"見えない星" 第3話
しかし、目ので首をかしげながら自分を見げるはる子の、屈託のない純粋な笑顔をにして、その拒絶の言葉は喉の奥で消えった。
「……それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
は並んでの職員休憩へと向かった。 昼で賑わう内を避け、隅に置かれたさなテーブルの席に、向かいって腰をろした。 はる子は布巾で包まれたさな段ねの弁当箱を取りし、蓋を丁寧にけた。には卵焼きと煮物、そして梅干しの乗ったご飯が慎に詰められている。方の田は、勤途のコンビニエンスストアで購入したビニール包装のおにぎりをつ、静かにテーブルのに取りした。
はる子は割り箸を割りながら、田の顔を覗き込んだ。
「田さん、ご族はいらっしゃるんですか?」
田はおにぎりのフィルムの端を指先でつまみ、線をし落としながら答えた。
「ええ、息子と孫がおります。ただ、みんなそれぞれの仕事や活で忙しくしておりましてね。滅に顔をわせることもありませんよ」
田の調に滲んだわずかな寂しさを、はる子の繊細な覚は見逃さなかった。はる子は胸の奥がキュッと痛むのをじ、箸を置いてを乗りした。
「それは……やっぱり寂しいですよね。じゃあ、これからはお昼休みにもっとたくさんお話ししましょう。
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実は私も、でご飯をべていると、々と余計なことばかり考えちゃって寂しくなるんです」
田ははる子の顔を見つめ、驚きとともに目元を緩めた。
「ありがとうございます。はる子さんは、本当にお優しい方ですね」
「そんなことないですよ! 私の方こそ、お話し相ができてすごく嬉しいんです」
そのをきっかけとして、は昼の休憩を毎のように共するようになった。 はる子は、病にある両親の容態のこと、々の業務で夫している清掃の技術、通勤途の端で見かけた季節ののことなど、々のささやかな来事を飾り気のない言葉で語った。 田はそのつひとつに静かにを傾け、折、いを歩んできた者としての穏やかな助言を返した。
「はる子さんのご両親は、本当にお幸せですね。こんなにも優しく、真っ直ぐな娘さんがそばにいてくれて」
はる子は首を振って微笑んだ。
「そんなの、当たりのことですよ。今まで切に育ててくれたんですから、その恩を返すのは子供として当然です」
田はおにぎりを含み、く頷いた。
「いや、今の世ので、若い方がそうしたいをに移すのは、決して容易なことではありません。はる子さんは本当に派です」
いがけない称賛の言葉を受け、はる子の頬が赤く染まった。
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契約社員として現の底辺で働き続ける々ので、自分のそのものをこれほど温かく肯定されたのは、彼女にとってあまりにも久しぶりの来事であった。
あるの午の作業、田は階の廊の端から、はる子の働く様子を識に観察していた。 はる子は宿泊客とすれ違うたびに、作業のを完全に止め、壁際にを寄せて々と会釈を交わしていた。客が通り過ぎるまでをげず、決して線の邪魔にならないよう細の注を払っている。 その、フロアの曲がり角で、きなスーツケースを持った組の国観客が、困惑した表でち往しているのが見えた。スマートフォンの画面と壁の案内表示を交互に見比べ、互いに焦ったように母国語で議論を交わしている。 異変に気づいたはる子は、にしていた雑巾をバケツの縁に置き、迷うことなくその観客のもとへと駆け寄った。 彼女は決して流暢な英語を話せるわけではなかった。しかし、振り振りをきく交え、っている英単語を懸命に紡ぎしながら、目である非常階段とエレベーターホールの位置を丁寧に指し示した。 相の目線にわせて腰を落とし、笑顔を絶やさずに案内を続けるその姿は、見ていて胸が温かくなるほどひたむきであった。
国客の顔からのが消え、満面の笑みへと変わった。