"傷だらけの天使" 第4話
「あ、危ない、俺が……」 その瞬だった。 野先はバランスを崩し、さな踏み台からを踏みしてしまったのだ。 「わっ……!」 「だ、丈夫ですか……っ!」 私は反射に、怪をしたをかばうことも忘れ、慌てて彼女の元へと駆け寄った。
今の彼女は、女性らしい柔らかなシフォンので作られた、ロングスカートをにまとっていた。 踏み台から落ちたそのはずみで、ふわりと広がったスカートがきくめくりがり、眩しいほどに滑らかな彼女の太ももがあらわになってしまった。 く、細く、そして引き締まった。柄ではあるものの、プロポーションが驚くほど美しい。 あまりの美しさに、呼吸をするのも忘れてしまいそうになり、私の目はその点に釘付けになってしまった。
――いやいやいや! 私は慌ててをく振り、脳内に湧きがった謹慎な邪を無理やり吹きばした。 「い、痛みますか……? 護師さん、呼びますか……!」 「え? す、すっ……」 私の言葉が、なぜか自然に途切れてしまう。 野先は自分の置かれた状況にようやく気がついたのか、ハッと息をのみ、慌ててスカートの裾を両でく引っ張り、あらわになっていた部分を必に隠した。 「い、いえ、丈夫です! 痛みも何もないから……あなたも、怪してるんだから急にかないで!」 野先の顔から、さっきまでの柔らかな微笑みは完全に消え失せ、必で作りげた「仮面のような営業スマイル」
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が貼り付けられていた。私はどうしていいか分からず、ただそので直するしかない。
「あの、俺が……」 何か言い訳をしようとをきかけた、そのだった。 診察のドアが勢いよくき、廊での患者のクレーム対応を終えたらしい護師さんが戻ってきた。 「廊で吉田さんの相をしてたら、なんかすごいドスンって音が聞こえたけど……。あら、ちゃん、また踏み台から落っこちたの?」 護師さんは慣れたつきで笑いながら言った。 野先は恥ずかしそうに頬を膨らませ、プイッとそっぽを向いた。 「もう、ちゃんったら、本当におっちょこちょいなんだから。よくそこから落ちるのよ。びっくりしたでしょ、相馬くん、ごめんなさいね」 カラカラと豪に笑う護師さんに、野先はいちだんと頬を赤く染め、むすっとした表を浮かべる。そのあまりにも臭い、らしい景に、私はわず「ふふっ」とさく笑ってしまった。
「え、どの本を貸すつもりだったんですか?」 「……これよ」 野先は気まずそうにしながらも、先ほど指定していた冊の本を棚から取りし、私のに渡ししてくれた。 「どうしても落ち込んだに読むと、しだけ界が広がる本だから。読んでみて。じゃあ、今の診察は終わり。また来週来てちょうだい」 そう言って、彼女は元の子カルテにパタパタと何やら入力し始めた。
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私はしだけ気まずさを抱えながら、「失礼します」と診察をにしたのだった。
次の診察。 「経過は順調ですね。今の診察で、ようやくギプスが取れそうです」 診察に入ると、野先はいつもの優しい笑顔で迎えてくれた。 回、あんな気まずいハプニングがあってからし構えていたが、彼女はすっかり普段のプロフェッショナルな表に戻っており、私もホッと胸を撫でろした。
「よかった……。これでやっと、普通の活に戻れるんですね」 「そうよ。でも、ギプスが取れたからって、いきなりり回ったりするのはダメよ。お医者様の言うことは絶対だからね」 得げに微笑む彼女の横顔を眺めながら、私はので決した。 ――あののこと、ちゃんと謝っておこう。いや、謝るというか……。
「あの、野先」 「ん? どうしたの?」 「その……先週は、々とすみませんでした」 「先週……?」 彼女は首をかしげる。あのスカートの件をあえて忘れたふりをしているのか、本当に然で忘れているのかは分からないが、私にとっては顔からがるほど恥ずかしい記憶だ。 「ほら、あの……踏み台から落ちた、その……々と見えてしまって……」 私の言葉を聞いた瞬、野先のきがピタリと止まった。 彼女のいたぶまでが、みるみるうちに真っ赤に染まっていく。