"七年消えた母と五千万の温室" 第14話
「おが唆したんだ! 『を捨てて失踪に見せかければ、保険もに入るし誰も疑わない』って、俺の元でずっと囁き続けたのはおだ! 務のを横領して、俺にみを握らせたのもおだろうがぁッ!!」
「しなさいよ、この殺し! あんたが殺したのよ! 私はを運んだだけ! 実犯はあんたよ!!」
は畳のを転がり回り、屏を薙ぎ倒し、祝膳の伊勢老や刺をび散らせながら、互いの顔を殴り、髪を引っ張りっていた。 父の赤いちゃんちゃんこは無残に引き裂かれ、雅美の加賀友禅は酒とで黒く汚れ果てていく。
、町を欺き続けてきた「聖女」と「劇の夫」が、獣のように互いの肉をらいっている。
私はただ、え切った瞳で、その醜悪な共いを見ろしていた。
ウゥゥゥゥーーーーーッ。
くから、夜の静寂を切り裂いて、何台ものパトカーのサイレンがづいてくるのが聞こえた。
本のレターパックと、役所の同僚からの通報。 警察の捜査両が、今まさに料亭のを潜ろうとしていた。
だが、私の戦いは、まだ終わっていなかった。
彼らを法で裁くだけではりない。 あの暗くたいコンクリートを叩き割り、母を、の当たる所へ連れ戻さなければならない。
私は元で転がる父を見ろし、静かに告げた。
「お父さん。
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裏庭へきましょう。あなたが母のに流し込んだものを、あなた自のそので、すべて壊すのよ」
サイレンの甲い残響が、料亭「鳥」の庭先に突き刺さるように止まった。
豪奢な千本格子の引き戸が乱暴にけ放たれ、夜の湿った気とともに、数名の制警察官とコート姿の捜査員たちが崩を打って百畳の広へ踏み込んできた。
「警察です! 双方、くな!」
鋭い号が、混乱に揺れる井の梁を震わせた。
広の央では、まだ父と雅美が畳ので組みっていた。 引き裂かれた赤いちゃんちゃんこ、び散った本酒と刺の残骸、のように汚れた加賀友禅。 互いの顔を爪で引っ掻き、首を絞めっていたは、屈な警察官たちによって無理やり引き剥がされ、畳のに組み伏せられた。
「しなさいよ! 私は被害者よ! この男が……この男が登紀子さんを突き落としたのよ!!」
雅美が狂ったように叫び、に唾を吐き散らす。 その美しかった夜会巻きは完全に解け、顔には父の爪によってつけられた々しい引っ掻き傷から血が滴っていた。 もはや、そこに「町の聖女」の面など片も残っていなかった。
方の父は、両腕をろに捻りげられながら、ただ力なく嗚咽を漏らしていた。
「……すまない、……すまない、登紀子……」
呆然と壁際に張り付いていた来賓たちのから、汚らわしいものを見るような線と、唾棄するような囁きが漏れしていた。
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は顔を蒼にしてハンカチで元を押さえ、務の役たちは揃って目を背けている。
私は屏のにったまま、駆け寄ってきた初老の捜査員——県警捜査課の警部補に、胸元から取りしたUSBメモリと、ジッパー付きの保袋を渡した。
「これに、の料所の復元映像、両のGPSログ、偽造された保険類のスキャンデータ、すべて入っています。そしてこの袋のにあるのは、実の温ののから掘りした、母の遺品です」
警部補は袋のの、歪んだプラチナのネックレスと、イヴ・サンローランのルージュを瞥した。 彼の目が鋭く細められ、即座に無線へと指が伸びる。
「本部へ連絡。槻邸裏庭の温、現保全班を急させろ。鑑識との配、それから裁へ急して緊急捜索差押令状の執続きに入れ。……急げ!」
広にいた名を超える来賓全員の目で交わされた、々しい自と責任の擦り付けい。 これ以の緊急性と嫌疑のさはなかった。
「槻昭彦、雅美。両名を殺、体遺棄、ならびに詐欺未遂の参考として任同する」
錠が属音をてて噛みわされた瞬、雅美は獣のような鳴をげ、父はただ崩れ落ちるようにを垂れた。
が連されていく背を見つめながら、私は警部補の腕を掴んだ。