"10年逃亡した父の未開封400万" 第2話
所のゴミし用のサンダルが。 冠婚葬祭用の、かかとの皮がひび割れた黒いパンプスが。
棚板を雑巾で拭き、ゴミ袋へ放り込もうとしただった。
靴箱の最段。 普段は傘てのに隠れて見えない番奥のスペースに、ダンボール箱が押し込まれているのに気づいた。
みかん箱ほどのきさの、古い茶の箱。 ガムテープで字に固く留められ、そのから油性ペンで乱雑にこう殴りきされていた。
【燃ごみ 】
「……なに、これ」
埃が分く積もっていた。 指先でなぞると、指紋の跡がくっきりとく残る。 ——いや、それ以から、度もかされていないような々しさだった。
母は掃除に関してだけは異常なほど神経質なだった。 畳の目に入った埃を古い歯ブラシで毎掻きすようなが、なぜ「燃ごみ」といたダンボール箱を、靴箱の底にも放置していたのか。
捨てるつもりでまとめて、し忘れたのだろうか。 けれど、ゴミしの曜をたりとも違えたことのない母が?
私はしゃがみ込み、箱を引っ張りそうとした。
ずしり、とかった。 くずや類が入っているような軽さではない。 湿ったか、鉄の塊でも入っているかのような、鈍いみが両腕にかかる。
たたきのたいコンクリートのに引きずりし、カッターナイフをにした。
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経劣化で茶く変したガムテープに刃を入れる。 パリパリと、干からびた虫の羽が砕けるような乾いた音がした。
箱の蓋をける。
を突いたのは、樟脳と、古い油と、ツンとくるカビの混ざりった異臭だった。 には、ぎっしりと古聞が敷き詰められていた。 焼けして黄くなった面を枚、枚とめくっていく。
その底にあったものを見た瞬、私の呼吸が喉の奥で止まった。
いのようなをした、革の塊。 擦り切れた首の部分。 鋼鉄の先芯が入った、武骨でな作業靴。
それは、違いなく父の靴だった。
サイズは、・センチ。
父が事故に遭う、そして義になってからも用していた、オペレーター専用の所作業用全靴だった。
の芯が、たいに浸されたようにえていく。
「……なんで」
声が震えて、乾いた唇から漏れた。
の。 あの暴の夜、父が姿を消したのことを、私は昨のことのように覚えている。 警察に捜索願をしにった、母は震えるでハンカチを握りしめ、担当の警察官にこう証言したのだ。
『健さんは……が自由で、普通の靴は履けないんです』
『あのが履いてたのは、あの頑丈な、茶い全靴だけです。玄関から、あの靴が消えているんです……』
所のたちも、パチンコの常連も、みんなっていた。
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の膝を切断した父は、特注の義をそのい全靴に差し込み、靴紐を親の仇のようにく締めげなければ、歩も歩くことができなかった。 サンダルも履けない。スニーカーもわない。 あの靴がなければ、父はにることすら能なのだ。
それなのに。
父が「履いて逃げた」はずの靴が、なぜ、この靴箱の底にあるのか。
箱の表面にかれた、母の跡。 【燃ごみ 】
母は、っていたのだ。 この靴がここにあることを。 それどころか、自分のでこの箱に詰め、ガムテープで封をし、靴箱の最部に隠したのだ。
鼓が、の奥で激しく打ち鳴らされ始めた。 ドクン、ドクンと、警報のように響く。
私は震えるを伸ばし、革靴を持ちげた。 革は入れもされず放置されていたせいで化し、まるでのようにかった。 よく見ると、靴底のゴムの溝には、赤黒いが固まってこびりついている。 この団の周辺にある、黒っぽいアスファルトの砂ではない。 もっと粘り気のある、ののような赤。
何気なく、の靴のにを入れた。
父の。 義を固定するために、踵や甲の部分にいつも詰め物をしていた所。 指先が、靴の奥に押し込まれた固いの触に触れた。
型崩れを防ぐための古聞だろうか。 引き抜こうとしたが、奥くに驚くほど固にねじ込まれていて、容易にはかない。
私は爪をて、破かないように慎にそれを引っ張りした。