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"妻の手術日に3000万奪った夫の代償" 第1話

娘の嫁ぎ先であるタワーマンションの最階。 広なリビングダイニングには、見ろす夜景にも負けないほどの豪奢なシャンデリアが輝いていた。 テーブルに並べられた級ケータリングのりと、をつくような甘ったるいの匂いが混ざりっている。

これだけ華やかな空だというのに、部を満たしているのは肌を刺すような沈黙だった。

私の名は堂島宗代で総商社・堂島ホールディングスを築きげ、現は会の座にある。 だが、今この席において、その肩きはを持たなかった。

私はただ、い病に侵された娘の父親として、この居の悪い子に座っていた。

私の向かいには、娘の夫の族が陣取っている。

義父の結は、腕に巻いた見せびらかすようなロレックスを指先でなぞりながら、退屈そうにきなため息をついた。 義母の雅美は、元で煌めくダイヤモンドの指輪を弄りながら、値踏みするような爬虫類じみた目で、私の娘である紬をねっとりと見つめていた。

紬は、私の隣でひたすらにさく縮こまっていた。 い抗がん剤の副作用で抜け落ちてしまった髪を隠すように、内だというのにく医療用のニットを被っている。

数ヶまで、の陽だまりのように笑っていた娘の面は、今の彼女にはない。

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い肌。 力なく伏せられたい睫毛。 そのあまりに儚く、壊れてしまいそうな姿を見るたび、私の胸は錆びたナイフで抉られるように痛んだ。

苦しい空気を破ったのは、義母の雅美だった。 彼女はにカチャリとい音をててフォークを皿に置くと、芝居がかった声でいた。

それにしても紬さん。毎の治療費も馬鹿にならないんじゃないかしら。 翔太も本当に変だわ。こんなを抱え込んでしまって。

その言葉は、鋭い棘となって紬のに突き刺さった。 紬の細い肩が、びくりと震えるのがわかった。

私はテーブルので、膝のに置いていた両の拳をく握りしめた。 界の端がりで赤く染まるのをじたが、ここで事を荒てるわけにはいかない。 今はただ、娘のをこれ以乱さないことが最優先だった。

治療費は順調に推移しています。それに、費用は全て私が責任を持ちます。ご配には及びません。

私が極力を殺してそう返すと、雅美はで笑った。

あら、おの問題じゃないのよ。 の空気が気臭くなるって言ってるの。ねえ、お父さん。

話を振られた義父の誠は、まるで傍の汚物でも見るかのような目で紬を瞥した。

ああ。そもそも、病が健康なと同じ卓につくこと自体が違っているんだ。

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変な病原菌でもうつされたら堪ったもんじゃないからな。 気分が悪い。さっさと自分の部がったらどうだ。

その瞬、私ので何かが決定に切れる音がした。

周囲の音がのいていく。 目のには、の皮を被った悪魔が座っている。 私が塩にかけて育てた娘が、今まさに命の瀬戸際で苦しんでいるというのに。 このたちは、その苦しみすらも利用し、嘲笑い、己の都だけで娘を排除しようとしている。

紬は、さな音をてて子からがった。 その背は、今にもポキリと折れてしまいそうなほど細く、刻みに震えていた。

ごめんなさい。失礼します。

消え入りそうな声でそれだけを言うと、紬はを引きずるようにしてリビングからていった。 そのさな背を見送りながら、私の内側ではマグマのようなりが沸点に達しようとしていた。

だが、悪はそれだけでは終わらなかった。

紬の部のドアが閉まり、完全に姿が見えなくなったのを確認した雅美が、わざと私に聞こえよがしにこう言い放ったのだ。

全く、見苦しいったらありゃしない。 どうせ助からない命なら、さっさとんで保険でも残してくれた方が、よっぽどこののためになるのにね。

ガチャン。

私がわず、にしていたのスプーンをに落とした音だった。

と雅美が、何事かと忌々しそうにこちらを見る。 私はゆっくりと顔をげた。

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