"七年消えた母と五千万の温室" 第9話
完璧に符していた。
雅美は母のをの避難帯に乗り捨て、暴のを〇〇メートル歩いて、側で待していた父の軽トラに乗り込んだのだ。 そして午分に実へ帰着し、母のスマートフォンを使って、午分に実周辺の基局へ偽装の通信アクセスをわせた。
で綿密にをわせ、アリバイと逃劇を偽装していたかぬ証拠だった。
私はスマートフォンのカメラを起し、その運記録のページを解像度で連続撮した。
がかりはそれだけではなかった。 私は次に、『資材受払台帳』のバインダーをいた。
。 母が姿を消し、父が警察に捜索願をして「内が突然いなくなった」と泣き崩れていた、まさにそのの朝。
午分の庫記録。
『品名:超速乾性ポルトランドセメント(〇キロ袋)』 『数量:袋』 『庫先:社私用(自宅庭園備)』 『承認印:槻』
シャチハタではなく、父の登録実印が、濃い朱肉でくっきりと押されていた。
妻が消えた当の朝番に、務の倉庫からキロもの速乾セメントを自宅へ運び込んでいる。 庭園備などという嘘が、警察に通るはずがない。 あのコンクリート台座は、母の遺体を隠滅するために、このの午に流し込まれたのだ。
吐き気を覚えながら、私はさらに古いスチールキャビネットの最段を引き引いた。
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そこには、会社の経理類とは別に、黒い革のバインダーが冊だけ隠されるように置かれていた。 表には何の記載もない。
鍵のかかっていない留めをし、をいた。
に挟まれていたのは、方の融資関連類と、枚の命保険証券の写しだった。
当の務の決算。 〇期。 純損失、千百万円。 取引先への渡り形期:。
「……倒産寸だったんだ」
父の会社は、あの、完全に破綻の縁にたされていたのだ。 もしまでに数千万円の元資を用できなければ、会社は倒産し、自宅も差し押さえられ、父は破産者としてすべてを失うはずだった。
そして、その絶望な数字の次のページに綴じられていたのが、母・槻登紀子を被保険者とする命保険の証だった。
保険額:千万円。
私は、添付されていた『受取変更請求』のコピーを見て、わず息を呑んだ。
変更の受取欄には、私の名『槻 栞』が印字されていた。 そこに太い線が引かれ、たな受取としてき込まれていた文字。
『槻 昭彦』
変更続きの付は。
『〇』。
母が殺害された、まさにそのだった。
さらに、私の目を釘付けにしたのは、そのにある『被保険者自署欄』の跡だった。 そこには、乱れた文字で『槻 登紀子』とかれていた。
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母の文字に似せてはいる。 だが、ペンの払いが鋭く、がりの角度が極端にい。
私は鞄から、今朝実の蔵庫から剥ぎ取ってきた、雅美のきの買い物メモを取りした。 枚のを並べる。
メモにかれた『豚肉』『玉ねぎ』の文字。 そして、保険類の『登紀子』の文字。
偏と旁のバランス、圧のの癖。 誰の目にもらかなほど、完全に致していた。
雅美が、母の失踪当に母のサインを偽造し、千万円の受取を父へとき換えていたのだ。
そして、この類の最部、取扱代理の欄に押されていた担当者の印鑑。
『務員: 雅美』
「……嘘でしょう……?」
私のから、乾いた掠れ声が漏れた。
雅美は、父の妻に入る。 代の頃から命保険会社の交員をしていた。 母の親友として槻に入りし、母にこの型命保険を勧めた張本こそが、雅美だったのだ。
最初から、すべては仕組まれていた。
傾きかけた父の務。 親友である母に額の保険を掛けさせ、会社の危が極限に達したあの台の夜に、母をき者にして千万円をに入れた。 そので会社の借を括返済し、父を救った「恩」として妻の座に収まったのだ。
の命を、に変えて。
全の血が、マグマのように沸騰するのが分かった。 涙などなかった。 ただ、たい刃物のような憎悪が、私の臓腑を貫いていた。