"4500万の城を奪われた夜" 第4話
でしかなく、のとしての志もも、端から計算に入っていなかった。
ここで警察を呼ぶことは能かもしれない。だが「親族の揉め事」と処理されれば、民事介入を理由に朝まで押し問答が続くだけだ。の朝には、プロジェクトの最終テストが控えている。今夜、この悪臭と煙ので消耗戦を演じるのは、葵にとってあまりにも損失がきすぎた。
葵は何も言わず、自分のキャリーケースのハンドルを握った。 そして踵を返し、玄関へ向かった。
「あら、どこくの?」 背から悦子の声がんだ。 「ちょっと葵ちゃん、買い物くならの朝のパンと牛乳買ってきてよ! 栞のむ脂肪乳ね!」
葵は答えず、ドアをけた。 ガチャン、とい鉄の扉が閉まる。 再び無質なロック音が響き、廊の気が葵のを持った頬を撫でた。
エレベーターをり、エントランスを抜ける。夜の宅は静まり返っていた。 葵は駅のビジネスホテルに向かって、アスファルトのにキャリーケースの輪を転がした。ガラガラというい音が、夜の空気に虚しく反響する。
フロントで泊万千円のシングルルームを取り、カードキーを受け取って部に入った。 ベッドに腰をろした瞬、どっと疲労が押し寄せてきた。 だが、涙はなかった。
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泣いて何かが解決する段階は、あのリビングで敏男の声を聞いた瞬に終わっていた。
葵はコートを脱ぎ、ホテルのデスクに向かった。 ノートパソコンをき、クラウドストレージにログインする。 画面に呼びしたのは、マンション購入に保しておいた契約類式と、管理組の管理規約のPDFデータだった。
「週の居座り」で済むはずがない。 あの廊に積まれた荷物の量は、らかに期の活拠点、あるいは夜逃げ同然の移をしていた。 そして、あの連がどれほど図々しくとも、何の勝算もなくの分譲マンションに総で乗り込んでくるだろうか。
何かがある。 父のあの異常なまでの肩入れも含めて、自分がらない「決定な事実」が隠されているはずだった。
葵はスマホをに取り、画面の連絡先を見つめた。 計は午半を回っている。 葵は呼吸をつし、調布駅くで政士事務所をいている学代の先輩――法学部で、産の権利関係に詳しい女性、瀬川麻里にメッセージを送った。
『夜分に本当にごめんなさい。内の産法占拠と、民票・名義に関するトラブルで、至急相談したいことがあります。、朝番でを取ってもらえないでしょうか』
数分、画面が震えた。 『葵、どうしたの? の朝半、事務所けるからおいで。
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類関係全部持ってきて』
画面のを見つめながら、葵は拳をく握りしめた。 自分のを、自分のを、の勝な都で踏みにじらせるわけにはいかない。 たとえ相が血の繋がった親族であろうと、実の父親であろうと。
葵のい戦いの夜が、静かに幕をけていた。
文说正文(第2部 / 共4部)
翌朝、午分。 調布駅から徒歩分、甲州沿いの古い雑居ビルの階にある「瀬川法務政士事務所」の呼び鈴を鳴らすと、すぐにドアがいた。
「葵、顔悪いわね。とりあえず入って」
迎えてくれた瀬川麻里は、学の法学部で学の先輩だった。卒業は産ディベロッパーの法務部を経て独し、現は域密着の権利関係や遺産分割、産トラブルを専に扱っている。
事務所の応接スペースには、すでにお茶が用されていた。 葵は持参したノートパソコンをき、マンションの売買契約、登記簿謄本(全部事項証)、そして昨晩撮した内の写真を麻里に見せた。
写真に写る、の踏みもない廊のダンボール、吸い殻の散らばったリビング、勝に使われているベッドルームを目見るなり、麻里の表が引き締まった。
「……これは酷いわね。『親戚の子供が受験のために週泊まる』レベルじゃない。
完全に活拠点を移させてるわ」
「昨夜、父に抗議したんです。でも、『内の助けいだ』の点張りで、私がしろと鳴られました。