"見えない星" 第9話
なドアがにき、田が静かに入してきた。 田は座の子には腰掛けず、きな窓のにち止まり、背に朝のいを浴びながら、同を鋭いで見ろした。 内に流れる沈黙はく、誰として喉を鳴らすことすら許されない気迫に満ちていた。
「私は、このホテルを買収した際、つの理を掲げた」
田の声が、静寂を切り裂いて部の隅々にまで染み渡っていった。
「それは、すべての職員が誇りを持って働き、すべての宿泊客がからの幸せをじられるホテルを築くということだ。その理を机の空論で終わらせないために、私は自ら現に入った。経営者の都の良い点ではなく、最もい所で、最も臭く働く々の目線で、この組織の実態を見極めるためだ」
総支配をはじめとする幹部たちは、青ざめた顔を伏せ、微だにせずその言葉を聞き入っていた。
「、私はくのことを見てきた。誰が本当にこのホテルの簾を背負い、お客様のために誠誠汗を流しているのか。そして――誰が己の保と虚栄のために、組織を内側から腐らせているのかをな」
田の徹な線が、テーブルの端でさく震えている佐藤とのへと、正確に落とされた。はビクッと肩をねがらせ、さらにく首をすくめた。
広告
「田はる子さんは、私がこのホテルで会ったすべての職員ので、最も誠実であり、最もいいやりを持って職務に邁していた物だ。彼女は度として規則を破らず、誰よりも迅速に、誰よりも完璧に自らの仕事を全うしていた。お客様が困っていればを顧みずを差し伸べ、同僚が労働に喘いでいればんで荷を分かちっていた」
課が震える唇をき、蚊の鳴くような声でを挟もうとした。
「し、しかし会……報告には、複数の職員からの満が……」
「複数だと!?」
田のが、鳴のように会議に轟いた。 机ののガラスの皿がビリビリと震え、課は息を詰まらせて子のでのけぞった。
「私が報告の原本を確認した! 提者の欄に記されていた名は、佐藤京子、そして美奈の名だけだ! たった名の歪んだ悪を、貴様は『複数の職員の総』と偽装して処理したのか!?」
田は歩、歩と歩み寄り、佐藤との目のにった。 は机のに額がくっつきそうなほどをげ、全を激しく震わせていた。
「す、すみません……申し訳ありません……!」
佐藤のから、掠れた謝罪が漏れた。
「何がすみませんだ!」
田の声が容赦なくり注ぐ。
「あなた方は、己の浅ましい嫉妬と偏見のためだけに、に覚えのない罪をでっちげ、何の非もないの真面目な労働者を陥れたのだ! 彼女がどれほどのいで々の活を支え、どれほどの誠を持ってこのホテルに尽くしてきたか、考えたことすらあるまい! のを玩具のように弄び、尊厳を踏みにじったその罪のさが、貴様らに分かっているのか!」
広告
会議の空気は完全に直した。佐藤との目からは粒の涙がへと滴り落ち、嗚咽が漏れていた。 田はゆっくりと息をえ、総支配に向かって鋭く告げた。
「田はる子さんに対する契約解除処分は、本付をもって即刻撤回とする。そして――彼女を、正社員として再雇用する」
総支配は弾かれたようにちがり、々とをげた。
「は、はい! 直ちに続きをめさせます!」
「それだけではない」
田の威厳ある言葉が続いた。
「彼女を、設する『顧客サービス教育部』の総責任者に任命する。彼女が現で示してきた無償の献、真のサービス精神こそ、このホテルの全職員が学び直すべき規範であるからだ」
「承……いたしました!」
田は再び、涙に暮れる佐藤とへと線を戻した。その瞳には、もはやりではなく、たい処罰の志だけが宿っていた。
「佐藤京子、美奈。あなた方名には、本よりヶの減処分、および現での反省を命じる。そして何より――田はる子さんに対して、直接自らの非を認め、からの謝罪をうこと。これは経営者としての絶対命令だ」