"妻を崖から突き落とした義家族と300億円の婿" 第14話
これから再される音声がどんなものか、私には容易に像がついていた。
もしそこに母親が殺されかける々しい声が入っていれば、5歳の娘に聞かせるわけにはいかない。
私は片方のイヤホンだけを自分のに装着した。
ボイスレコーダーとBluetoothで接続した。
「パパだけ先に、おを読んでもいいかな?あんなはし待っていてね」
「うん、分かった」
あんながしく頷くのを確認した。
私は再ボタンを静かに押し込んだ。
の奥で微かな子音のに、ザーッとたいの音が再され始めた。
ザクザクと枯葉が踏まれる音。
そして息を切らしながら歩くゆいの音が、静寂のに響いてきた。
『お父さん、こんな夜更けに裏の旧で、体何の話なの?』
を押し殺すようなゆいの声が聞こえた瞬、私の胸が締め付けられるように痛んだ。
それに答えるように、聞き慣れた義父の太く傲な声がたく響き渡った。
『おもっての通り、が社の経営は今な局面を迎えている』
義父の言葉には、娘に対するなど微も含まれていなかった。
『次期社はたけしだ。だがおが持っている会社の株と相続の権利が、どうしても目障りでな』
『株って……私はそんなもの欲しくないわ。誠がいればそれで……』
『黙れ!』
ゆいの言葉を遮るように、義兄のたけしの鳴り声が録音に割り込んできた。
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『おみたいな女が、気にもうちの財産を分け取りしようなどと考えるからいけないんだ!』
『お兄ちゃん、何を言っているの?お願いだからやめて!』
ゆいがずさりするような音と、枯れ枝が折れる乾いた音が連続して聞こえる。
『ふん。全てを誠のせいにすれば、おはただ男を作って逃げた馬鹿な女になる。これで族の世体も保たれるというものだ』
義父の恐ろしいほど静な計画の告。
彼らは最初から、ゆいの命を奪うことと、私に汚名を着せることをセットで企てていたのだ。
『きゃあ!来ないで!お父さん、お兄ちゃん!』
ゆいの痛な叫び声が、イヤホンを通して私の鼓膜を激しく揺さぶった。
『消えろ!』
義兄のい声。
直、ドスッという鈍い衝撃音と共に、ゆいの体が崖のへと突き落とされる凄惨な音が響いた。
『きゃあああ!』
の音を引き裂くようなゆいの鳴がざかる。
やがて、ドスンというい音と共に途切れた。
数秒の沈黙の、崖のから見ろしている義兄の歪んだ笑い声が録音されていた。
『わはは!これで会社の株は全て々のものだ。せいぜい獄で悔するんだな!』
『くぞ。あいつのに、あの偽のを置きにかねばならん』
音がざかる。
再びたいの音だけが残された、録音はプツリと途切れた。
私はイヤホンをからした。
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静かに膝のに置いた。
内のエアコンは効いているはずなのに、私の体は異常なほどのを帯びていた。
りでが震えるようなことはなかった。
代わりに、私ののにあった全てのが、氷のようにたく、そして鋭く凝縮されていくのをじた。
これが、彼らが守ろうとした族の利益と世体の正体だ。
自分の欲望のために実の娘を崖から突き落とし、その罪を私に擦り付けようとした悪魔の所業。
そして彼らは、あんなの親権すらも、自分たちの血筋を絶やさないための具として奪おうとしているのだ。
私はボイスレコーダーをケーブルからした。
内ポケットの奥くに切にしまった。
さらに、万がの事態に備えて、スマートフォンの操作で音声データをクラウドの全な領域へと転送しておく。
これで、どれほど彼らが暴れようとも、この証拠を消しることは能になった。
ゆいが自らのと引き換えに守り抜いた真実が、ついに私のので完全な刃となったのだ。
「パパ、お読めた?」
あんなの声に、私はゆっくりと顔をげた。
助席の娘を見つめた。
「ああ、ママからの切なお、ちゃんと受け取ったよ」
私は自分の声が驚くほど静かで落ち着いていることに気づいていた。
吉実への抹のも、波をてたくないというサラリーマンとしての諦めも。
すでに私のには欠片も残っていない。