"19年間の嘘を暴いた1枚のDNA鑑定書" 第18話
「お母様は……」
玲奈が、苦しい空気を変えようとするかのように話題を転換した。
「ああ、母さんならマダム・ローズと緒にヨーロッパへ旅にかけたよ。しをやしてくるとさ」
そしてこうも言っていた。 『あのたちのことはもう忘れなさい。彼らはもうきながらにして獄をわっているのだから』と。
玲奈のその言葉に、兄妹は静かに頷いた。
彼らもまた、のどこかでは悟っていたのだ。 真の復讐とは、相を破滅させることだけでは完結しない。 自分たちがその憎しみの連鎖から解き放たれ、過の呪縛を断ち切り幸せになること。 それこそが本当のでの勝利なのだと。
だがその幸せを掴むためには、まだどうしても埋めなければならない最のピースが残っていた。
それは自分たちがそので打ち砕いた父、神崎宗という。 彼との関係をこれからどうするべきかという、あまりにもい問題だった。
彼が許されざる罪を犯した紛れもない罪であることは事実だ。 しかし同に、自分たちの血管を流れる血の半分が、その男から受け継いだものであるという事実もまた、決して変えることはできない。
憎むべき、しかし同にこの世で唯の父親。 その矛盾が彼らのを複雑に揺さぶっていた。
「父さん、なんだかじゃないか」
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慧がぽつりと呟いた。 その声は夜に掻き消されそうなほどか細かった。
湊も玲奈も、その問いに答えることができなかった。 ただ黙って、に広がる京の無数のを見つめるだけだった。
彼らはこの復讐劇を通して、初めて気づき始めていたのかもしれない。 自分たちが壊してしまった『父親』というが、自分たちのにとって本当はどれほどきなものであったのか。
その喪失のきさに。
復讐は終わった。しかし彼らのの平穏はまだ訪れてはいなかった。 むしろ本当の戦いはこれから始まるのかもしれない。
自分たちののに巣う、憎しみとというつの相反するとの、いい戦いが。
たい夜がの若者の髪を乱していく。 彼らはそれぞれの胸に言葉にならない複雑なを抱えながら、ただ黙って京の夜を見つめ続けていた。
ミラクル・インベストメントの成功神話は連本の経済の面を飾り続けた。
柊真由と彼女のの子供たちが築きげたたな帝国は、その輝きを増すごとに、古い権力者たちの嫉妬と怨嗟をに集めることになった。
そしてその淀んだ憎悪は、やがての男を狂気の淵へと追いやった。
男の名は鮫島。
ミラクル・インベストメントの攻撃なM&Aによって、先代から受け継いだ建設会社を乗っ取られ、夜にして全財産を失った男だった。
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彼は自らの転落の全てが柊真由のせいだと信じ込み、歪んだ復讐にその魂を蝕まれていた。
そして綿密な調査の末、真由が護をつけずにたったである福祉財団を訪問するという報を掴んだ。
のがく垂れ込めたあるの午。 真由が都からしれた児童養護施設で子供たちへの贈り物を届け終え、施設のへとてきたまさにその瞬だった。
台の黒いワンボックスカーが甲いブレーキ音を響かせながら、彼女の目ので急止した。
全ては瞬の来事だった。 目しを被った男たちがからびしてくると、真由を力ずくで内へと引きずり込んだ。 抵抗しようとした彼女の秘はスタンガンで撃の元に打ちのめされ、アスファルトのに崩れ落ちる。
真由のは粘着テープで塞がれ、は荒々しく結束バンドで縛りげられた。
は猛烈なスピードで都をれ、の気配のない湾岸の廃帯へと向かっていく。
運転席に座る鮫島は、正気を失った獣のような目でバックミラーに映る真由を睨みつけ、唸るような声で言った。
「おがあの化け物みたいな息子や娘を頼りに、俺の会社を潰したんだ。今から見ていろ。その自の子供たちがおを救えるものか。俺のを全て返すまで、きて帰れるとうなよ!」