか」
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彼はまだ、そんな嘘をにしていた。
私はづいてくる彼のから、静かに歩だけろへがった。
私ののには、りもしみももはや微もしていない。
ただ、ひどくたく透き通っただけがあった。
「族のために、おを使ったことなど1度でもありましたか?」
私の声は自分でも驚くほど静かに、部のに響き渡った。
「あなたが今まで養ってきたのは、私ではありません。久美子でも、良枝さんでもありません。あなたが必に餌を与えて育ててきたのは、あなた自の見栄という名の怪物です」
孝之は私のたい線に射すくめられ、言葉を失った。
言い返そうといたからは、かすれた息の音しか漏れてこない。
私は彼に鳴ることも泣き叫ぶこともしなかった。
目ので崩れ落ちていく男を見つめながら、私のにあるのはただ、絶対な終わりの覚だけだった。
私は元のバッグをしっかりと持ち直した。
には久美子のの権利と、私のしいを始めるための切な資が守られている。
「私は私の母を守ります。あなたとの結婚活は昨、あのホテルで完全に終わりました。弁護士を通して婚の続きをめさせていただきます」
その宣言は、居にいる全員のに届いた。
叔父もの親族も、私の言葉を止めることはしなかった。
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彼らもまた、私がこのからることが最も正しい選択だと理解していたからだ。
「待ってくれ、直子。婚なんて俺は絶対に認めないぞ!」
孝之がけない声で叫んだ。
「おがいなくなったら俺はどうなるんだ。あの座のがないと俺は本当に自己破産してしまうんだぞ」
彼はついにでも世体でもなく、ただおの執着だけで私を引き止めようとしていた。
妻を蔓としか見ていないその浅ましい本音を隠そうともしない姿は、りを通り越して滑稽なほどれだった。
私が背を向け、玄関へ向かおうとしただ。
ずっと黙って私と孝之のやり取りを見ていた良枝が、再びをいた。
「孝之」
良枝の声はかすれてはいたが、確かな力さを持っていた。
孝之は、良枝が最に助けをしてくれたのだと勘違いし、すがるような目で振り返った。
「母さん、頼む。母さんからも直子を説得してくれ。俺がこんなことになったのは元はと言えば……」
孝之はそこで言葉を切り、信じられないような憎悪の表で良枝を睨みつけた。
彼のからびしたのは、の最も醜い責任転嫁だった。
「元はと言えば、母さんが見栄っ張りだからじゃないか!」
孝之の叫び声が部の空気を切り裂いた。
「母さんがいつも親戚ので良い格好をしたがるから、俺は男として無理をしてまで母さんをばせようとしたんだ。