"妻の手術日に3000万奪った夫の代償" 第5話
奴らは、国の楽園へのフライトに胸を躍らせている。
もはや奴らはではない。のを持たぬ、純粋な悪魔だ。
ご苦労だった、御子柴。 引き続き、奴らが空港に着くまで監を頼む。
話を切り、私は静かにちがった。 は自然と病院へと向かっていた。
病のドアをそっとけると、紬は窓のの暗をぼんやりと眺めていた。 気配に気づき、私の方を振り向く。 その顔はと恐怖で青く、痛々しいほどに痩せこけていた。
お父さん……。眠れないの。
私はベッドの傍らのパイプ子に腰掛け、紬のたいを両で包み込むように握った。 氷のようにたい、そのさな。 こんなにもか細いで、娘はたった、病という巨な敵と戦っているのだ。
怖いんだ。 もし、目が覚めなかったらどうしようって……。
震える声で告げる娘に、私は精杯の穏やかな声で答えた。
丈夫だ。本で番の先が執刀してくれる。 父さんも、ずっと傍にいる。 術が終わったら、美しいものでもべにこう。何がべたい?
……お父さんの作った、卵焼きがべたいな。
わかった。世界で番うまい卵焼きを作ってやるからな。
私たちは、もない話を続けた。 だが、私のは穏やかな会話とは裏腹に、凍てついた面のように気に静まり返っていた。
このか細いを握りながら、私は、こので奴に婚届にサインをさせるのことを考えていた。
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この優しい娘を、悪魔どものから完全に解放する、そののことを。
やがて紬は、眠薬が効いてきたのか、穏やかな寝息をて始めた。 私は娘の額にそっとキスをすると、静かに病をにした。
嵐は、すぐそこまで迫っている。
*
そして運命の。 朝。
私は術へと続くい廊の、たいプラスチックの子に座っていた。 ひんやりとした空気が首筋を撫でる。
分、紬はストレッチャーに乗せられ、い術の扉のへと消えていった。
怖いよ、お父さん。
震える声で私のを握った娘の触が、まだ指先に残っている。
丈夫だ。父さんがここにいる。
そう言って送りした私の声は、果たして麻酔に落ちていく娘のに届いただろうか。 ただ、術の扉のにある赤いランプを見つめるだけのが、永のように続く。 臓が鉛のようにい。
そのだった。 スーツのポケットに入れていたスマートフォンが、静かに震えた。
取りして画面を見ると、御子柴からのメッセージだった。 添付されていたのは、枚の写真。
そこに映っていたのは、これから獄へ落ちることもらず、満面の笑みを浮かべるの悪魔だった。
級ブランドの袋をいくつもぶらげ、えんじのパスポートをに、成田空港の発ロビーで肩を寄せっている。
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その背景には『DUTY FREE』という文字が、皮肉なほどはっきりと見えていた。
私はスマートフォンの画面を指でなぞった。 写真のの奴らの、欲望にまみれた笑顔。 そして、ゆっくりと目を閉じた娘の苦悶。
その全てが脳裏で交錯する。 静寂に包まれた病院の廊で、私は誰にも聞こえない声で静かに呟いた。
始めようか。
術のランプが無質に点灯している。 その赤いは、まるで命の残りを告げる砂計のようだ。
私はただひたすらに祈っていた。 特定の神にではない。娘の命力そのものに。 そして執刀医の確かな腕に。 このたい廊で私にできることは、それしかなかった。
どれほどのが経っただろうか。 永にもえる沈黙の、私のスマートフォンが再び震えた。
御子柴からの定報告か。あるいは桐からの準備完の連絡か。 私は祈りの邪魔をされたことにわずかな苛ちを覚えながら、震えるでそれを取りした。
画面に表示された通を見て、私の臓がきくねた。 それは予していた誰からのものでもなかった。
Instagramの通。 発信者のアカウント名は『Rena_Y』。翔太の妹、玲奈だ。
なぜ、今?
嫌な予が、背筋を氷の指でなぞるように駆けがった。 私は吸い込まれるように、その通をタップする。
表示されたのは、枚の写真。 その写真を目にした瞬、私の周りから世界のと音が完全に消え失せた。