みかん小説
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"10年逃亡した父の未開封400万" 第5話

自由な男が、を持ってと蒸発した。 ただの「失踪宣告」予備軍の事案として、処理されただけだった。

だが、私の記憶の糸は、本ずつ繰り寄せられていく。

。 あの、巨な台が関方を直撃していた。 夕方から激しいが団の窓を叩きつけ、テレビはずっと砂災害警戒報を流していた。

歳だった私は、都学の図館にいて、の計画運休に巻き込まれて帰宅が夜になった。 ずぶ濡れになって団の402号にたどり着いたとき、母はリビングの気を消して、で正座していた。

『真由美、落ち着いて聞きなさい』

母のあのの声。 泣き腫らした目。 震える

『お父さんがね……おを持って、っちゃったの』

『あのスナックの女のと、緒にくって。止めようとしたんだけど、私、突きばされて……』

母のには、真珠のピアスが揺れていた。 けれど、のピアスは、千切れたように無くなっていた。 たぶから、ほんのし血が滲んでいたのを、私は確かに見たはずだ。

そのの私は、母を抱きしめて緒に泣いた。 なんて酷い父親だろうと、から憎んだ。 障害を負った自分を支えてくれた母を裏切り、暴力まで振るって逃げした父を、んでしまえばいいと呪った。

だが、今、私の元にあるのは——

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押し入れの奥ではなく、靴箱の底からてきた父の靴。 そして、その靴のに押し込まれていた、母ののピアス。 引き抜かれたの力で、ピンが激しく曲がり、真珠が砕け散っている。

これは、父が持って逃げたのではない。 あの夜、この部で、父と母ので凄まじい争いがあったのだ。 そして、父はこの靴を履くことすらできずに——。

考がそこで、真っ黒な断崖に突き当たった。

履くことすらできずに、父はどうなった?

のないが、靴も義も残して、どうやってこの部から消えるというのか。 自分ので歩いてることなど、物理能なのだ。

誰かが、運びしたのだ。

「……植田さん?」

さく呟いた瞬、背筋に氷を突っ込まれたような悪寒がった。

植田は軽トラを持っている。 も、造園業の真似事をしていて、団の植の剪定や粗ごみの回収をで引き受けていた。

もし、あの夜、植田がこの部に来ていたとしたら?

私はがり、畳の部へと戻った。 元が覚束ず、ゴミ袋にを取られて倒れそうになる。

母の遺品を、もう度調べなければならない。 母は、何かを残しているはずだ。 あれほど几帳面で、記や領収言半句たりとも捨てずに保管していた母が、あの夜の痕跡を完全に消しることなどできるはずがない。

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私は押し入れの襖をけ放った。

袋の奥に、母が使っていた茶のプラスチック製装ケースが押し込まれていた。 それを引きずりろす。 には、古い計簿と、帳、そして母が毎つけていたの通帳類が然と並べられていた。

にあった、計簿。 表には【平成】とかれている。

私は震える指で、のページをいた。

からまでの欄には、いつものように細かな文字で費が記録されていた。 ネギ百円、豆腐円、健さんの湿布代千百円……。

そして、

そのの欄だけ、文字のインクが違っていた。 いつも使っていた黒いボールペンではなく、ひどく掠れた青いインク。

かれていたのは、たっただった。

【健さん、いなくなる。。植田さんが来てくれた】

それだけだった。 警察を呼んだとも、おを取られたともかれていない。

の欄を見る。

そこには、異様な買い物の記録が並んでいた。

【指定ゴミ袋(組】 【塩素系漂剤(業務用) 本】 【消 キロ入り 袋】 【代引き落とし】

庭菜園などやっていなかった母が、なぜ、ホームセンターでしか売っていないようなキロの消袋も買ったのか。 しかも、父が消えた翌に。

ページをめくっていく。

の通が、計簿のに挟まっていた。

使用量を見て、私は目を疑った。

【ご使用量:方メートル】

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