みかん小説
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"19年目の妊娠と妻を階段から突き落とした姑" 第6話

そこには、ミキの凛とした跡で、たっただけい言葉が記されていた。

『あなたが守らなかったもの。私は守ります』

志は眉をひそめ、吐き捨てるようにで笑った。

「なんだこれ。当てつけのつもりかよ」

横から覗き込んできたレナも、呆れたように肩をすくめて同調した。

「なにそのポエム。最までじめじめしてて気持ち悪い。ただの負け惜しみじゃないの。放っておきましょ」

志は満そうにを鳴らし、便箋をくしゃりと丸めた。

「まあいい。これで俺の目は完全に果たせた」

志は婚届と丸めた便箋を、スーツのポケットへと無造作にねじ込んだ。

「帰ろうぜ、レナ」

度として、病棟の奥へと線を向けることはなかった。

妻の怪の容態を医師に尋ねることもなく。

なぜ妻が自宅の階段から転落したのか、その理由に疑問を抱くことすらなく。

ただ邪魔な妻を排除し、自分たちの自由がに入ったことだけをび、に病院をっていった。

はナースステーションのカウンター越しに、ざかる2の背たく見送った。

彼らは何も分かっていなかった。

あのに、どれほど凄絶な決が込められていたのかを。

そして、ミキがなぜ直接会うことを拒み、姿を隠したのかを。

その、廊の奥の診察から、主治医の佐伯が静かに歩み寄ってきた。

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佐伯はの横にち、くのエレベーターホールを見つめた。

「帰られましたか?」

くため息をつき、静かに頷いた。

「はい。見事なほどに、ご自分の類だけを受け取ってかれました」

の声には、抑えきれないりと軽蔑が滲んでいた。

佐伯は元のカルテに線を落とし、く息を吐きした。

「あの男は、まだ何も気づいていませんね」

佐伯の鏡の奥の瞳が、鋭くった。

「自分がすでに、族というものから完全に切り捨てられたという事実に」

昨夜のうちに、ミキはすでに別の厳なセキュリティが施された病棟へと極秘に移していた。

夫がを連れて病院に乗り込んでくることなど、ミキには痛いほど最初から分かっていたのだ。

だからこそ、自分自と宿った命の全を完全に確保するために、あらかじめ姿を消したのだ。

志は、自分がれな妻を捨てったつもりで悦に入っていた。

しかし、現実は全くの正反対だった。

夫である志こそが、ミキのから完全に抹消されたのだ。

守るべきものを守ろうとしなかった男に、父親としての未来など最初から秒たりとも残されていない。

志がポケットにねじ込んだあの枚の婚届。

それは彼を自由にする切符などでは断じてなかった。

これから始まる、逃れられない破滅へのカウントダウンの引きに過ぎなかった。

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『あなたが守らなかったもの』

その言葉の真実のを、この愚かな男がった

そのっぺらい優越は、体どのように崩れるのだろうか。

朝の病院のたい廊に、穏な嵐の予兆だけがく沈殿していった。

志は嫌でのハンドルを握り、実の玄関のドアを勢いよくけた。

リビングのソファでは、母親のかよがのんびりと湯呑みを傾けて茶をんでいた。

嫁が全血だらけになって救急で運ばれた翌とは、とてもえない景だった。

普段と何つ変わらない、閑で平穏な昼がりがそこにあった。

志は靴を脱ぎ捨て、リビングに入りながら声をげた。

「母さん、全部終わったよ」

志はスーツの内ポケットから、つ折りにされた用を引き抜いた。

そして、テーブルのへ放り投げるように放りした。

の縁取りがされた

ミキの署名と捺印が完璧に押された、本物の婚届だった。

かよは老鏡のブリッジを指で押しげ、テーブルのをまじまじと見つめた。

「あら、本当に名いているわね」

かよのしわがれた顔に、の悪い醜い笑みがみるみるうちに広がっていった。

「とうとう、自分の分をわきまえたみたいね。本当に最までどん臭い女だったわ」

かよはを鳴らし、昨来事を嘲笑った。

「階段から派に転げ落ちるなんて、みっともないったらありゃしない」

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