"19年目の妊娠と妻を階段から突き落とした姑" 第11話
話の向こうから、く引き締まった女性の声が静かに響いてきた。
「志さんの携帯話でお違いないでしょうか。私、ミキ様の代理を務めております、弁護士の藤堂恵子と申します」
志の顔から、営業用の笑顔が瞬で自然に凍りついた。
「べ、弁護士……?」
隣に座っていたレナが、審そうに首を傾げて志の顔を覗き込む。
藤堂はを切交えず、氷のようにたい声で事務に告げた。
「奥様からの正式なご依頼により、ご連絡いたしました。今のご連絡は、全て私を通すことになります。奥様本やご実への直接の接触は、いかなる理由があろうと切禁止いたします」
志は揺を悟られまいと、あえて声を荒らげてで笑ってみせた。
「はっ、げさだな。たかが婚の件で弁護士ですか? 婚届ならすでに妻から受け取っていますよ。俺がサインして役所にせば、それで終わりでしょう」
受話器の向こうの藤堂は、全くじる気配を見せなかった。
淡々と、酷な宣告を続けた。
「ご主は、な勘違いをされているようですね。奥様は、単なる協議婚をお望みなのではありません」
志の臓が、ドクンと嫌な音をててねがった。
藤堂は容赦なく言葉を突き刺した。
「あなたと、あなたのお母様であるかよ様に対して、の法為に対する損害賠償請求、ならびに今回の階段からの突き落としによる暴・傷害事件として、民事および刑事の法措置をめております」
広告
志の顔から、気に血の気が引いていくのが分かった。
「ぼ、暴だと……!? 何を馬鹿なことを言っているんだ! あいつが勝に階段からを滑らせて転んだだけだろうが!」
藤堂は静に言い放った。
「証拠は、全て揃っております。ほど、ご自宅およびあなたの勤務先へ、正式な面が送達されるはずです」
ガチャリと、方に通話が切断された。
ツコツコという無質な子音だけが、静まり返った応接に虚しく響き渡る。
レナが怯えたような表で、志の腕を揺さぶった。
「どうしたの……? 志さん……?」
志のには、レナの声がくのの向こうのようにしか届かなかった。
志はにしたスマートフォンを見つめたまま、全を直させていた。
自分が体、どれほど恐ろしい底なしの落とし穴にを踏み入れてしまったのか。
まだ完全には理解できていなかった。
ただ、得体のれないたい恐怖が、元からじわじわといがってくるのをじていた。
スマートフォンの液晶画面が暗転し、志の青ざめた顔を反射した。
背筋をたい脂汗がツーっと流れ落ちていく。
先ほどの弁護士からの話は、到底ただの脅しやハッタリには聞こえなかった。
暴事件、刑事告訴、そして額な損害賠償請求。
ただの注による転倒事故だと言い張りさえすれば、全て丸く収まるはずだった。
広告
しかし、相側は完全にこちらの逃げを塞ぐ準備を完させていた。
レナが志の顔を満そうに覗き込んできた。
「今の話、体何だったのよ? 奥さんから? 本当にしつこい女ね」
レナはまだ、事態の刻さを微も理解していなかった。
志は引きつった笑いを浮かべ、必に誤魔化そうとした。
「いや、なんでもないよ。類の続きで、しき違いがあっただけだ」
志はちがり、落ち着かない様子でネクタイを緩めた。
「俺はこれから急ぎの仕事があるから、先にていてくれないか」
レナを引に応接のへと促すと、志はい取りで廊へとようとした。
だが、その直だった。
応接のいドアが、ノックもなしに勢いよくけ放たれた。
そこにっていたのは、眉にい皺を刻んだ支の厳しい顔だった。
「次。今すぐ、私の部に来なさい」
普段の温な声とは全く違っていた。
りを懸命に押し殺した、く威圧な響きだった。
志の臓が、鐘のように激しく脈打ち始めた。
支のを追い、支へと入ると、デスクの央に通の茶い封筒が置かれていた。
支はデスクを拳でドンと叩き、志を射抜くように睨みつけた。