"年商一兆円の父にワインをかけた婚約者" 第9話
「そ、そうだ……そうだよな! 今すぐ代議士の事務所に――」
圭吾が震えるでスマートフォンを操作しようとした、デスクの内線が再び鳴った。
「専務、留便が届いております。……扶桑グループ総裁秘からの親です」
「扶桑グループ……!?」
圭吾と貴恵は顔を見わせた。 扶桑グループといえば、本のみならず世界経済に絶な響力を持つ、文字通りの怪物コングロマリットだ。百貨業界など元にも及ばない。そんなののから、なぜ今、親が届くのか。
秘が持ってきた黒塗りの豪奢な封筒を、圭吾は奪い取るようにして封した。 からてきたのは、最級のに箔で鳳凰の紋様が刷り込まれた、枚の招待状だった。
『扶桑グループ創業記 並びに慈善事業財団設 VIPチャリティレセプションのご案内』 は。会は都内屈指の格式を誇るインペリアルホテルの宴会。 そして文末には、流麗な文字でこう添えられていた。
『貴社のこれまでの社会貢献に敬を表し、特別来賓としてご招待申しげます。当夜、貴社の未来に関わる極めてなお話をさせていただきたくじます。神埼圭吾専務取締役、並びに神埼貴恵様のご臨席を、よりお待ち申しげております』
「これよ……!」
貴恵の瞳に、狂乱じみた希望のが宿った。
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「これよ圭吾! 扶桑グループよ! 彼らが私たちを救おうとしてくれているんだわ!」
「え……? でも、僕たちは扶桑グループとは取引なんて……」
「馬鹿ね! うちの百貨のやブランド価値に目をつけたに決まってるじゃない! 傘に収めるか、巨額の資をして再建スポンサーになってくれる気なのよ! そうでなきゃ、こんな国税が入ったタイミングで、わざわざ『未来に関わるな話』なんて名指しで招待してくるわけがないわ!」
貴恵は招待状を胸に抱きしめ、歓の声をげた。
「も国税も、扶桑グループが言利きをしてくれれば全部吹きぶわ! 助かったのよ、私たちは選ばれたのよ!」
圭吾もまた、その都の良い解釈に縋り付いた。 獄の底に垂らされた本の蜘蛛の糸。 それが、自分たちの首を絞めるために用された、鋼鉄の絞首縄であることなど、にもわずに。
*
の夜。 インペリアルホテルの宴会「孔雀の」は、目も眩むような気に包まれていた。
井から吊りげられた数基のクリスタルシャンデリアが眩いを放ち、最峰のオーケストラが優雅なクラシックを奏でている。 会を埋め尽くすのは、本を代表する政財界の鎮、各国の使、メガバンクの取たち、そして名だたる企業のトップたち。まさに選ばれた握りのだけが集う、富と権力の頂点だった。
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その華美な群衆のに、神埼貴恵、圭吾、そして姉の織の姿があった。
貴恵はこののために、数千万円のダイヤのネックレスと、鮮やかなのイブニングドレスをに纏っていた。 しかし、入りに塗られたファンデーションのの肌は気で、連の資繰りと国税の取り調べによる疲労を隠しきれていない。 圭吾もまた、仕ての良いタキシードを着ているものの、額には始終油汗が浮き、周囲の線を気に病むようにキョロキョロと首をかしていた。
「母さん、本当に丈夫なのかな……。さっきからの取たちに声をかけても、みんな骨に目を逸らしてれていくよ」
「気配なことを言うんじゃないの! あんなハイエナども、扶桑グループの総裁に挨拶を取り付けた瞬にのひらを返すに決まってるわ! 堂々としていなさい!」
貴恵はシャンパングラスを気に呷り、神経質に唇を噛んだ。
「ねえ、お母様、圭吾……やっぱり何かの罠なんじゃないの?」 ろに控えていた織が、怯えた声で囁いた。
「あのホテルの事件のあと、あまりにもトントン拍子におかしなことが起きすぎてるわ。あの綾さんのお父様だって……」
「うるさい! あんたは黙ってなさい!」 貴恵は娘をした。
「あの貧乏神の爺さんが何の関係があるっていうのよ! あんなボロに乗った企業のクズが、都や国税をかせるわけないでしょうが! あんたは黙ってシャンパンでもんでなさい!」