"日本一情の深い父の裏の顔" 第1話
運転免許センターの窓で、交付されたばかりのプラスチックの板を受け取った。
歳になったの、肌を刺すようなれのだった。
免許証の顔写真は、どこか張っている。 そのさな証を財布に収めて駐へると、台の巨なが待っていた。
のトヨタ・ハイエース。 平成式。 フロントグリルには無数のびによる傷が刻まれ、フェンダーの塗装は線のせいでを吹いたように濁している。
そして体の両側面とリアゲートには、巨なマグネットシートが貼り付けられていた。
『森菜(なつき)ちゃんを探しています』
褪せた写真ので微笑むのは、歳のままが止まった俺の妹だ。
「今から、これをおにやる」
運転席からりてきた父・森雄介は、使い古されたスマートキーを俺の掌に無造作に落とした。
キーの表面は垢と擦れでツルツルに磨きげられ、トヨタのエンブレムは完全に削れ落ちていた。
「廃にするにもがかかるからな。おが学の通学に使えばいい。……荷物も、乗るだろう」
父の声は、テレビの取材を受けると同じ、どこかかすれた、慈に満ちたトーンだった。
だが、その目は笑っていなかった。 父の線は俺の顔ではなく、俺の背にあるくの景を、ただ平坦に捉えているだけだった。
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森雄介。 世が彼を呼ぶ肩きは、学代の商社マンではない。
『本、のい父親』。
の、族旅の帰、名速のサービスエリアで菜が忽然と姿を消した。
警察は連れりによる未解決事件として捜査を縮したが、父は会社を辞め、退職をすべて吐きして全国を巡る旅にた。
都府県。 距は万キロ。 配り歩いたチラシは万枚を超えた。
涙ながらにカメラへ娘の無事を訴えかける父の姿は、民放各局の特番で何度も放映され、やがて父を代表とする『方児童を支援する全国の会』がちがった。
先、その支援団体に企業からの寄付が集まり、父には真しい最型の級ハイブリッドSUVが贈呈されたばかりだった。
用済みとなったこのハイエースだけが、取り残されたのだ。
「……チラシのシート、剥がしてもいいのか?」
俺が尋ねると、父は微かに眉をひそめた。
「目つから嫌か? だがな、拓。妹を忘れたとわれるのは得策じゃない。剥がすなら、自宅の庫に入れてからにしろ。所の目がある」
父はそれだけ言うと、迎えに来ていた支援団体のアルファードの部座席に乗り込み、度も振り返ることなくっていった。
取り残された俺は、いスライドドアをけた。
内に満ちていたのは、染み付いためたカップ麺の油の匂いと、物の制汗剤、そして印刷インクの饐えた臭気だった。
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運転席に座り、キーを捻る。 セルモーターが数回、甲い鳴をげた、直列気筒のディーゼルエンジンが唸りをげて目を覚ました。
シート越しに伝わってくる、腹の底を揺らすような規則な振。
バックミラーを覗き込むと、列目と列目のシートが目に入る。
菜の指定席だった、列目の側。 そこには今も、あの子がするときに必ず持ち歩いていた、褪せた黄いクッションがそのまま置かれていた。
胸の奥に、言葉にならない鉛のようなみが沈んでいく。
母さんは、このに乗ることができない。 事件から、精神の均衡を崩した母は、現も静岡にある静かな療養所に入院したままだ。
世は母を「目をした隙に娘を奪われた愚かな母親」と叩き、父を「劇にち向かう聖」と讃えた。
俺はそのどちらにもなれず、ただ壊れていく族の残骸を、息を潜めて見つめることしかできなかった。
ステアリングを握り、ゆっくりとアクセルを踏み込む。 俺はこのを、そのまま自宅へ持ち帰る気にはなれなかった。
向かったのは、代の先輩の父親が営んでいる、町れのさな自備だった。
属の焼ける匂いと、械油のい湿気が漂う町の備『宮田モータース』。
「うわ、すげえの持ってきたな、拓」