"年商一兆円の父にワインをかけた婚約者" 第11話
……そして、何よりも許しがたいのは』
スクリーンが再び切り替わった。
そこに映しされた映像を見た瞬、貴恵のから完全に力が抜け、そのにへたり込んだ。
ホテルのロビーの防犯カメラ映像だった。 貴恵が自ら派に転び、痛がる演技をして「暴力を振るわれた!」と叫ぶ姿。 圭吾が笑を浮かべながら、スマートフォンで父親を晒し者にしようと煽る姿。 音声こそないものの、その醜悪な自作自演の全貌が、Kの精細な映像で会の巨スクリーンに余すところなく映しされていた。
『自らの虚栄と保のために、罪なきを罠に嵌め、公衆の面で晒し者にしようとした、劣極まりない狂言の記録です』
会に、激しい嫌悪と軽蔑のどよめきが広がった。 「なんて連だ……」「あんな自作自演を」「これが老舗百貨のトップかよ」「恥をれ」
針の莚どころではない。 数百の政財界のトップたちからの、剥きしの軽蔑とりの線が、スポットライトのように親子へと注がれる。
『……そこにいらっしゃる、神埼貴恵様。そして、神埼圭吾様』
宗郎がマイク越しに、氷のようにたい声で呼びかけた。
ピンスポットライトが無慈にき、にへたり込む貴恵と、ち尽くす圭吾を正確に照らしした。
『どうぞ、壇へおがりください。この資料について、皆様ので何か申しきがおありでしょうか』
「ひっ……!」
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貴恵の喉から、引き裂かれたカエルのような鳴が漏れた。
逃げなど、どこにもなかった。 扉のには屈な警備員がち塞がり、周囲の席者たちは壁のようにを取り囲んでいる。
「さあ、どうぞ」 宗郎が壇から招きをした。 その優雅な所作は、絶対に逆らうことのできない、王の処刑宣告だった。
警備員に両脇を抱えられるようにして、はふらふらとステージへの階段をがらされた。 段がるごとに、のすべてが崩れ落ちていく覚。
マイクのにたされた圭吾は、脂汗で顔をドロドロに濡らし、ただパクパクと魚のようにをかすことしかできない。 貴恵はに爪をて、ドレスを汚しながら震えていた。
『説が難しいようでしたら、私から申しげましょう』 宗郎はを瞥すら叫ず、会に向かって告げた。
『本正午をもちまして、扶桑グループ傘のすべての融関、並びに提携投資ファンドは、クレスト百貨に対する切の債権回収続きを始いたしました。また、先ほどお見せしたすべての脱税、横領、請法違反の証拠資料は、すでに京検特捜部、並びに公正取引委員会へ提済みでございます』
「そ、そんな……っ!」 貴恵がいつくばりながら、宗郎の革靴に縋り付こうとした。
「許してください……! 私が悪かったわ! 調子に乗っていたの! 座でも何でもします! 圭吾を……会社だけは助けてください!」
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数千万円のドレスも、粒のエメラルドも、いまやに塗れた化の装でしかなかった。 宗郎は、その伸ばされたを汚いものを避けるように歩引き、たく見ろした。
『謝罪とは、受ける側に許すがあって初めて成するものです。……残ながら、私にはあなた方を許す慈など微も持ちわせておりません。あなた方が踏みにじってきた社員や取引先の涙の方が、はるかにいのですから』
宗郎は線を圭吾へと移した。
『神埼圭吾君。君はあの、私の娘に言いましたね。「もっとマシな格好をしていれば、こんなことにはならなかった」と』
圭吾はヒッ、と息を呑んだ。
『今、君は最級のタキシードを着ている。……だが、そのはどうだ? 嘘と見栄と正で塗り固められた、ただの空っぽの張り子の虎ではないか』
圭吾の目から涙とが溢れた。 何も言い返せなかった。反論の言葉など、この世のどこにもしなかった。
『神埼貴恵さん。あなたは私に言いました。「の程をれ」と』
宗郎のく澄んだ声が、会の静寂を切り裂いた。
『――その言葉、そっくりそのまま、あなた方にお返しいたします』
宗郎は背を向け、度も振り返ることなく壇をりていった。
残されたのは、スポットライトので泣き叫び、に額を擦り付ける貴恵と、腰を抜かして失禁した圭吾の姿だけだった。